「Facebookが“Bluetooth Beacon”を使ったサービスに参入」の意味を考える ITジャーナリスト・鈴木淳也


Facebook Bluetooth Beaconのモジュール

Facebook Bluetooth Beaconのモジュール


「FacebookがBluetooth Beacon技術を使ったユーザーへのコンテンツ配信実験を行っている」というニュースが話題となっている。
Wall Street Journalなどが報じているが、Facebookは店舗やランドマークに関する情報をユーザーに届けるため、「Beacon技術」を使って装置に近付いたユーザーにその旨を通知するという仕掛けだ。

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Facebook Tests Bluetooth ‘Beacons’ to Feed Users Local Content
http://blogs.wsj.com/digits/2015/01/29/facebook-tests-bluetooth-beacons-to-feed-users-local-content/
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「アプリをダウンロードしてもらう」という導入ハードルがなくなる

このニュースにおけるポイントは、「Facebookが自らBeaconのプロモーションを行っている」という点にある。これまで、個々の店舗やサービス事業者がBeaconを設置して情報発信を行うケースは多々あったが、特にiPhoneでiBeaconの利用にあたっては「個々に専用アプリの導入が必要」といった理由もあり、「まずはアプリをインストールしてもらうところから」という導入ハードルの高さがあった。だがFacebookはサービス利用者も多く、モバイル端末にFacebookアプリを導入している比率も高いとみられる。ゆえに今回のFacebookの取り組みは、Beacon普及における大きなマイルストーンになる可能性があるとみられる。

Facebookが本格的にLBSに参入

Facebookが発表したBeacon技術は、「Place Tips」と呼ばれる新しいサービスで採用されている。同社が1月29日(現地時間)に発表したニュースリリースによれば(http://newsroom.fb.com/news/2015/01/introducing-place-tips-in-news-feed/)、Facebookアプリが利用者の現在位置を感知し、それに応じたコンテンツをNews Feed上に表示する仕組みだという。Place Tipsという名称からもわかるように、著名なランドマークや店舗などでその場所に応じた「Tips」が表示されるほか、フレンドがその場所で共有した写真や投稿が参照できる。位置情報を核にしたコミュニケーションツールといった体裁だ。

同件を報じたメディア各社では、同じ位置情報を基にしたSNSサービスを提供するYelpへの潜在的な脅威になると指摘している。Yelpや、一時期ブームとなったFoursquareなどのサービスはLBS(Location Based Service)というカテゴリで呼ばれ、特にユーザーが集まって情報を書き込み、評価を共有することでコンテンツを作り上げていく点で特徴がある。一般にイエローページのような地元のビジネス情報を単純に並べて検索させるサービスに比べ、より利用者の生に近い声が集まり、さらに人気スポットが簡単に把握でき、さらにLBSを通じた新たなコミュニケーション創出が可能というメリットがある。SNSでは最大規模に近い13億ユーザーをすでに抱えるFacebookならば、LBSのメリットを存分に発揮できるだろう。


Facebookが発表した新サービス「Place Tips」
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「Place Tips」と「Facebook Bluetooth Beacon」

Place TipsはすでにFacebookアプリの設定に組み込まれており、位置情報から同サービスを有効にすることで利用可能だ。現在の筆者の環境では試せなかったが、これによりNews Feed上にPlace Tipsのカードが出現するようになる。現在位置はGPSと携帯電話のネットワーク、Wi-Fiにより決定され、発表時点ですでに米ニューヨークのセントラルパーク、ブルックリン橋、タイムズスクエア、自由の女神、ジョン・F・ケネディ空港などで利用可能になっているとのこと。

また補助的ではあるものの、特定ポイントには上記3つの技術だけでなく、Facebook Bluetooth Beaconと呼ばれるBeaconを発信する専用モジュールが設置され、これを受信することでPlace Tipsが起動するようになっている。特に都市部において、屋内のランドマークや店舗など、従来型のA-GPSでは位置情報が特定できなかったり、正確な位置を取得するのが難しいケースが多い。Facebookによれば、メトロポリタン美術館、Dominique Ansel Bakery、Strand Book Store、Le Parker Meridien Hotel内のBurger Joint、Brooklyn Bowl、Pianos、Big Gay Ice Cream Shop、Veselkaといった施設や店舗で実験的にBluetooth Beaconが設置されていると説明する。もしこれら施設に顔を出す機会があったら、ぜひ試してみてはいかがだろうか?

ライター・鈴木淳也/Junya Suzuki
NFC、モバイルペイメント、モバイルマーケティング周辺の技術やトレンドを中心に活動を続けるITジャーナリスト。カンファレンスや展示会、展開事例の取材や調査のために世界中を巡る。アスキー(現KADOKAWA)で月刊誌編集に携わった後、アットマークアイティ(@IT、現アイティメディア)の立ち上げに参画。2002年の渡米を機に独立し、以後はフリーランスとして活動を続けている。