ISの蛮行は尽きるところを知りません。
今度は拘束していたヨルダンのパイロットを、檻に入れて生きながら焼き殺すという残酷な映像が公開されました。
これに対してオバマ等世界各国の首脳、政府、国連事務総長も、最大限の言葉でこの蛮行を非難していますが、アンマンでも映像がTVが繰り返し放映し、人々は街に出て口々に報復を要求しているとのことです。
ヨルダン国王も急遽訪米を切り上げ、帰国する模様ですが、ヨルダン軍も報復を声明したとのことです。

操縦士は後藤氏が殺害された時にはかなり前に殺されていた(1月3日という報道もある)とのことですが、その映像を今頃になって何故ISが公開してきたのかは、勿論説明もありませんから不明ですが、先日は邦人二人でテロに弱い日本を揺さぶり、今度は空爆に参加している国の中では最も脆弱なヨルダン(国内には前から空爆参加反対の強い意見もあり、特に操縦士の拘束以降は、米連合作戦からの撤退を求める声も強くなっていた)を揺さぶることで、対IS連合を切り崩そうとしたとも考えられます。
勿論、このような問題に推測は危険ですが、あの映像を見たものは例外なく、ISの邪悪さを強く印象付けられることは間違いなく、ISがその強さを誇示しようとするだけなら、なぜかくも残酷な処刑方法を選び、それを公開するのか、どうにも納得がいきません。

そこで先ずはヨルダンの対応ですが、仮にISが残酷な映像の公開で、日本国民を分断しようとしたように、ヨルダン国民を分断し、対IS作戦から撤退させようとしたら、ヨルダンの反応はおそらくその逆ではないかと思われます。

アラブ諸国、というかヨルダンの場合これまでテロ等で脅迫されると、国王を中心に団結し、これに断固対抗することを国民が選択することが2度もあったように思います。
1回は2008年だったかにアンマンのホテルの結婚式がイラクのアルカイダに襲われ、60人近い犠牲者が出たときで、それまでは自国への波及を恐れて若干あいまいな態度を取っていたヨルダンが明確な反アルカイダの政策を打ち出しました。
もう1回は、かなり古いことになりますが、1970年ヨルダン内に国家内国家を作っていたPLOが、ヨルダン政府に対して公然と反抗する姿勢を示した時に、国王が弾圧に躊躇していると、ヨルダン軍が戦車のアンテナに女性のブラジャーを結び付け、これだけ侮辱されて断固たる措置を取らないのは女みたいだと国王を批判し、国王も武力弾圧に踏み切った事がありました(事件が起きたのが9月であったので、PLO内に黒い9月と言うテロ集団ができて、ヨルダン首相の暗殺や、ミュンへヘン・オリンピックのイスラエル選手襲撃事件を起こした)。

このようなヨルダンの過去の歴史に鑑みても、有力部族出身のパイロットが最も残酷な方法で殺害されて、国王ヨルダン軍はもとより、ヨルダンの体制を支えてきた遊牧民、部族が黙って何もしないということは、あり得ないような気がします。
おそらくはISに対する軍事行動の強化ということになるのでしょうが、地上での作戦(特殊部隊による活動も含め)も入るということになると、対IS国際連帯の活動は新たな転機を迎えるかもしれません。
更にあまり考えたくはありませんが、ヨルダン国内等でのIS支持者に対する色々な形での攻撃(テロも含む)という可能性も皆無ではないのではないでしょうか?

この事件と直接の関係はないと思いますが、米政府は難民援助等のための対ヨルダン支援を年6000万ドルから一億ドルに上げると3日発表しましたが、同じISの犠牲になり、今回は邦人人質事件で非常にお世話になった日本も、ヨルダンに対して連帯を示すためにも、具体的な協力を早いうちに表明することが重要ではないでしょうか・
とりあえず
http://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2015/02/04/أمريكا-ترفع-المساعدات-للأردن-إلى-مليار-دولار-سنويا.html
http://www.alquds.co.uk/?p=289823
http://aljazeera.net/news/arabic/2015/2/3/الجيش-الأردني-يتوعد-تنظيم-الدولة-والملك-يقطع-زيارته-لأميركا