イライラする相手を「黙らす」話し方

横山信弘 | 経営コンサルタント

話をしていてイライラする人がいます。自分と考え方が違ったり、何かを誤解したまま誰かを批判していたり、できない言い訳ばかりして後ろ向きだったり……。いろいろなパターンがあります。話をしていて楽しくないので、何とかその問題を解決したいと多くの人は考えるでしょう。この問題の解決方法は3つあります。

1.反論する

2.無視する

3.黙らす

お互いが協力し合って、何らかの問題を解決したり、目標を達成させる場合は、正しいコミュニケーションをとって話を前に進めなければなりません。ですから「反論」をし、言動を改めてもらう必要があるでしょう。しかし、単なる雑談や、表面的なコミュニケーションをしている場合なら、「無視」も選択肢のひとつです。しかし面と向かって話をしているのに、無視することはなかなかできません。

それに「反論」も「無視」も、相手との関係をぎこちなくさせます。しこりを残すことは間違いないでしょう。それでも問題がない間柄ならばよいです。しかし、関係は維持しつつ、それでいて、いい加減、黙ってもらえないかと模索するときもあるはずです。

そこで、相手にストレスを与えずに「黙ってもらえる方法」を考えてみます。100%誰にでも効果てきめんの手法ではありませんが、試す価値はあると私は考えています。その方法とは、「話の軸を捻じる」やり方です。

「雑談」でさえ、話が噛み合わない人の思考メカニズムで書いたように、雑談でも、必ず話の論点となる「幹」があります。そして「幹」から「枝」が出ており、「枝」から「葉」が出ています。話を正しく噛み合わせるためには、話の論点である「幹」に合わせて話をすることが基本です。たとえば、こうなります。

「私の上司って、すごくバカなんだよね。この前もさ、カラオケで盛り上げようと思ったのか、AKB48とか、嵐の歌を熱唱するのよ。「Love so sweet」とか「WISH」とか嵐のヒット曲メドレーやっちゃって、ヒドイのなんのって、バカ丸出し。どうしてあんなにバカなんだろうって思う。子どもは4人いるらしいんだけど、子どもが可哀想だわ。ていうか、4人の子どもたちもバカなのかな?」

「状況がわからないけど、あなたの上司は若い人と関係を築こうと思って、盛り上げ役を買って出たのかもしれないでしょ。上司のことをバカとか言わないほうがいいんじゃないの?」

「はァ? 状況がわからないんだったら、私の上司のバカさ加減がわかるわけないじゃないの」

「だったら私にそんな話をしないでよ」

「私だって、したくてしたわけじゃないわよ」

「え? 何を言ってんの……」

「とにかく私の上司はバカなのよ。別にあなたに理解してもらいたいなんて思ってないわ。というか、あなたも私の上司と同じぐらいにバカなんじゃない?」

「ああ、もういい加減にしてよ。イライラする……。何を言ってるのかわからないわ」

「それはこっちのセリフよ!」

……と、イライラする相手とこのように「論点」を合わせて話をしようとすると、よけいにイライラする事態になるかもしれません。「話にならない」「聞く耳を持たない」ような相手だから話をしていてもイライラするのです。したがって、正しく反論しようとしても話が噛み合わないことが多く、イライラ感は増幅してしまうことでしょう。ソーシャルメディアなど、ネットを介したコミュニケーションでは、そうなることが多くなります。リアルな相手を知らないため、前提知識が乏しく、発言内容だけに反応して、衝動的にコメントを書く人も多いからです。

さて、前述した「話の軸を捻じる」とはどういうことでしょうか。相手の話の論点……「幹」に合わせるのではなく、「枝」や「葉」に合わせて話を組み立てる努力をする、ということです。さらに、特定のワード(単語)だけをピックアップし、そのワードを中心にセンテンスを回転させると、見事に話の軸を捻じることができます。

「私の上司って、すごくバカなんだよね。この前もさ、カラオケで盛り上げようと思ったのか、AKB48とか、嵐の歌を熱唱するのよ。「Love so sweet」とか「WISH」とか嵐のヒット曲メドレーやっちゃって、ヒドイのなんのって、バカ丸出し。どうしてあんなにバカなんだろうって思う」

「嵐? へえ、あなたの上司って嵐の歌を熱唱するんだ。そういえば嵐って、今年も紅白歌合戦の司会をするんだったよね。今年で何年連続?」

「え……。わかんないけど」

「確か相手の司会者は吉高由里子だったよね?」

「そうかな、そうかも」

「ところで吉高由里子ってどう思う?」

「は?」

「『花子とアン』って観てた?」

「え、観てないけど……」

「『マッサン』は観てる?」

「その時間、私は通勤電車の中だよ」

「ああ、そっかァ。私は保育園に勤めてるからねー。通勤電車とは無縁の毎日だー」

「……」

まともに話に合わせて反論すると、よけいにストレスがかかるし、自分に嘘をついて話を合わせる(つまり、この場合は、「へえ、そんな上司いるの? 本当にバカみたい」と無理に合わせる)のもできない。そういう場合は、このように話の軸を捻じり続け、話を「あさっての方向」へ無理やり飛ばします。話をそらすことで、話し相手の高ぶっている感情も徐々に落ち着いてくるかもしれないからです。

もちろん、

「『花子とアン』とか『マッサン』とか、関係ないでしょ。私は、うちのバカ上司の話をしてんのよ!」

と、相手が元の話に戻そうとするかもしれません。100%うまくいく方法ではないのですが、「話をはやく終わらせたい」「話題を変えたい」と思ったときに試してみるのもいいでしょう。経営コンサルタントである私は、部下の悪口ばかり言う経営者たちに対し、まともに、

「そんなこと言ってるから、部下はあなたの指示に従わないんですよ」

などと反論できないケースもありますので、

「ああ、部下と言えば、うちの部下に双子が誕生しましてね。聞いたときは驚きました。しかも双子ちゃんの名前もまた、よく似ていて……」

などと、話をそらすときがあります。もちろん長い付き合いで、相手の性格をしっかり把握したうえでやらないと火傷をするときがありますが。イライラする相手と話をするときの対処法として、「話の軸を捻じる」やり方を、活用してみてはいかがでしょうか。

横山信弘

経営コンサルタント

現場に入り、目標を絶対達成させるコンサルタント。「絶対達成する部下の育て方」「絶対達成マインドのつくり方」「営業目標を絶対達成する」など、「絶対達成」シリーズの著者。年間100回以上の講演、セミナーをこなす。ロジカルな技術、メソッドを激しく情熱的に伝えるセミナーパフォーマンスが最大の売り。最新刊は「空気でお客様を動かす」。

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