[PR]

■キャンプの素顔

 子どもの頃、カズが嫌いだった。サッカー界のスター、三浦知良だ。当時はJリーグ開幕直後で、派手な服装のカズが連日テレビに登場していた。ひねくれ少女だった私は、「こんなカッコつけるなんて、スポーツ選手じゃなくてタレントじゃん」と思っていた。敬意を抱くようになったのは、大人になってからだ。

 だが「カッコイイ」というのは大事らしい。「男の子はそういう姿にあこがれて、モチベーションにもなるんですよ」。DeNAの投手、山口俊(27)が教えてくれた。

 昨年末、山口は車を買い替えた。高級ドイツ車、ベンツ。しかも最上級車種「Sクラス」だ。プロ入りして初めて買った車は国産車だったが、3台目で「とうとう買っちゃいました」とはにかむ。ちなみに5年ローンだそうだ。

 「ベンツに乗る俺」――。そんな理想像が、プロ10年目を迎える山口の原点にある。小学生の頃、選手名鑑をパラパラと眺めていて驚いたという。「選手の愛車、ベンツばっかり!」。そして、「カッコイイ! プロ野球選手になって、ベンツに乗りたい!」と練習に励んできた。

 「野球選手はダサイって思われたくない」と、今は茶色の髪にパーマをかけ、ひげを生やす。キャンプ中はファンサービスに力を入れ、キメ顔で写真撮影に応じる。「グラウンドで結果を出すことは当然大事。でも、『ああいう男になりたい』とか『絶対モテそう』とか、そう思ってもらうことも大事だと思う。僕自身、それで頑張れたから」

 カズは結果を残し、なおかつカッコいい。だからこそ人気を保っている。12球団で唯一CS進出経験がないDeNA。充実したキャンプを送り、結果とカッコ良さを兼ね備えたチームになって欲しい。(渡辺芳枝)