ディレクター、UXデザイナーをしている大塚です。
今回は、5日間でアイデアを形にし、利用者に評価してもらい検証する「デザインスプリント」というプロセスについてご紹介します。
新規サービスを立ち上げたり、新機能を検討し、延々とブレストを繰り返し、いつまでたっても話がまとまらず、ようやくかたちになったら、あまり利用されずに終わってしまうということは、想像しているより良くあることです。
新製品の70-80%が投資分が回収できないという統計もあります。また、その失敗の理由の一番が42%で、市場にニーズがなかったというものです。熱意をもって開発し、仲間と散々議論を交わした製品がそのようになってしまうのは悲しいですが、現実としてよくあることなわけです。
プロジェクトで議論するときにいつも思っていたのが、アイデアを形にするプロセスで、ブレストが単にメンバーのはけ口を形式的 に出す場になっていると感じたり、議論するなかで意見の強い人の話に延々と付き合わされて不毛に感じたり、内向的な方の意見を上手く引き出せないということです。
また、ユーザーファーストと言いつつも、リサーチをしたり、本当の利用者と向き合う時間やプロセスが十分にできていないと感じることもありました。
Googleでは既に多くのプロジェクトで実績があるとも聞いたので、さっそく試してみようということで、日本でデザインスプリントを啓蒙されているMicrosoft Venturesの馬田さんにご協力いただき教えていただきました。
社内の勉強会や実践したプロジェクトで良い点や難しい点など見えてきた部分があるの で、その話も交えて、デザインスプリントについてご紹介したいと思います。
デザインスプリントとは?
デザインスプリントとは、Google Venturesが提案しているスタートアップ向けのプロセスで
す。
Design Thinkingの手法をベースにLean
Startupの考えを発展させています。5日間という時間制限に区切られてアウトプットする手法で、時間でフレーム区切り自らを追い込みます。また、決定のプロセスが効率的且つ民主的に行われるという特徴をもっています。概念や具体的なプロセスも、馬田さんのスライドにまとまっているので、そちらを参考にしてみてください。
ここでは、簡単な5日のプロセスだけ書き出しておきます。
http://www.slideshare.net/takaumada/design-sprint
http://www.slideshare.net/takaumada/design-sprint-process
DAY1: Understand
課題を理解し、競合を調べ、戦略を検討します。
DAY2: Diverge
可能な限りたくさんの解決法を検討します。
DAY3: Decide
ベストなアイデアを選んで、ユーザーストーリーを打ち出します。
DAY4: Prototype
デザインがある程度はいった、プロトタイプをつくります。
DAY5: Validate
プロトタイプを本当の利用者に見せて、何がうまくいき、なにがうまくいかないのかを学びます。
デザインスプリントのプロセスについて
スプリントのプロセスにはいろいろな手法が組み込まれてますが、やり方はスライドにのっているので、ここでは実際にやってみてどうなのかという部分を中心にご紹介していきます。デザインスプリント社内勉強会の様子
DAY1: Understand(理解)
DAY2: Diverge(発散)
- Crazy Eights:UIを作成するときにアイデア出しのための練習。A3の紙を8つに区切って1区切り40秒で画面のアイデアをだしていく
- Silent Critique:各個人で作成したアイデアを張り出して、静かに見て、良いと思ったアイデアに投票していきます。
UIを投票で決めるというと、「えっ、多数決かよ!」と思う人もいると思いますが、議論して多数決をするのとは違います。議論して多数 決をすると、多くの人が最初に発言した人、強い意見の人の発言にながされてしまいます。Silent Critiqueの場合は、声の大きい人の意見だけで話がすすむことは避けられます。個人の意見をしっかりと出した上で、皆が共通で感心のあるアイデアだ けに絞り、議論して、最終の投票を行います。
なぜ、これが良いのかというと、同時にチーム全員のアイデアの引き出し、同時にチーム全員の意思を反映させる ことができるので、非常に効率的な意思決定ができます。また、自分の意見がしっかりと反映されるという安心感がチームにできるとこもメリットです。
DAY3: Decide(決定)
前日まで、手書きのラフばかりだったので、もっと多くの詳細がないと つくれないということに気がつきます。例えば、ラベリングや説明文、画像などをどのようにしようかとなります。場合によっては、実現可能性を再検討する必要もあ るかもしれません。
DAY2のときにそこまで検討できればよいのですが、発散のフェーズではそういう思考になりにくかったりするので、現実的にこの日で収束させるよう頑張るしかないという感じです。スプリントの良い所でもあるのですが、ユーザーテストが開始されてしまうという約束があるので、ここでチーム が立ち止まることが許されません。
また、大事なポイントとして、決定するときにプロジェクトオーナーの関わってもらうということがあります。関わりが薄いと、後で覆ってしまう原因にもなるので、できるだけスプリントを通して、プロジェクトオーナーが関われるようにミーティングに入ってもらった り、必要なポイントでアイデアをぶつけるタイミングをつくる必要があります。
Keynoteをつかってプロトタイプをつくるとなってますが、ここら辺は、Prott や Flinto、invision といったプロトタイピングツールをつかうのが楽です。既存のUIパターンも出回ってるので、そういうものを使って素早く組 み上げます。もし運用しているサイトで既にUIパターンがあれば、それを使って組み上げても良いかもしれません。
最初の段階では、デザインのブラッシュ アップ作業はする必要はなく、試作品として、テストできるレベルでつくります。プロトタイプの形容詞によく"汚く、粗く、素早く"といった単語がでてきますが、荒すぎるとあまり機能しません。例えば、急ぐあまり、読ませるべきテキストが"ダミーダミーダミー"みたいな仮のものになっているとテストにならないので、現実に近いものを入れる必要があります。また、画像も荒く汚すぎると、肝心な部分がみえなかったり、印象が悪すぎてその部分に気を取られてしまうので、ユーザーになにを読み取ってもらうのかを意識してつくりましょう。また、デザインが間にあわない箇所は、画面キャプチャーの組み合わせをつかう時 があります。そういう時に、スプリントの最初のころに行う競合調査や、既存のサイトを確認する段階で、キャプチャー画像を取り貯めて、チームみんなが使え る様にしておくと便利でしょう。
デザインスプリントの良い所、難しい所
多くのプロジェクトでは、構成案をプラン ナーやディレクターが1人で考えたり、デザイナーに丸投げだったりすることが普通だと思うので、そこでやっていた押し付け合いや、その後に発生するエンジ ニアからの突っ込みや、さらにその後に発生するオーナーからの突っ込みなども十分吸収できる手法だと思います。
また、何よりプロジェクトの補正が聞く段階で ユーザーによる検証があるので、そこで正解/不正解が確かめられるというのは、大きな安心でもあります。もちろん、リリースするまで安心など幻想ではあり ますが、リスクが不安になり消極的になる必要もないと思える事はチャレンジを前進させてくれます。
5日でアイデアを形に検証するというのは、非常に素早くデザインができて、要件も速く固まる印象がありますが、実際は繰り返しのスプリントを行わないと良い仕上が りにならないので、そこで誤解がうまれないようにしておかないといけません。
そして、1番の問題は、チームメンバーの拘束時間が結構とられてしまうという部分もあります。チーム全員でタックルするから良いというのはあるものの、継続していくためには、チームメンバーの時間的な部分を配慮する必要があり、そういったところは上手くチームにフィットできるよう上手く調整する必要があります。
まとめ
デザインプロセスにとって面白いアプローチの一つであり、GoogleやBBCのような企業では既に多くのプロジェクトで実践されているということなので、懐疑主義になるより実践して理解を深めることで、チームのアイデアと向き合う方法になるのではないかと思ってチャレンジ しています。
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デザインスプリントの勉強会はMIcrosoft Venturesの馬田さんにご協力いただきました。
ご協力いただいたMicrosoft Ventures馬田様に、デザインスプリントやスタートアップについてご相談があれば、ご連絡いただければより詳しい情報が得られると思います。
ここまでご覧いただきありがとうございました。