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私の幼馴染はチートで奇麗なBL主人公 作者:雪琦

06

「な、な」
 何を、という言葉が出て来ない。ぱくぱくと口を動かす私に、イストは小首を傾げた。
「まだ足元が覚束ないように見受けました。今も体調がよろしくないのでは? それにこの人混みで、あなたを見失っては元も子もありません。雪道ですから歩くのも大変でしょう。私がお連れした方がよいと判断いたしました」
 な、なるほど。とても論理的な説明ありがとうございます。
 けれど絶句している私にイストは何を思ったのか、はっと表情を変えた。
「断りもなく触れるなど、無礼なことをいたしました。それでお怒りなのですね? どんな罰も受け入れます。ですからどうか、今は私が触れることをお許しください」
 ――ほえ!? 私がお怒り!?
 勘違いをして許しを請うイストに、私はあわあわと口を開いた。
「お、怒っていません、驚いただけですからっ」
 イストはその言葉にほっと息を吐くと、ゆるりと瞼を伏せた。
「ならばよいのですが……。とは言え、失礼なことをいたしました。申し訳ありません」
 そう告げたあと、イストは視線を上げない。どうやら落ち込んでいるようなので、私は慰めることにした。
「大丈夫ですから。お気になさらず」
 全然気にしてませんよー、と微笑むと、イストはやっと視線を上げた。
「お優しい言葉、感謝いたします。では教会に向かいましょう」
 彼は淡く笑むと、さくさくと雪を踏みしめながら歩き始めた。大通りの方ではなく、住宅街の入り組んだ道を通り、しばらくして教会に辿り着いた。
 教会の白い壁には緻密な彫刻がなされており、美しい天使が地に舞い降りる様子が描かれている。壁に見惚れているうちに、イストは街の住人が入る表の扉ではなく裏の扉から教会内に入った。
 柱が続く長い廊下を歩いていると、その先に数人の男の人達がいた。イストと同じ純白のマントを羽織っている。彼が言っていた騎士団の人だろうか。
「おや、イストじゃないか」
 ふと顔をこちらに向けた一人の青年が、イストを見て微笑んだ。けれどその視線を私の方に向けると、一瞬目を見開く。そして再びイストに顔を向けると、至極真面目な表情で問いかけた。
「イスト、一体どこからそのお嬢さんを攫って来たんだい?」
 数人の騎士全員に凝視されて、私は身体を固めた。
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