ロレックス・サブマリーナ特集

1926年、ロレックスはオイスターケースの実用化に成功する。
世界初の完全防水ケースとして生まれたオイスターケースは、水気や埃に弱く、実用性に乏しかった当時の腕時計への評価を著しく向上させた。更には1931年、オイスターケースの特徴であるねじ込み式リューズの閉め忘れによるトラブルを最小限に食い止める為、毎日手でゼンマイを巻き上げる必要のない画期的な全回転ローターによる自動巻機構を開発して特許を取得、ここにロレックス・オイスター・パーペチュアルが誕生する。その後もロレックスは常に現状に甘んじる事無く、より強靭なオイスターケース、より精度の高いムーブメントを目指し、その性能に磨きをかけていく。

やがてロレックス・オイスターは軍需や海洋学研究の為に水中で仕事をする人々の目にも止まり、プロフェッショナルウォッチへの進化を要請されることになる。水中という特殊な環境における視認性の向上、経過時間の正確な掌握、不意の衝撃等をものともしないタフネス。そして何より優先されるべき、絶対的な信頼性。これに対するロレックスなりの回答が、1953年に発表された、分単位の経過時間を確認する為の回転ベゼルと、ルミナスがたっぷりと入れられたインデックスと針で高い視認性を確保した特殊時計、サブマリーナであった。

非日常的というべき高い防水性能や耐久性が必要とされるダイバーウォッチへの挑戦は、オイスターケースの進化を加速させた。サブマリーナが誕生以来刻んできた歴史は、その後のオイスターケースの歴史そのものとも取ることが出来る。事実、サブマリーナで得た耐高圧技術のノウハウが、他のプロダクトに活かされた例は少なくない。

サブマリーナの歴史を振り返る前に、1950年代の6536と現行モデルの14060Mの新旧サブマリーナを改めて比較してみる。このふたつのモデルの間にある半世紀に及ぶ長い時間の経過の中で、サブマリーナは確かに高い耐久性と精度安定性を得たといえるが、そのコンセプトや根本的なデザインには何ら変更がないことに気付くはずである。

そしてこの「変わらないこと」。これが「変えられなかった」のか、「変える必要性を感じなかった」のかについては私的な想像の範囲を越える事はない。しかしこのサブマリーナのみならず、エクスプローラーデイトジャスト等、主要モデルのデザインの大半が1950年代に出揃っており、しかもそれら全てが時代の流れの中で淘汰されるどころか、ウォッチデザインのスタンダードのひとつとして広く認識されるに至っている。これは紛れもなく、ロレックスというウォッチメゾンのみが成しえた大いなる偉業のひとつであると、私は常々考えている。

今年、ロレックスは更なるサブマリーナシードゥエラーの新型を発表した。1970年代のクオーツクライシス以降、機械式時計に本来の意味での実用性が問われなくなって久しいが、ロレックスは道具としての信頼性を突き詰めることを諦めていない希有なメゾンのひとつであると認識しているだけに、きっと期待を裏切ることはないだろう。

ロレックス
サブマリーナ
Ref.6536
製造年数 1956-1964
ケース径:37mm
防水:100m
キャリバー:Cal.1030

第一世代のRef.6205のムーブメントをCal.1030に積み替えて1950年代半ばに登場した第二世代。Cal.1030は画期的なリバーシングホイールを用いた全回転両方向自動巻となり、巻き上げ効率が飛躍的に向上、精度安定性も高まり、クロノメーターを所得したモデルも存在する。リューズガードがないシンメトリーなケースと6ミリ径のリューズの組み合わせからなる外観は第一世代から大きな変化はないが、そのディテールはまだ試行錯誤の段階であったらしく、多くのバリエーションが存在する。写真のレッドトップベゼルはこの世代の大きな特徴のひとつ。100m防水。

ロレックス
サブマリーナ
Ref.6538
製造年数 1956-1964
ケース径:38mm
防水:200m
キャリバー:
Cal.1030クロノメーター

200m防水仕様の第一世代、Ref.6200のムーブメントをCal.1030に改めて、Ref.6536と同時期に発売されたモデル。Cal.1030は精度安定性が高く、このリファレンスのモデルがサブマリーナで初のクロノメーターの称号を獲得したといわれている。ショーン・コネリー扮するジェームズ・ボンドが使用したサブマリーナについては諸説あるが、このRef.6238の初期のディテール(ノン・クロノメーター、5分刻みのベゼル、大径リューズ)を持ったものが正解という説が有力である。

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ロレックス
サブマリーナ
Ref.5508
製造年数 1958-1965
ケース径:37mm
防水:100m
キャリバー:Cal.1530

1958年頃、Ref.6536はムーブメントを新世代のCal.1530に改められ、Ref.5508となる。外観はRef.6536の末期のものとほぼ変わらず、ディテールについてもこのRef.5508でほぼ落ち着いている。100m防水のサブマリーナとしてはこのRef.5508が最終モデルであり、このRef.5508と同時期に登場した200m防水のRef.5510と共に、リューズガードを持たないサブマリーナの最終世代でもある。基本的にこのRef.5508はノン・クロノメーターである。

ロレックス
サブマリーナ
Ref.5510
製造年数 1958-1960
ケース径:37mm
防水:200m
キャリバー:Cal.1530

Ref.5508の登場と同時期に、Ref.6538のムーブメントもCal.1530に世代交代となり、5510とリファレンスが変更される。Ref.6538に引き続きシンメトリーケースに8ミリ径リューズという魅力的な意匠が引き継がれているが、このRef.5510の発表から僅か1年後(2年程度との説もあり)には同じ200m防水のRef.5512が登場し、このモデルは早々に生産終了となった。その希少性の高さから、高騰が続くビンテージサブマリーナの中でも特別な存在となっている。このモデルも基本的にはノン・クロノメーターである。

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ロレックス
サブマリーナ
Ref.5512
製造年数
1959-1977EarlyTimes
ケース径:40mm
防水:200m
キャリバー:Cal.1530

1950年代後半に発表された、新型ケースを持つサブマリーナ。ケースの変更からリューズガードを備えるようになるが、当初の試行錯誤により数種類のバリエーションが存在する。Ref.5510に引き続きCal.1530を搭載したノンクロノメーターバージョンと、緩急針を廃してフリースプラングテンプを備え、5姿勢での調整を施されたCal.1560を搭載したクロノメーターバージョンが混在する。200m防水。

ロレックス
サブマリーナ
Ref.5512
製造年数
1959-1977Later
ケース径:40mm
防水:200m
キャリバー:
Cal.1530クロノメーター

1960年代初め、それまで全てRef.5512としていたサブマリーナを、そのクロノメーターバージョンはRef.5512、ノンクロノメーターバージョンはRef.5513と改めた。その後間もなくしてRef.5512に搭載されていたクロノメータームーブメント、Cal.1560は19,800振動にアップされる等してCal.1570という、数あるロレックス社製ムーブメントの中でも屈指の名機に進化する。1980年頃まで生産が続けられたが、5512が生産を終了してからはクロノメーター/ノンデイトの後継機は2007年の14060Mのマイナーチェンジ版まで存在しないとされている。

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ロレックス
サブマリーナ
Ref.5513
製造年数 1964-1985
ケース径:40mm
防水:200m
キャリバー:Cal.1520

1960年代初め、それまでRef.5512のノンクロノメーターバージョンとされていたモデルにRef.5513という新しいリファレンス番号が与えられた。Ref.5513はその後、ムーブメントがCal.1530からCal.1520に変更を受ける等、いくらかのマイナーチェンジを経ながら1980年代後半までという長きに渡って生産が続けられ、ロレックスを代表するロングセラーのひとつとなっている。

ロレックス
サブマリーナ
Ref.1680
製造年数 1965-1980
ケース径:40mm
防水:200m
キャリバー:
Cal.1570クロノメーター

1966年頃に登場した、初めてデイト機能を搭載したサブマリーナ。チューブとリューズ合わせて3本もの特殊ポリマー製のパッキンを備える耐高圧リューズ、トリプロッククラウンもこの世代から登場したものである。搭載するムーブメントはCal.1570系というクロノメーターの称号を持つ優秀なもので、その耐久性の高さも相まってビンテージロレックス屈指の名機とされている。デイト機能搭載に伴い、風防がサイクロップレンズ付きのアールの小さなものに変更された。

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ロレックス
サブマリーナ
Ref.1680(Red)
製造年数 1965-1980
ケース径:40mm
防水:200m
キャリバー:
Cal.1570クロノメーター

1970年代の半ば位までに製造された1680を中心に見られる、文字盤上のサブマリーナ表記が赤く染められたモデル。数種類のマイナーバリエーションが存在するが、その全てが非常に高い希少性と人気を誇る。

ロレックス
サブマリーナ
Ref.16800
製造年数 1979-1985
ケース径:40mm
防水:300m
キャリバー:
Cal.3035クロノメーター

1980年代初頭に登場した新世代のサブマリーナデイト。風防にサファイアクリスタルを採用して300m防水を実現し、またムーブメントにハイビートでカレンダーの早送り機能を備えたCal.3035を搭載し、大きく進化を遂げた。1984年頃にはインデックスにメタルの縁取りが取り付けられ、その顔も時代に即したモダンなものへと進化している。ステンレススチールの素材をより高品質なものに変更したRef.168000というマイナーなバリエーションも存在する。

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ロレックス
サブマリーナ
Ref.14060
製造年数 1989-2000
ケース径:40mm
防水:300m
キャリバー:Cal.3000

25年以上に渡って販売されたロングセラー、Ref.5513の後継機として、1988年に登場したノンデイトのサブマリーナ。デイトがないことで完全にフラットとなった透明度の高いサファイアクリスタル風防は、防水性能を300mに引き上げたと同時に、サブマリーナの顔をモダンでシャープな印象に変えた。ムーブメントはハイビートのCal.3000に変更になり、クロノメーターの称号は所得していないものの非常に高い精度安定性を獲得している。

ロレックス
サブマリーナ
Ref.16610
製造年数 1989-2010
ケース径:40mm
防水:300m
キャリバー:
Cal.3135クロノメーター

先代の16800の後期のものと外観上の変化はほとんどないが、搭載されるムーブメントがCal.3135に変更されている。 Cal.3135は28,800振動、デイトクイック搭載と表面上のスペックは変わらないが、テンワに取り付けられた緩急調整に使用されるマイクロステラスクリューをナット型に改めることによりテンワの空気抵抗を軽減、さらにはテン真を受けるブリッジを両持ちにすることでさらなる精度安定性とタフネスの向上を図るというマイナーチェンジを受けている。

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ロレックス
サブマリーナ
Ref.14060M
製造年数 2000-
ケース径:40mm
防水:300m
キャリバー:
Cal.3130クロノメーター

14060のムーブメントをCal.3130に改めて登場したサブマリーナノンデイト。このムーブメントは16610に投入されたCal.3035のノンクロノメーターバージョンといえる。また、風防の6時位置に王冠マークの透かし彫りが入れられるようになったのはこのモデルからといわれている。2007年、このノンデイトもクロノメーター仕様に改められたのは記憶に新しいところである。

ロレックス
サブマリーナ
Ref.16610LV
製造年数 2003-2010
ケース径:40mm
防水:300m
キャリバー:
Cal.3135クロノメーター

2003年に登場した、同社のブランドカラーであるグリーンをベゼルに配したサブマリーナデイト。当初、サブマリーナ生誕50周年記念モデルとして限定販売との噂もあったが、2008年4月現在では市場から消える様子はない。文字盤の夜光インデックスが若干大型になっており、ラグのバネ棒の穴が貫通しないデザインに変更されるなど、次世代のオイスターのディテールが色々と盛り込まれている。