【コラム】韓国人に福祉を享受する市民意識はあるのか

 もちろんフランスのような先進国であっても、書類を偽造して不当に福祉の恩恵を受けるケースはある。欧米先進国では福祉政策の歴史が100年を超え、所得の40-50%を税金として支払っているのだから、「ただ乗り」を考える人間がいるのもある意味当然かもしれない。しかし韓国では本格的な福祉政策はまだ始まったばかりだ。そのため所得に占める税の割合を見ればまだ先進国の半分程度のレベルだが、それでも国民は「福祉の恩恵をただで受けたい」という思いが非常に強いようだ。

 国が「ただで子どもの面倒を見る」と言っているのだから、働きに出ていない専業主婦たちも先を争って子どもを保育園に預けようとする。利子や年金などで手にする所得は決して少なくないにもかかわらず、健康保険料の免除を受けようとさまざまな手を使う。また給与所得者と自営業者の3分の1以上が所得税の免除を受けるような状況で、国民の誰もが最初から福祉にばかり頼ろうとする。これらはどれも異常な状況と言わざるを得ない。それでも今回の年末調整騒ぎで表面化したように、国民の多くは先進国並みの福祉を期待しながらも、税金をこれまで以上に多く払うつもりなど毛頭ない。福祉を権利としてのみ認識し、それを維持する義務や責任は他人が負うべきものと考えているのだ。

 福祉の恩恵を幅広く行き渡らせるには、まずはそれに見合った市民意識の支えがなければならない。しかも先進国ではかつて1人当たりの国民所得が1万ドル(約118万円)だった時代の福祉や分配政策、労使関係をモデルとして将来の設計図を描こうとしている。利己心と公益との調和、そしてそれを支えるため国民が少しずつ譲歩し、妥協するのは成熟した市民社会となるために必要な条件の一つだ。

 もちろん韓国でも希望を感じたことはある。アジア通貨危機当時、国民の間で金を拠出する運動が広がったのがそれだ。欧州で財政危機が表面化した際、現地の有識者たちは「財政危機を克服するためには、アジア通貨危機の時に韓国人が見せてくれた市民意識と連帯がぜひとも必要だ」と語った。ところが今のわれわれの姿はどうだろうか。市民としての責任ある行動や考え方は見られなくなり、ただ乗りを考える人間たちばかりが社会にあふれかえっているのではないだろうか。

国際部=金洪秀(キム・ホンス)次長
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