【コラム】韓国人に福祉を享受する市民意識はあるのか

【コラム】韓国人に福祉を享受する市民意識はあるのか

 もう数年前にもなるが、あるベテラン外交官の夫人から1970年代の韓国外交官たちが味わった数々の苦い思い出話について聞く機会があった。当時のエピソードの一つにこのようなものがあった。重要な外交使節を迎え、立場上必ず出席しなければならないパーティーは多いが、そのパーティーで着用するえんび服を購入する金がなく、夫人はいつも悩んでいたという。ある時この夫人が頭をめぐらして考え付いたのは、まずデパートに行って高級服を購入し、それを着てパーティーに出席した次の日、あれこれ理由をつけてそれをデパートに返品するというものだった。貧しかった時代のほろ苦い思い出話だ。

 映画『国際市場』の舞台となった時代、われわれの父親たちは炭鉱労働者としてドイツに行き、またあのつらい戦争に携わるためベトナムの地にも行った。その世代が味わった苦労の上に、われわれは今1人当たりの国民所得が2万ドル(約240万円)の時代に生きている。しかし今われわれの世代は果たしてその所得のレベルに見合った意識や教養を持ち合わせているだろうか。

 10年以上前、フランスで語学研修を受けていたころ、6歳の子どもを公立の幼稚園に通わせた。保育費は無料だったが、昼食代は自己負担だ。ただしこれも親の所得によって負担額が異なり、一般の庶民は無料だが、高所得者は1食当たり5000ウォン(約540円)ほど支払わねばならない。ところが韓国の大企業の駐在員たちは所得を低く申告して昼食代を支払わないケースが多く、しかもこれを大きな成功談のように互いに自慢し合っていた。

 このような光景は韓国が世界10位圏の経済大国になった今も変わっていない。2008年に特派員として再びパリに赴任したとき、2人目の子どもを公立の保育園に通わせようと思ったが、夫婦共働きの世帯という条件があったため諦めた。ところが韓国企業の駐在員の中には、配偶者の在職証明書を偽造して子どもを公立の保育園に通わせる人もいた。このような光景を目の当たりにすると「果たしてわれわれは先進国の福祉制度の恩恵を享受する姿勢を持ち合わせているだろうか」という疑問がふと湧いた。

国際部=金洪秀(キム・ホンス)次長
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