【社説】国民を欺いた無償福祉、今こそ幻想から目覚めよ

 与党セヌリ党の金武星(キム・ムソン)代表は3日、国会院内会派の代表による演説で「増税のない福祉など不可能であり、そのような言葉で政治家が国民を欺くのは間違っている」と述べた。「増税なき福祉」とは朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が2012年の大統領選挙の際に掲げた、柱ともいえる公約だ。その影響もあってか、現政権発足後の2年間、政府・与党内では増税問題について語ることが一種のタブーのようになってしまった。しかし金代表はこの日、決意したかのようにこの問題について正面から語った。

 演説で金代表は、福祉政策への行き過ぎた支出により国が破綻する危機に追い込まれたアルゼンチンやギリシャなどについて言及し「政治家が自らの人気ばかりを考えるようになれば、その国には未来がない」と述べた。さらに「国民の権利として福祉の恩恵を受けるには、国民は納税の義務を果たし、それに必要な費用を負担しなければならない。この事実はしっかりと理解しておく必要がある」と語り、福祉予算の全面的な見直しを求めた。

 先日セヌリ党の新しい院内代表に選出されたばかりのユ・スンミン議員も、以前から「増税なき福祉は虚構」とする見解を何度も口にしている。これは与党の代表と院内代表がそろって朴大統領の公約に挑戦する形だ。しかしこのような与党内での衝突あるいは葛藤という政治的な側面よりも、さらに重要なことがある。それは政界が、今この国の直面している現実をやっと直視し、ついにそれを口にし始めたという点だ。

 朴大統領は2012年の大統領選挙の際、131兆ウォン(現在のレートで約14兆円、以下同じ)もの財源が必要な福祉政策を公約として掲げ、その財源について説明したいわゆる「公約家計簿」も同時に発表した。それによるとまず「歳出全体の構造改革」を断行し、その上で「地下経済への課税」「非課税減免の見直し」などにより年間27兆ウォン(約2兆9000億円)を捻出し、これを任期となる5年間続けていけば、福祉に使うための費用として135兆ウォン(約14兆5000億円)を調達できるとしていた。しかしこれは計画通りにはいかなかった。まず昨年は10兆ウォン(約1兆1000億円)以上もの税収減に見舞われた。それでも福祉関連の支出は選挙時の公約通り執行した。このような財政運営が今後も続いたとすれば、国全体として慢性的な赤字が続き、最終的にこの国は先進国の入り口に到達した時点で破綻してしまうだろう。

前のページ 1 | 2 次のページ
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連ニュース