文科省のバックアップを受ける立正大「アクティブ・ラーニング」って?
とはいえ「アクティブ・ラーニング」と言われてもよく分からない…という人は多いはず。文科省によると、「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称」とのこと。それにより、学生の学習意欲を掻き立て、“深い学び”につなげ、主体性やコミュニケーション力、思考力、問題解決能力などを伸ばしていく…。アクティブ・ラーニングとは、そんな授業や環境作りのことを指す。今は “ベストな方法”を日本中で試行錯誤している段階で、だからこそ、最先端授業のモデルとして、立正大学の教育改革が行われているのだ。
最先端授業に潜入! カギを握る「3つのキーワード」はコレ!
「今からみんなの端末に地図を送るから、線で囲ってみてください」と渡来靖准教授。学生たちの手元には、タブレット端末が用意されている。日ごろからスマートフォンを使っていることもあり、みんな慣れた手つきでタブレットに図形や文章を入力。教授が前方のスクリーンに集まった回答を映し出す様子は、クイズ番組のような楽しい雰囲気。
タブレットを使った双方向型の講義は、全員の意見がスクリーン上で“共有”される。教授も興味深い答えを取り上げ、次々に質問していくので、学生たちの中にいい意味での緊張感とモチベーション、そして程良いテンポが生み出されている。
「最初は自分の回答を人に見られるのが恥ずかしかったのですが、今はやりがいを感じていてとても楽しいです。いろんな意見の人が集まって、グループワークみたいなことをもっとできたらいいなと思います」と話すのは、地球環境科学部2年生の中島健太さん。双方向授業にとても前向きな様子!
さらに、立正大では現在、予習用の動画の教材を開発しているとか。「知識は事前に学生が自主的に学んで、それを前提に、講義では双方向のコミュニケーションを取りながら、“考える力”を養うのが理想だと思います」と地球環境科学部地理学科の島津弘教授。反転授業と呼ばれるこの教育手法は、双方向授業と車の両輪をなす、アクティブ・ラーニングの大事な一面だ。
ネックとなるのは、予習用動画を開発しても、サークル活動やバイトなどで忙しい学生たちがなかなか見てきてくれないこと。その点、タブレットやスマホを使って移動時間などに手軽に閲覧できる動画の開発は、学生たちのライフスタイルにマッチ。自分のペースで知識を蓄え、双方向の講義でその知識を深いものにしていく。
3つ目のキーワードは、リアルさの追求にある。元々、地球環境科学部では実験実習科目を重要視していて、座学だけでは習得できない「リアルな学び、体験」を学生たちに提供している。
地球環境科学部2年生の秋山栞里さんは、これらのフィールドワークが自身に与えた影響についてこう話す。「昨年、必修の授業で4日間かけて、海岸沿いを中心に東北の被災地を見て回りました。被災地の惨状を目の当たりにしながら、“なぜここは津波の被害を受けなかったのか”などということを、自分の目で見て学ぶことができました」。
さらに、教材にもリアルなものをたくさん使って、知識だけではなく学生たちの感性を刺激するような工夫を凝らしている。取材した日の授業では、貝沼恵美特任講師がフィリピンの地域性や文化について、実際に現地から取り寄せた品々を見せながら解説していた。学生たちは伝統的な民族衣装や、現地で好まれる調味料の「バナナケチャップ」、また現地の教育現場で使用されている教科書や絵本などを手に取りながら、熱心に講義に耳を傾けていた。
ICTとリアル。一見無関係のように見えるこれらの要素を掛け合わせて、アクティブ・ラーニングを一層アクティブなものにしようという狙いがある。
次世代の教育を支える「ハードとソフトの充実」
そして、それらのハードに負けないくらい先進的な取り組みが、アクティブ・ラーニングを通して実施されている。企画当初からアクティブ・ラーニングのコアメンバーとして関わっている、地球環境科学部環境システム学科の渡来靖准教授はこう話す。「学校側がどんなに立派な仕組みを作っても、最終的には学生たちが積極的に取り組んでくれるかどうかです。双方向型の講義やフィールドワークは、学生たちが学問的なおもしろさに気づいてもらうきっかけになればいいと考えています。今後は従来型の授業とのバランス感覚が必要になってくるでしょう」。
立正大の取り組みはまだ始まったばかりで、試行錯誤を続けている段階だ。だが、近い将来この取り組みが平準化され、全国の大学へと広がっていくはず!
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