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道徳の新学習指導要領案まとまる
2月4日 18時00分

文部科学省は、「特別の教科」となる「道徳」の指導内容を定めた新しい学習指導要領の案をまとめました。
いじめ問題を踏まえて、「自分の好き嫌いにとらわれないで接する」といった「公正、公平」について小学校低学年から教えるほか、「国の文化と生活への愛着」も低学年から学ぶとしています。

文部科学省は「道徳」を「特別の教科」と位置づけ、国の検定を受けた教科書を導入して記述式で評価を行うことを決めていて、平成30年度からの実施を目指し、教育目標や指導内容を定めた新しい学習指導要領の案をまとめました。
このなかでは、いじめ問題が道徳教育を充実させようという議論のきっかけになったことを踏まえ、「公正、公平」や「相互理解」について前倒しで教える内容となっていて、▽小学校1、2年生で「自分の好き嫌いにとらわれないで接すること」、▽3、4年生で「誰に対しても分け隔てをせず、公正、公平な態度で接すること」といった内容が新たに加わっています。
また、現在の学習指導要領では小学校1、2年生で「郷土の文化や生活に親しみ、愛着を持つ」とされていますが、今回は「伝統と文化の尊重、国や郷土を愛する態度」という項目で「我が国や郷土の文化と生活に親しみ、愛着を持つこと」と、「我が国」ということばが加わり、「国の文化と生活への愛着」も低学年から学ぶとしています。
同時に、「他国の人々や文化に親しむ」という項目も新たに加わっていて、文部科学省は「ほかの国を知り、自分の国を愛することで、国際社会に生きる日本人を育成することが目標だ」と話しています。
新しい案では、さらに、子どもたちが考えを深められるよう、意見を話し合ったり書いたりする言語活動や、問題解決的な学習を取り入れるなど指導方法を工夫するよう求めています。
文部科学省はこの案をホームページで公表し、来月5日まで一般から意見を募ることにしています。

22項目に分けて定める

道徳の新しい学習指導要領の案では、22の項目に分けて、各学年で何を教えるか、定めています。
このうち、小学校で新しく加わった内容を見ますと、「個性の伸長」という項目で、1、2年生では「自分の特徴に気づくこと」とされています。
また、「相互理解、寛容」は3、4年生から指導する項目となっていて、「自分の考えや意見を相手に伝えるとともに、相手のことを理解し、自分と異なる意見も大切にすること」とされています。
さらに、5、6年生で新たに加わった項目として「よりよく生きる喜び」があり、「よりよく生きようとする人間の強さや気高さを理解し、人間として生きる喜びを感じること」となっています。

「“考える道徳”にしたい」

文部科学省の合田哲雄教育課程課長は、今回の学習指導要領の案について、「今まで“読み物道徳”と言われてきた道徳教育を、“考える道徳”、“議論する道徳”にしていきたい。さまざまな考え方と向き合い道徳的に考える力を身につけるための質的転換を図るのが大きな目標だ」と話しています。
そのうえで、具体的な内容について、「道徳教育の改善がいじめ問題の特効薬とは言わないが、“してはならないことはしない”ということを伝えるとともに、自尊感情を育むための項目を加えた。また、国や郷土を愛し他国を尊重することで平和的に国際貢献していくのが教育基本法の趣旨だと思うので、それを前提に教える内容を整理した」と話しました。

「“正しい答え”誘導を懸念」

いじめによる自殺で娘を亡くし、子どもたちに命の大切さを伝える講演を1000回以上行ってきたNPO「ジェントルハートプロジェクト」理事の小森美登里さんは「いじめの問題は子どもの問題ではなく、いじめを生んでしまう土壌を作った大人たちの問題だと思っているが、この案には大人でも実行するのが難しい内容がたくさん書かれている。互いの違いを認め合って価値を見いだすことがいじめをなくす基本なので、“正しい答え”を誘導するようなものになってはいけないと思う。大人が子どもに教えるという上下の関係ではなく、一緒に考えて答えを探すものにしなければならないし、そのためには教員の対応力を磨くことが何より重要だ」と指摘しています。

「教える側が問われる」

小学校で道徳を専門に教え、教員養成や教材作りにも携わる筑波大学附属小学校の加藤宣行教諭は「教科となることで、学習指導要領の重みはこれまでと違い、私たちの現場で強制力を持つものになる。示された案は子どもたちに考えさせようという内容になっており評価できるが、実践するには教える側の問いかけや授業の展開の工夫が求められる。深い洞察につながるような授業スタイルに変えていくための教員養成や研修が必要だ」と話しています。

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