Updated: Tokyo  2015/02/04 17:24  |  New York  2015/02/04 03:24  |  London  2015/02/04 08:24
 

岩田氏:BEIには欠陥、それだけで予想インフレ判断は危険

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  (ブルームバーグ):日本銀行の岩田規久男副総裁は4日午後、仙台市内で記者会見し、日銀の金融政策運営の鍵を握る予想インフレ率を測る指標として、ブレークイーブンレート(BEI)には「欠陥はある」と述べた上で、「それだけを見て予想インフレ率がどうなったかと判断するのは少しリスキーだ」と述べた。

岩田副総裁は就任前の2013年3月4日の講演で「当座預金残高が10%増えると予想インフレ率は0.44ポイント上がる」と述べたと報じられた。当時44兆円程度だった日銀の当座預金残高は足元で185兆円と4倍上に達している。

しかし、市場の予想インフレ率を測る指標の1つで、10年物の固定利付国債と物価連動債の利回り格差(ブレークイーブンレート、BEI )は4日午後3時現在、0.824%と1%を下回る水準で推移している。

当時の発言との整合性を問われ、岩田副総裁は「予想インフレ率は日銀の金融政策の重要なキーポイントだが、これをどうやって測るかは非常に難しい。日本の場合、BEIに対する信頼性が米欧と比べてどれだけあるかという点は問題になっていて、市場が非常に小さく、取引関係者が限られているので、そういう問題点があった」と指摘。

「研究者の時は予想インフレ率を知る手掛かりはそれしかなくて、ある程度は欠陥はあるが、それを利用せざるを得なかった」と述べた。

学者時代より深く分析できる

その上で、「日銀に入ると、予想インフレ率をみる上でいろいろな指標を提供してくれ、学者として外にいる時にはなかなか手に入らないもの、あるいは学者としてとしては気づかなかったデータもある。実際、BEIについても、実はブルームバーグのデータも私たちはお金がないので、なかなか手に入らなかった」と指摘。

「そういう意味で、学者としては手が縛られていた。それが日銀に来ると、いろいろな膨大な指標を提供してもらい、いろいろなサーベイのデータを見たり、いろいろしなければならないことがだんだん分かってきた」と語った。

さらに、最近BEIが非常に下がっていることについて、「長い間2%程度でアンカーされていた米国ですらこの原油価格の下ではピークから30-40%下がっており、最近の動きはよく分からないところがあるので、それだけを見て予想インフレ率がどうなったかと判断するのは少しリスキーだ」と指摘。

「サーベイデータ、あるいは賃金交渉や企業の価格設定行動など少し広い範囲でデータを見るようにしている。その結果、広い範囲で見ると、足元でインフレ率が落ちているからと言って、中長期の予想インフレ率がそれほど崩れているわけではないことが分かってきた。そういう意味で、情報を提供、分析してくれるスタッフのおかげで、学者時代よりいろいろと深く分析できるようになったと思っている」と述べた。

原油下落は物価上昇要因に

原油価格の下落が消費者物価に与える影響について「前年比の影響はいずれはく落する。経済活動には非常に好影響を与えるので、長い目で見ると、物価上昇要因になる」と指摘。

「原油価格は現状程度の水準から先行き緩やかに上昇していくという前提に立てば、原油価格下落の影響がはく落するに伴って、物価上昇率は伸び率を高めて、15年度を中心とする期間に2%に達するとみている」と述べた。

岩田副総裁は「ただし、原油価格はこのところ大幅に変動しており、消費者物価が2%に達する時期が原油価格の動向によって多少前後する可能性はあると考えている」と指摘。

「日銀としては、2%の物価目標を2年程度を念頭に置いてできるだけ早期に実現するよう量的・質的金融緩和を強力に推進していくという方針に全く変わりはない」と述べた。

日銀のコミットメントが十分でなくなるリスクも

一方で、「原油価格が今後どんどん下がっていって、5年や10年といった予想インフレ率も下がってくると、どれくらい下がるかに依存するが、やはりそれは前向きな活動に影響を与え、それによってできるだけ早く実現するという日銀のコミットメントが必ずしも十分でなくなるリスクはある」と指摘。

「原油価格が予想インフレ率にどのような影響を与えるかを注視していく」と述べた。

記事についての記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Brett Miller bmiller30@bloomberg.net 淡路毅, 平野和

更新日時: 2015/02/04 16:09 JST

 
 
 
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