「抵抗詩人」尹東柱の魂、永遠に 福岡市に詩碑建立目指す市民団体、発足へ [福岡県]
戦中、ハングルで詩を書いて逮捕され、福岡で獄死した韓国の国民的詩人、尹東柱(ユンドンジュ)(享年27)の詩碑建立を目指す市民団体が没後70年の2月16日、福岡市で発足する。発起人は、韓国語教師や文学研究者など日韓の民間交流を続けてきた人たち。「隣国の若者の未来を奪った植民地支配と戦争を反省し、過ちを繰り返さない誓いを新たにする場所にしたい」と訴える。
尹は1917年に旧満州(中国東北部)で出生。少年時代に詩を始め、42年に英文学を学びに同志社大などへ留学したが、在学中の43年7月、ハングルでの詩作活動が独立運動に関わったとみなされ、治安維持法違反で逮捕された。懲役2年の判決を受け、福岡市早良区百道にあった旧福岡刑務所に収監。終戦半年前の45年2月16日、獄死した。死因は今も明らかになっていない。
韓国では48年、初の詩集「空と風と星と詩」の出版をきっかけに「抵抗詩人」として脚光を浴び始めた。〈死ぬ日まで空を仰ぎ 一点の恥辱(はじ)なきことを〉で始まる代表作「序詩」などは教科書や入試にも採用された。日本では84年から出版。詩人の茨木のり子さんがエッセーで紹介するなどして知られるようになった。
詩碑建立は、福岡県立大で韓国語を教えてきた西岡健治名誉教授(69)らが発案した。西岡さんらは94年から「尹東柱の詩を読む会」を福岡市で毎月開き、命日前後には刑務所跡地に近い公園で追悼式を行ってきた。ただ最近は、メンバーの高齢化で史実の風化が懸念されていた。
発起人は西岡さんのほか、熊木勉福岡大教授、藤原恵洋九州大教授、京都市の詩人河津聖恵さんら10人。建立場所を選定して費用の寄付を呼び掛けるほか、市民対象に開く文学講座で理解を深めてもらう。
福岡は朝鮮独立運動に関わった受刑者が刑務所に集められ、尹のいとこが獄死した地でもある。西岡さんは「母国を愛するがゆえに、前途ある若者が亡くなった。戦争体験者がいなくなっても語り継がれるように形に残したい」と話している。
問い合わせは「福岡に尹東柱の詩碑を建てる会」=メール(ydj.shihi@gmail.com)で。
=2015/01/31付 西日本新聞夕刊=