東京電力福島第1原子力発電所の事故に伴い、福島県内の除染で出た汚染土を保管する中間貯蔵施設の建設が双葉、大熊両町で始まった。当初は1月から搬入する予定だったが、計画は遅れている。国は地元の不安に丁寧に応え、建設を着実に進めるべきだ。
国の計画では、中間貯蔵施設は福島第1原発周辺に1600万平方メートルを確保し、最大で東京ドーム18杯分の汚染土を最長30年間保管する。国が土地を地権者から買い取ったり、借り上げたりする。
県は昨年9月に建設を受け入れ、地元2町も容認した。だが約2千人いる地権者のなかには避難中の人も多く、用地交渉は難航している。汚染土を運ぶ道路沿いでも安全性を懸念する住民が多い。このため環境省は先月、搬入開始時期を「東日本大震災から丸4年の3月11日まで」に延期した。
貯蔵施設の建設は、福島県内の除染を進め、復興を加速させるために欠かせない。県内にはまだ除染が手つかずの場所があり、終えた場所でも仮置き場に大量の汚染土が積まれている。その状況を早く解消しなければならない。
まず国が地権者との交渉を加速させ、用地を確実に手当てする必要がある。建設を受け入れた県や町も、地権者探しなどで国に協力できることは多いはずだ。
汚染土を運ぶ際の安全確保も国の責務だ。搬入が本格化すれば大型トラックが往来し、土がこぼれたり、騒音や交通事故が増えたりしないかと心配する住民は多い。
政府は沿道自治体などに輸送計画を示し、理解を得たうえで搬入を始めるとしている。輸送の安全確保に加え、仮置き場で汚染土を分別し、貯蔵施設に運ぶ量を減らす取り組みも強めるべきだ。
中間貯蔵施設をめぐっては石原伸晃前環境相が「金目の問題」と発言し、国と地元の関係にしこりが残っている。国は住民と対話を重ね、不信を拭う必要がある。搬入開始の目標時期にこだわり、強引に工事を進めることはあってはならない。