「イスラム国」人質事件 得意なはずの外交で「炎上」利用された安倍政権


(更新 2015/2/ 4 07:00)

1月25日の安部首相の会見 (c)朝日新聞社 

1月25日の安部首相の会見 (c)朝日新聞社 

 称賛を浴びるはずの2億ドル支援が、「イスラム国」の宣伝に利用されてしまった安倍晋三首相(60)。その後も翻弄され続け、得意なはずの「外交」で政権の足元が揺らいでいる。

 今回の事件対応で安倍首相の失態と指摘されているのは主に二つ。【1】イスラム国で日本人が捕らわれているのに、なぜ2億ドルのイスラム国対策支援を表明したのか【2】現地対策本部をイスラム国との交渉ルートを持つトルコに、なぜ置かなかったのか──という点だ。

「インサイドライン」編集長で外交に詳しい歳川隆雄氏は「2億ドルの支援を表明した後の危険性について、外務省は首相に説明していたはず」と指摘する。

「今回の中東訪問が確定したのは昨年11月末。出発までに上村司・中東アフリカ局長が5回、首相にレクチャーをしています。イスラム国対策の支援をハデに打ち出せば、イスラム国から日本が敵視されることは当然、説明があったでしょう。最終的に首相か首相側近が『それでも表明したほうがメリットは大きい。推し進める積極的平和主義を世界にアピールできる』と判断したのだと思います」

 首相の中東訪問に同行した官邸記者によると、行きの政府専用機内ですでに、首相は高揚した様子だったという。世耕弘成官房副長官も「今年初めての外遊で気合が入っている」と触れ回っていたというから、首相の頭の中は、安倍外交のアピールでいっぱいだったのかもしれない。

 現地対策本部をトルコに置かなかったことについては、外交に詳しい自民党中堅議員も疑問を投げかける。

「トルコはヨルダンと違い、イスラム国への空爆に加わっていない。イスラム国とは持ちつ持たれつの関係で、独自の交渉ルートも持つ。加えて有数の親日国。ヨルダンに置くより交渉はスムーズにいった可能性はある」

 かつて小泉内閣で政務秘書官を務め、今は官邸スタッフの飯島勲内閣参与も最新の「週刊文春」で「あそこ(ヨルダン)でいいの?」と異例の批判を口にした。事件がいったん終息すれば、首相が野党から厳しい追及を受けるのは必至だ。

 イスラム国が日本を「十字軍」と認定したことで、海外の日本人旅行客や日本本土が今後狙われる可能性も出てきている。日本では来年、主要国首脳会議(G8サミット)も開催されるだけに、有効なテロ対策がすぐさま求められる。

(本誌取材班・一原知之)

週刊朝日 2015年2月13日号より抜粋

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