米国をはじめとする世界の大企業の決算発表が本格化してきた。金融市場を中心に不透明感が強いため、2015年について慎重な見方をとる経営者は多いが、勝ち残りを目指し投資を一段と拡大する企業も健在だ。
増配や自社株買いなどの株主配分を含め、稼いだ利益をどのように有効に使うかが企業の長期的な競争力を決める。
調査会社トムソン・ロイターによれば、米主要500社の10~12月期は売上高が前年同期に比べてほぼ横ばい、純利益は約5%の伸びとなったようだ。4%増収、10%増益の7~9月期から収益の伸びは鈍りそうだ。
グローバル化が進んだ米国の大企業は、自国通貨のドルが他国の通貨に対して強くなると、国外の業績が大きく目減りしやすい。中国や南米、欧州の景気減速により、数量面から見た売り上げも伸び悩むことが多い。
そうした要因により、例えば建機大手キャタピラーの利益は25%も減った。今年も「間違いなく厳しい1年になる」(オーバーヘルマン会長)と見ており、コスト削減を急ぐ構えだ。
日用品のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)やIT(情報技術)のマイクロソフトなど、通貨高と世界的な販売の苦戦で減益となった企業は業種を超えて広がっている。
業績が伸び悩む企業は、市場の信頼をつなぎとめるために、株主への利益配分を増やす傾向が強い。代表例は韓国サムスン電子だ。スマートフォン(スマホ)事業の減速で昨年は2割強の減益だったが、年間の配当は4割増やした。過去の好決算で積み上げた現金を還元する格好だ。
逆に好業績の企業は投資の拡大に動く。米交流サイト大手のフェイスブックはデータセンターの増強に向け、今年の設備投資額を27億~32億ドルと昨年実績の18億ドルから大幅に増やす。アジアに目を向ければ半導体受託生産の世界トップ、台湾積体電路製造(TSMC)が、今年の設備投資額を過去最大とする方針だ。
総じて好業績が見込まれる日本企業は、利益や手元資金の活用策が注目されている。増配などによって株主を満足させることも必要だ。しかし、投資を怠れば競争力はいずれ衰えてしまう。日本の大企業もそうした危機意識を持ち続ける必要がある。