緊急経済対策を盛り込んだ総額三・一兆円の二〇一四年度補正予算が成立、景気を一時的には下支えしそうだ。ただ地方へのバラマキ色が強く、恩恵が一部に偏るアベノミクスの限界を示す格好だ。
補正予算は「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」が柱だ。要するに、アベノミクスの恩恵を全国津々浦々にまで届けると約束しながら、その実感が一向に広がらない地方に対して予算をバラまくのである。
例えば、地方の消費喚起だとして商品券発行や寒冷地の灯油購入への助成、漁業や中小トラック事業者の燃料費対策などを盛り込んだ。商品券は、過去の実例から景気浮揚効果は極めて限定的なのが定説である。燃料費対策は、アベノミクスによる円安進行でガソリン代高騰の影響を受けた事業者の要望を受けた形だが、解散−総選挙の間に原油安が進んで燃料価格は大幅に下がっている。
住宅市場活性化策として住宅金融支援機構の「フラット35S」の金利引き下げ幅の拡大も盛り込んでいるが、同金利もすでに歴史的な低水準にある。
そもそも補正予算とは、緊急に必要となったものに限ると財政法は定めている。原油安や金利低下は補正編成前からある程度わかっていたものであり、明らかに財政法に反する。
安倍政権の発足以来、当初予算で不要とされたものが補正予算で「復活」したり、当初予算を小さく見せるための別ポケットとして補正予算が都合よく使われてきた。今回もその傾向は変わらないのである。地方創生の先行実施と称して地方交付金を積んでいるが、緊急性に鑑みれば、今春の統一地方選対策と受け取られても仕方あるまい。
補正予算の歳入面では、税収の上振れ分などを充て、新たな赤字国債(借金)に頼っていないとはいえ、必要性に乏しい支出が許される財政状況にないはずだ。
来日して話題を集めた仏経済学者、トマ・ピケティ氏はアベノミクスが格差を拡大させると警鐘を鳴らした。異次元緩和が株価や地価上昇を通じ富裕層への富を集中させる一方、トリクルダウンが実現した例はないと疑問を呈した。このままだと格差は継承され、不平等が民主主義を歪(ゆが)めかねないとも強調したのである。
アベノミクスの道しかないというのなら、「所得再分配」を第四の矢に据え、資産課税の強化などで格差是正を急ぐべきである。
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