コスパが悪い?:若者の「恋愛に無関心」 本音は…
毎日新聞 2015年02月04日 17時53分(最終更新 02月04日 18時17分)
結局、恋愛に興味がない人は増えているのか。心の専門家に聞こうと精神科医の高橋和巳さんを訪ねた。「昔の男は酒席で『僕、お酒飲めません』とは言えなかったが、今は言える。それと同じです」とあっさり。
つまり、昔から恋愛や異性にがつがつしない男女はいた。でも結婚するのが当然の社会では「興味ありません」なんて言い出せなかった。それが今や、恋愛にも仕事にもがつがつしない生き方が許され、口にもできる。だから「恋愛に興味がない」人が増えたように見えるというわけだ。
「ただし」と高橋さんが真面目な顔で付け加える。「例えば仲むつまじいカップルを見てもうらやましさを全く感じない、あるいは、なぜうらやましいのか分からない、という人は要注意です。本人に認識がなくても、幼少時の虐待が強く疑われるからです」
普通の親子関係ならば、子供は自然に他者に愛情を持てるようになる。しかし虐待を受けると、他者への「恐れ」だけがある。大人になっても人を好きになることがないし、恋愛とはどういう気持ちか、「片思い」がどういうものかも分からず、性欲すら湧かないというのだ。
高橋さんは、クリニックでの治療経験などから「こうした虐待経験者は人口の5〜10%はいると考えています。90%の人にとっては恋愛への関心の濃淡の問題ですが、虐待経験者は恋愛そのものができない」と話し、虐待問題に詳しいカウンセラーを訪ねることを勧める。半年から2年ぐらいで、問題を乗り越えることが可能という。
「いのち短し恋せよ乙女」とはいうものの、「だれもが恋愛に関心があって当然」というのはどうやら古い考えのようだ。