村上春樹の考える「村上春樹の読み方」

はじめまして。村上さんの本は大好きで殆ど全部読ませて頂いています。たまに本や雑誌の記事などで「村上春樹の読み方」みたいなものを見かけることがありますが、僕の推測では、恐らくそれは村上さんの小説が「村上春樹はこの小説を通して何を伝えようとしてるのか?」という視点で読むと物凄く難しいものだからだと思います(といっても僕はこういった本や記事を読んだことがないので、あくまで勝手な推測です)。僕自身、村上さんの本を村上さんは何を読者に伝えたいのかとか、この本に隠された本当の意味は何なのかなんて視点で読むと、読書力も観察力もなく知識も浅いものでさっぱりわかりません。ではなぜ村上さんの本が大好きなのかというと、村上さんの本は読んでいてとても楽しいからなんです。たいていの本は1回しか読みませんが、村上さんの本は何回読んでも物語が頭の中に映像になって出てきて、それが物凄くリアルで、半分その世界の一部になり、半分その映像を最前列で見ているお客さんのようになりながら、ストーリーを追いかけているのがこの上なく楽しいのです。正直言うと、僕は村上さんが何を伝えたいのかとか、その小説の意味などというものをあまり考えていません。個人的にはこれからもこのスタイルで楽しく村上さんの作品を読んでいきたいと思っているのですが、村上さんはこのような読者をどう思いますか? もし「いや違う、こうして読んで欲しいんだ!」なんていうのがあったら、教えて下さい。
(ゆーてつ、男性、41歳、会社員)

いつも言っていることなんですが、小説には意味なんてそんなにありません。というか、意味という座標軸でとらえることができないからこそ、小説が有効に機能するのです。意味という座標軸でとらえてしまうと、小説は味気ないつまらないものになってしまいます。物語の足がとまってしまいます。「意味はようわからんけど、なんかおもろいし、読んだあと腹にたまるんや」(なぜか関西弁になる)というのが僕の考える小説の理想のかたちです。大事なことは固定の中にではなく、推移の中にあります。それが僕の考える「村上春樹の読み方」です。

村上春樹拝