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私の幼馴染はチートで奇麗なBL主人公 作者:雪琦

05

 静かな眼差しを向けてくる少年に、私はこくこくと頷いた。自分の人生に大いに関わってくる人物の登場に、どう接したものかと悩む。
 アルセーヌと彼が出会うのは七年後のはずだ。幼い頃に出会っていたなんて設定はなかったと思うんだけれど。
「保護者とは離れてしまったのですか?」
「は、はい」
「では私と共に教会に来てくださいますか。特徴を教えていただければ、私がお探しいたします。教会には騎士団の者もおりますゆえ、どうぞご安心を」
 私は頷くべきか、ひどく迷った。
 有り得なかったはずの出来事が起きたら、物語にどんな影響を及ぼすのだろう。それとも私が忘れているだけで、あらすじ通りの展開なのだろうか。
 躊躇する私に、イストは表情を曇らせた。
「やはり男は恐ろしいですか。私を信用していただけない?」
「いえ、そんなことは」
 美少年の憂い顔に、わずかに罪悪感を覚える。
 ――うう、どうすればいいの。
 記憶の氾濫はおさまったけれど、まだその情報を整理しきれていない。どう対応すれば良いというのだろう。
「尊ぶべき女人を危険にさらす真似はできません。どうか」
 確かにあたりは薄暗くなり始めていて、自分一人で探すには危険に満ちている。
 この国は女性が多い方だけれど、それは他国と比べれば、というだけだ。男性と比べて圧倒的に少なく、狙われる存在なのは変わりない。
 澄んだ泉のような真摯な眼差しに、私はついに折れた。
「あの、よろしくお願いします……」
「はい。このイストにお任せください」
 イストは嬉しそうに微笑んだ。
 おお、きらきらが見える。
「もしよろしければ、お名前を教えてくださいますか」
「ジュリアと言います」
「ジュリア様。美しい響きですね」
 う、美しい響き。
 両親が授けてくれた名を褒められるのは嬉しいけれど、ここまで恥ずかしげもなく言われると私が照れてしまうではないか。
「ありがとうございます……」
 朱が差した頬を隠すため私はうつむいて小さく礼を告げた。今が夕方で良かった。赤い顔に気付かれずにすむ。
「私に敬称は必要ありません。どうかイストとお呼びください」
 イストは純白のマントを払って優雅に立ち上がる。そして彼が屈みこんだかと思うと、私は突然浮遊感に襲われた。
「い、イスト……!?」
 イストは片腕に腰掛けさせるように、私を抱き上げていた。
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