わいせつ行為などで処分を受けた小中高など公立学校の教員が2013年度、205人と過去最多になった。

 文部科学省によると、処分の内容は、強姦(ごうかん)や強制わいせつ、隠し撮り、セクハラなど。

 1990年度の22人が99年度には100人を超え、今回、ついに200人を上回った。社会の目が厳しくなったことも背景にあるだろう。

 わいせつやセクハラはもちろん教員に限らない。だが、文科省の調査だと、処分対象の半分近くが自校の児童生徒だ。

 人を傷つける行為を、教育者が子どもに行う。抵抗できない無力な存在に恐怖を与え、人権を奪う。その卑劣なふるまいは決して許せない。教育に真剣に取り組む教職員全体への信頼も崩れかねない。

 「処分された事例は氷山の一角に過ぎない」と弁護士らは言う。子どもはいやだと感じてもノーと言えない。その悲鳴を埋もれさせてはならない。

 児童生徒と接する同僚の教職員の果たす役割は大きい。なのに実際は機能しない場合も珍しくないという。おかしいと気づいても遠慮して口に出さない。被害者が訴えても「ついていった方が悪い」と責めたり、「証拠がない」と管理職が教育委員会に報告しなかったりする。

 そんな対応も想定し、児童生徒や保護者は、学校や教委への相談に二の足を踏む。

 子どもを第一に考えずに、何が学校か。

 問題を踏まえ、第三者機関の「子どもオンブズパーソン」をつくる自治体が増えている。弁護士や研究者らが相談を受けて助言し、学校や教委に出向いて解決を目指す。参考にしたい。

 カギを握るのは予防策だ。

 生徒との私的なメールを禁じたり、処分で生涯賃金がどのくらい減るかを示す資料をつくったりする教委が多い。

 だが、これらは本質的な解決策とは言えない。大切なのは教員として子どもの立場に立ち、その思いを理解し、自分の指導を不断に見直すことだろう。

 そのための研修は欠かせまい。心に深い傷を負わせた具体例を、被害者の声を通じて学ぶ機会をぜひ増やしてほしい。

 文科省によると、体罰の処分も約4千人と過去最多だった。体罰もわいせつ行為も、子どもの人権侵害で重なる面が多い。

 多くの教員は児童生徒と共に歩もうとしている。だが、教員が指導の名の下に権力をふるえる存在であることもまた事実だ。そのことを意識しながら、子どもに向き合ってほしい。