森山誉恵「いつか親になるために」

シングルマザーはなぜ人に頼らない?【後編】生活保護は必要な人の2割にしか届いていない

2015年02月04日(水) 森山 誉恵
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Photo by Think stocks

前回は養育費の支払いの現状を見ていくことで、なぜシングルマザーが周りの人に頼らないのかということについて記させていただきました。今回は養育費という家族間でのサポート方法以外に、公的支援にそもそもどんな制度があるのかについて、まずはその概要や現状に触れていきたいと思います。

最も利用率の高い「児童扶養手当」

1人親世帯が利用できる制度の中でおそらく最も利用率が高いものが「児童扶養手当」です。児童扶養手当とは、父母が離婚する等して父又は母の一方からしか養育を受けられない1人親家庭などの児童のために地方自治体から支給される手当です。

費用は1人目で月額41,550円、二人目で約5,000円の加算、それ以降は1人あたり約3,000円ずつの加算となります。全額支給されるのは年間所得130万円以下で、130万~365万円の場合一部支給、所得365万円以上だと支給されません。また養育費を受け取る場合、養育費の8割が所得として算入されます。

児童扶養手当の利用率は、私がざっと計算したところ(1人親世帯全体の子ども数÷児童扶養手当利用児童数)約50%ですが、1人親世帯の貧困率は54.3%(2007年時点・厚生労働省調査)、母子家庭の貧困率は66%となっており、あまり貧困対策になっていないことがうかがえます。

子どものことを思ったときに1人親でも2人親でも、子どもが必要とする愛情やケアは変わらないため、できる限り子どもに割く時間を増やそうと思うのが親の心理だと思います。しかし、日本は1人親世帯の就労率は非常に高く、8割が就労をしている状況です。一方で母子家庭の66%、父子家庭を含む1人親世帯の54%が貧困なのです。よく、貧困率の話になると「怠けているから」「怠けている人に税金を使うな」という話になりますが、子どもに割く時間を犠牲にしてでも働いていて、それでもなお貧困であるということが実態なのです。その結果、子どもと6時間以上過ごせている母子家庭は17%、父子家庭は7%、一方で母子家庭の15%、父子家庭の20%が子どもと1時間も一緒に過ごせていません。

●1人親世帯の就業率


●子どもと一緒に過ごす時間(単位:%)

●1人親世帯の貧困率

出典:OECD(2011年)

1人親世帯の補助が子ども1人で約4万円、3人でも合計して5万円というのは、日本における1人親支援の基本的方針は子どもがいても働くのが当然ということを表しているかもしれません。なので、なぜ人に頼らない? 制度を利用しない? という論調に対しての一つの答えは、「利用しても解決できない制度になっている」ということが言えるのではないでしょうか。

捕捉までにですが、児童扶養手当を利用するための手続き方法としては、離婚する手続きとは別に児童扶養手当を受け取るための手続きを市区町村の窓口で行わなくてはいけないため、離婚して同時に手当がもらえるわけではありません。また毎年8月に年に児童の養育状況や前年の所得現状を届け出なくてはいけず、子どもの増減に伴う申告、収入の調査等も行われます。さらには2002年の母子寡婦福祉法の改正によって、児童扶養手当を5年間以上受給してきた世帯は、2008年からは最大半額を減額されることが定められました。2007年には「一部支給停止適用除外事由届出書」、および事由を証明する書類を、受給から5年を経過するまでに市町村に提出すれば減額を免れることができるようになりましたが、その後、その届出書およびその証明書類を毎年提出しなければならず、その提出が滞ると減額が適応されてしまいます。

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