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PC遠隔操作事件で懲役8年
2月4日 12時55分

PC遠隔操作事件で懲役8年
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4人の男性が誤って逮捕されたパソコンの遠隔操作事件の裁判で威力業務妨害などの罪に問われた被告に対し、東京地方裁判所は「無関係な第三者の人生に与える影響を顧みない自己中心的な犯行に全く酌むべき点がない」として懲役8年の判決を言い渡しました。

3年前、ウイルスに感染したパソコンが遠隔操作され、無差別殺人の犯行予告などが書き込まれた事件では無関係の男性4人が誤って逮捕されました。
一連の事件でインターネット関連会社の元社員、片山祐輔被告(32)が威力業務妨害などの罪に問われました。
4日の判決で東京地方裁判所の大野勝則裁判長は「被告は国家権力に対する個人的な恨みから、無実の人を誤認逮捕させることで捜査機関を出し抜こうと考えた。無関係な第三者の人生に与える影響を顧みない自己中心的な犯行に全く酌むべき点がない。保釈中にも真犯人を名乗る自作自演のメールを送るなどサイバー犯罪の中でも悪質だ」と指摘して片山被告に懲役8年を言い渡しました。
片山被告は主文を聞いても無表情のままで、およそ40分にわたる判決文の朗読をじっと動かずに聞いていました。

片山被告「反省不十分と判断されたか」

片山被告の弁護を担当した佐藤博史弁護士は会見で、「警察が誤認逮捕をしたことの責任も刑の重さに反映されているなど弁護側の主張が受け入れられなかったと言わざるをえない。判決のあとに接見した片山被告は『反省が十分ではないと判断され、判決に影響したのだろうか』と話していた。控訴するかどうかは2週間考えて決めたい」と述べました。

片山被告犯行告白までのいきさつ

3年前、インターネットの掲示板にイベントでの無差別殺人や小学校の襲撃などの犯行予告が相次いで書き込まれました。
さらに「爆弾を機内に持ち込んだ」というメールが航空会社に送られ、日本からニューヨークに向かっていた旅客機が急きょ引き返す事態になりました。
警察は書き込みやメール送信に使われたパソコンを特定し、その持ち主だった4人の男性を次々に逮捕しました。
ところが逮捕された4人は全く無関係でした。
パソコンがウイルスに感染するなどして遠隔操作されていたのです。
従来の捜査の想定を超える新たなサイバー犯罪に直面した警察は誤認逮捕を認め、謝罪するほかありませんでした。
こうしたなか、突然、報道機関などにメールが届きます。
差出人は一連の事件の真犯人を名乗り、「警察・検察のかたへ、あそんでくれてありがとう」などと捜査機関を挑発し、事件は一気に劇場型犯罪の様相を呈しました。
メールには発信元の特定を難しくする特殊なソフトが使われていて、捜査は難航します。
しかし、警察はおととし1月に送りつけられた4通目のメールをきっかけに犯人特定の糸口をつかみました。
メールに書かれたクイズを解いていくと神奈川県の江の島にいる猫の写真が現れ、実際にいた猫の首輪には遠隔操作ウイルスのプログラムが入った記憶媒体が取りつけられていました。
そして、その近くに設置されていた防犯カメラの映像に、猫に近づく片山祐輔被告に似た男の姿が映っていました。
捜査はサイバー空間から現実の世界に舞台が移ったことで大きく進展し、翌月、被告は逮捕されました。
片山被告は一貫して容疑を否認していました。
去年2月に始まった裁判で「私も真犯人に遠隔操作された被害者だ」と無罪を主張しました。
裁判は犯行を裏付ける直接的な証拠がないなか、検察側と弁護側が全面的に対立する構図のまま進められ、被告の保釈も認められました。
そして去年5月、被告が法廷にいる時間帯に報道機関などに再び真犯人を名乗るメールが届きました。
「片山氏のパソコンにウイルスを感染させた」ことを知らせる内容でした。
被告は会見を開き、「これをもって裁判を終わらせてほしい」と述べて疑いが晴れたと強調しました。
しかし、このメールは被告が携帯電話の予約機能を使って自分で送ったものでした。
この前日、捜査員が東京の荒川の河川敷で携帯電話を埋める被告の姿を確認していたのです。
掘り出された携帯電話にはメールと同じ文面が残されていました。
えん罪を決定づけようとした被告は逆に言い逃れができない状況に追い込まれ、一時、行方が分からなくなりました。
そして「死のうと思ったが死にきれなかった」と言って弁護士の元に出向き、一連の事件はすべて自分の犯行だと告白しました。
被告は再び身柄を拘束され、その後の裁判でも一転して起訴された内容を全面的に認めました。

PC遠隔操作に企業も危機感

所有者が気付かないうちに、パソコンが悪意を持って遠隔操作されることが現実化した今回の事件では、標的にされた個人にとどまらず、顧客情報や個人情報など機密の管理をコンピューターシステムに委ねる企業や官公庁も危機感を強めています。
大手電機メーカーのグループ会社が2日開いたセキュリティ技術の研修には防衛策を学ぼうとIT関連の企業や省庁のシステム担当者など9人が参加しました。
研修ではウイルスに感染したパソコンが別のパソコンのキーボードの操作で勝手に文字が書き込まれることやIDやパスワードを盗み取られるおそれがあることを体験しました。
そして遠隔操作を防ぐ対策として、ソフトウエアを最新の状態に保ち、ウイルス対策ソフトを導入することや、不審なプログラムを安易にダウンロードしないことなどが説明されました。
研修に参加した教育機関のシステム管理者の女性は「攻撃される側は気付かないうちにいろんな情報を盗まれるので、すごく怖いと思った。組織では個人情報も扱っているので漏えいしないように、最善の策を取らなければいけない」と話していました。
講師を務めたNECマネジメントパートナーの樂満俊幸さんは「事件をきっかけに、パソコンのセキュリティを意識している人が非常に増えてきたと感じる。企業の信用に関わるうえ損害にもつながる問題なので、どこの企業も対策を重要視している」と話していました。

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