後藤健二とNHKと外務省の真実 - 「政府関係者」とは誰なのだ

後藤健二のイスラム国潜入がNHKによる依頼だったと暴露する記事が、1/23にネットに上がって話題になった。記事ではNHKと特定されておらず、「“御用メディア”として知られるテレビ局」という表現が使われているが、文脈からこれがNHKを指すことは常識で判断できるところだろう。NHKが後藤健二にイスラム国への潜入取材を依頼していて、同時に、そのミッションに湯川遥菜の救出もしくは安否確認が含まれていた。この事実を証言したのは「政府関係者」である。ネットで今回の事件を追いかけ、真実を追求しようとしている者は、この「政府関係者」なる者が今回の事件のキーパーソンであり、マスコミ報道をリード(情報操作)している影の主役であることに気づいているはずだ。事件が起きた直後、1/21の時点で、この「政府関係者」は、11月初めに後藤健二の家族にイスラム国から身代金要求が届いている事実もマスコミに公表していた。後藤健二のイスラム国潜入とその後の経緯についてマスコミに「説明」しているのは、同じ「政府関係者」である。この「政府関係者」が誰なのか、ネットの中で議論にならないのが私には不思議で、日本人のリテラシーの低さを証明しているように思われる。この「政府関係者」を推定することで、事件の真相は半分は明らかになるだろう。無闇に「陰謀論」の単語を振り回して思考停止するのではなく、ヒントになる小さな事実に食いついて、その切り口から推理を組み立てていかなくてはいけない。

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# by yoniumuhibi | 2015-01-27 23:30 | Trackback | Comments(43)

人質を見殺しにする安倍晋三の不作為 - 「人命第一」の二重思考

政府から事件について厳重な報道管制を受けているマスコミは、2日目の昨日(1/21)、後藤健二を美化する特集でニュースを埋めた。本人がどこかの学校で講演した逸話を持ち上げ、10/25に自身がシリアで撮影した動画を出して、「何が起こっても責任は私自身にあります。どうか日本の皆さんもシリアの人たちに何も責任を負わせないでください」というメッセージを流し続けた。NHKも、テレ朝も、TBSも、判を押したように同じ映像を流し、後藤健二を絶賛するコメントを並べて論調を纏めた。日本のマスコミ報道ではよくあることで、慣例で常態の光景ではあるけれど、この報道が意図的な上からのお仕着せのもので、何度も畳みかけて国民に刷り込み、意味づけを一つにする情報操作であることは誰でも分かる。後藤健二が10/25に録画したビデオメッセージが残っていたのなら、その情報こそ、事件初日の1/20にマスコミが報道するべき素材だったはずだが、一日置いて、編集と演出を入念に一つに固めて、パッケージにして一斉に全放送局で流した。それは後藤健二を聖人に仕立て、英雄に祭り上げる<物語>の前編だ。本人が殺害された後、イスラム国を憎悪する国民感情が爆発するように、次の展開のために仕組んだ戦略的な布石である。昨夜の「特集」は明らかに政府が制作している。われわれは、政府とマスコミの魂胆を見抜く必要がある。情報操作に乗せられて後藤健二を英雄視するのはやめよう。

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# by yoniumuhibi | 2015-01-22 23:30 | Trackback | Comments(29)

後藤健二の疑惑 - マスコミが正確に報道しない湯川遥菜との関係

後藤健二についてマスコミが隠して報道しない事実がある。正確に言えば、後藤健二と湯川遥菜の関係についてだが、マスコミは重要な事実を説明せず、われわれを誤解に導いている。このことは、昨年の記事にも書いたので、Blogの読者は覚えておられるだろう。一般には、後藤健二と湯川遥菜の接点について、昨年の7月末、湯川遥菜がトルコ経由でシリアに二度目の潜入をし、反アサドの自由シリア軍に拘束され、アジトで尋問を受けていたとき、英語が堪能な後藤健二が湯川遥菜を救ってやったのが最初の接触だという理解になっている。後藤健二自らが昨年8月にテレビで証言したとき、湯川遥菜との関係について、詳しくは説明しなかったが、そのときが初対面であるかのような印象で語っていた。自由シリア軍のアジトで最初に偶然に出会ったと、われわれはそんな感じで二人の関係を認識している。マスコミの報道も、そうした演出と論調になっている。しかし、実際にはそうではない。本人のBlogで検証するかぎり、昨年の湯川遥菜の中東渡航には全て後藤健二が同行しているのである。証拠を挙げよう。昨年4月下旬、湯川遥菜はシリアに一回目の潜入をしている。無論、外務省から渡航禁止令が出ている状況でだ。湯川遥菜にとって紛争地入りの初体験だった。帰国後の報告に、「僕が入国して数日後、ジャーナリストの後藤健二さんが入国し、お会した」とある。このときが、Blogで確認できる湯川遥菜と後藤健二との最初の接触である。

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# by yoniumuhibi | 2015-01-21 23:30 | Trackback(1) | Comments(62)

正念場の辺野古 - 共産党に増派の要請を、ケネディに中止の誓願を

あれから1か月経ち、昨年のことになってしまったため、忘れてしまっている人も多いが、衆院選で共産党は「五つの転換」というスローガンを言っていた。例の、脱力を誘う紋切り調のスタイルを全開にさせて、テレビに出る度に「五つの転換」のフレーズを連呼していた。中身は、(1)消費税10%への増税中止、(2)格差拡大の「アベノミクス」ストップ、(3)憲法9条の精神に立った外交戦略、(4)原発再稼働ストップ、(5)沖縄の米軍新基地建設を中止し、基地のない平和な沖縄へ、である。辺野古の新基地建設に対する反対を衆院選の争点の一つに取り上げ、特に大きく訴えていたのが共産党であったこと、あらためて確認するまでもない。(1)から(4)までの政策については、他の野党も若干は唱えていたが、辺野古の問題を主要な柱にして訴えていたのは共産党だけだった。選挙結果を見れば、その戦略が効を奏したということになり、沖縄だけでなく国民全体の中で辺野古への関心が高く、安倍晋三の政治と対決する側において、辺野古の問題が決定的に重要だったという総括を与えることができよう。であるならば、辺野古の基地建設反対を特に訴え、有権者から票を得て21議席を獲得した共産党は、他の党よりもこの課題を達成するべき責任が大きく、有権者から付託された任務を全うすべく第一に動かなくてはいけないはずだ。この立場認識と関係規定が、辺野古と共産党についての正論と言ってよい。

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# by yoniumuhibi | 2015-01-20 23:30 | Trackback | Comments(1)

正念場の辺野古 - 山城博治は不破哲三に人員増派の要請を

辺野古の状況について正確な整理と報告をしているBlogがある。それを読むと、現地は一刻の猶予もならない事態になっていることが分かる。キャンプ・シュワブの敷地内に、すでに埋め立て用の大量の石材が搬入されていて、それが大浦湾に投下されようとしている。大型ダンプトラック5000台以上分の石材で、TBSのNEWS23が上空から映像を撮影し、1/15に放送していた。まず、割栗石と呼ばれる基礎工事用の砕石をクローラークレーンで海中に落とし、海底を平坦にする。その上に、金網に石材を入れた「港湾築堤マット」を敷き詰め、構造的に積み上げて「仮設岸壁」を造成する。「岸壁」は長さ300メートル、幅25メートル。この「岸壁」に工事用の船舶が接岸し、湾一帯を埋め立てていく工事基地になるのだろう。このBlogの報告を見ると、本当に慄然とさせられるし、すぐに止めるべく動かないといけないと焦燥するのだが、Tw等を始めとするネットの言論群は本当にのんびりしていて、絶体絶命の危機にあるという感じがない。どういうことだろう。割栗石投入の工事に着手されたら終わりではないか。まず、何より思うのは、辺野古の現地で反対運動をしている市民の数が少ないことだ。100人、150人しかいない。どうしてこんなに少ないのか。この数で安倍晋三の強行工事を止めるのは無理だ。辺野古の工事は昨年から始まり、衆院選時に中断していたが、年明けから本格的に再開された。去年から、ニュースを見ながら、現地の反対運動の市民が少ないのが気になっていた。

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# by yoniumuhibi | 2015-01-19 23:30 | Trackback | Comments(5)

フランスの中華思想と移民政策の挫折 - 武士道とイスラムの正義

今日(1/14)の朝日の2面記事を見ると、シャルリー・エブドが襲撃後の特別号で掲載するムハンマドの風刺画について、米欧の新聞各社が転載を見送ったことが報じられている。米ニューヨーク・タイムズは、「侮辱と風刺の間には境界がある」という判断を示し、イスラム教徒への配慮を重視する決定をした。朝日も、ニューヨーク・タイムズに倣ったのか、掲載を見送っているという自社の姿勢を説明している。現在のところ、この事件に対する日本国内の認識と反応は、迷いながらも良識的なところに落ち着いている感があり、"JE SUIS CHARLIE"を支持する声は多数派になっていない。テレ朝とTBSの報道が世論をよく説得していることと、多神教を奉じる日本人の精神的特性が反映した結果だろう。国内のマスコミで、"JE SUIS CHARLIE"の立場に同一化し、事件を「ペンへの暴力」として強調し、言論・表現の自由を「普遍的価値」として執拗に礼賛しているのは、見たところNHKの大越健介ぐらいのものだ。管見では、報ステに登場した内藤正典の説明が、この事件への言論として最も当を得たものであり、市民を理解と納得に導いて正論になっているように窺える。複雑な問題を簡潔に整理し、真相をよく射抜いている。イスラムとは何か、ヨーロッパとイスラムとの関係をどう考えるべきか、それを考える上で最も示唆に富む知見が、内藤正典の指摘に集約されている。

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# by yoniumuhibi | 2015-01-14 23:30 | Trackback(1) | Comments(8)

NOUS NE SOMMES PAS CHARLIE - シャルリー・エブドの意味と限界

昨日(1/11)の大規模デモ行進を機に、スローガンが"JE SUIS CHARLIE"から徐々に"NOUS SOMMES CHARLIE"に変わっている。"NOUS SOMMES TOUS CHARLIE"と、tous(all)を付けたプラカードや垂れ幕も増えてきた。40か国以上の首脳が集まったことも影響して、テロリストであるイスラム過激派に対して一切の斟酌を許さないという空気が固まりつつあり、 シャルリー・エブドを絶対的正義とする認識が全体を覆いつつある。NYの911テロの発生後も、こんな感じで世界が急速に一つの束(fascio)に収斂して行った。14年前の事態を思い出すと、不穏な予感を覚えざるを得ず、だから敢えて流れに抵抗する意味で、"NOUS NE SOMMES PAS CHARLIE"と反論を返したい。世界の全員が"CHARLIE"ではない。"JE SUIS CHARLIE"のメッセージに共感できない者も多くいる。その立場から、”NOUS NE SOMMES PAS CHARLIE"と、ノンの意思を言挙げしたい。14年前、ブッシュの奸計と扇動によって、世界中の国と人々が、悪であるテロリストの側につくか、正義である米国の側につくか、旗幟を鮮明にしろと迫られた。そして、日本を含む多くの国々が、米国の陣営に与して「テロとの戦い」に参軍させられた。911テロの事件は、悪(テロリスト)と正義(米国)の戦争というような、そんな単純な図式で整理できるものではなく、そんな乱暴な理解で態度を決めてはいけなかったにもかかわらず。

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# by yoniumuhibi | 2015-01-12 23:30 | Trackback | Comments(7)

JE NE SUIS PAS CHARLIE - 表現の自由は無制限の権利ではない

フランスのテロ事件を日本のテレビがどう報道するか、気になっていたが、昨夜(1/9)のTBSとテレ朝は公平だったので安堵した。特にTBSのNEWS23は秀逸で、この事件を解説するに当たって、ダマスカスから記者が報告し、シリアの現地の人々を取材して感想を伝えるという丁寧な取り組みをしていた。この報道の仕方は、私が最も望んでいたもので、また事件の本質を探る上で欠かせない情報であり、TBSのジャーナリズムの姿勢を評価したい。記者は、イスラム国の野蛮な暴力による被害者は、シリアの無辜の人々なのだという点を強調した。このことも、前回の記事で提起した視点であり、今回の事件の意味を考える上で落とせない重要な事実認識だ。事件を「文明の衝突」のコンテクストで意味づけると、イスラム国が狂暴に殺戮している相手が欧米人だというイメージに導かれてしまう。マスコミ報道では、もっぱら、イスラム国の戦闘員が欧米人を処刑する場面ばかりがクローズアップされ、イスラム国の敵が欧米だという構図で説明されているけれど、実際に、彼らが残虐に殺しまくっているのは、シリアの地で暮らしている民衆であり、流血の犠牲者は貧しいイスラムの弱者なのだ。戦場となったシリアの土地で、市民が中立に暮らすということは難しい。アサド側の兵士になるか、反アサド側に与するか、それぞれの軍が占領した土地の男たちは、銃を手にして戦闘することを強制される。

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# by yoniumuhibi | 2015-01-10 23:30 | Trackback(1) | Comments(10)

文明の衝突の年明け - ヨーロッパとイスラムの矛盾の再生産構造

パリでのテロ事件に抗議するプラカードに、"JE SUIS CHARLIE"と書かれている。片仮名で発音を表記すると、ジュ・スィ・シャルリ。"JE SUIS" は"I AM"。ケネディの1963年の "Ich bin ein Berliner" の演説を想起させる。"Je"の子音の "J" はフランス語独特の音韻で、口をすぼめて舌を丸め、舌の奥から「ジュッ」と発音する。若い頃、ヤクルト・ジョワのCMでテーマ曲を歌った小柳ルミ子が、「喜び」を意味する"Joie"の "J" を正確に発音していた。念のため付言しておくと、YouTubeに上がっている映像は当初のものとは別で、フランス語の正しい発音をやめ、日本語の「ジョア」に変えてしまった普及版であり、残念ながらこの説明の証拠にはならない。今回のテロ事件は、被害の規模はNYの911テロと較べてずっと小さいけれど、フランス国内での衝撃はそれに匹敵するものに違いなく、その意味と影響は計り知れないほど大きい。事件の報道に接しながら、自然に連想と思考が導かれるキーワードは、17年前のハンティントンの「文明の衝突」だ。この事件は、起きるべくして起きた感があり、内部で沸々と滾っていたヨーロッパとイスラムの矛盾が、マグマが噴火するように現象形態化した帰結のように映る。イスラム国に渡った戦闘員が、欧州に還流してテロを惹き起こすのではないかという心配は、昨年からずっと警告されていた。新年早々、忌まわしい出来事が起きた。不吉な2015年の幕開けを告げるように。

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# by yoniumuhibi | 2015-01-09 23:30 | Trackback | Comments(7)

昭和天皇の戦争と安倍晋三の戦争 - 右翼批判をしない脱構築リベラル

日本が中国と戦争を始めたら、全面戦争に発展し、総力戦になり、核戦争になり、最終的には戦争を始めた日本が負ける。そのとき、もし中国の占領下に入る結末になれば、70年前に米国の占領下に入ったときのような幸運に恵まれることはなく、もっと厳しい運命が待ち受けている。司馬遼太郎が予言したように、列島の地べたの上に生きている人々はいても、それは日本人と呼べる存在ではないという未来になると想像する。戦争に勝って日本を占領した中国は、今度ばかりは容赦なく徹底的に、飽きずに二度も中国に戦争を仕掛けた右翼思想の根絶を図ってくるだろうし、それが確実に奏功し、中国の将来にわたる安全が確認されるまでは、用心深く、この国の再独立を認めることはないだろう。一つだけ、私が確信していることは、中国による日本の占領政策を熱狂的に支持し、その過激な推進に協力するのは、今、2ch等で中国共産党打倒を絶叫している右翼たちだということだ。中国に対する戦争を扇動し、安倍晋三の手先となってPRC殲滅に狂奔している連中が、中国に占領された瞬間、真っ先に恭順して中国共産党万歳を喚き、靖国神社を毀壊する工事人足となり、日本の再独立は要らないと言い、東海自治区にしてくれと懇請するだろう。あの映画「少年H」で原田泰造が役を演じた軍事教官のように、仇敵を救世主のように崇めて媚び諂うだろう。日本の滅亡は彼らによって積極的に担われるのだ。

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# by yoniumuhibi | 2015-01-06 23:30 | Trackback(1) | Comments(3)

内田樹の「山河」と司馬遼太郎の「基礎」 - 2015年の年頭に

内田樹の新年の年頭予言にこんなことが書いてあった。「統治システムが瓦解しようと、経済恐慌が来ようと、通貨が暴落しようと、天変地異やパンデミックに襲われようと、『国破れて』も、山河さえ残っていれば、私たちは国を再興することができる。私たちたちがいますべき最優先の仕事は『日本の山河』を守ることである。私が『山河』というときには指しているのは海洋や土壌や大気や森林や河川のような自然環境のことだけではない。日本の言語、学術、宗教、技芸、文学、芸能、商習慣、生活文化、さらに具体的には治安のよさや上下水道や交通や通信の安定的な運転やクラフトマンシップや接客サービスや・・・そういったものも含まれる。日本語の語彙や音韻から、『当たり前のように定時に電車が来る』ことまで含めて、私たち日本人の身体のうちに内面化した文化資源と制度資本の全体を含めて私は『山河』と呼んでいる。外形的なものが崩れ去っても、『山河』さえ残っていれば、国は生き延びることができる」。これを読んで、ずいぶんお気楽な認識と展望だなと率直に感じた。例の、左翼系学生が昨年言ったところの、「日本の民主主義が滅びたら、僕らが一からやり直せばいい」という話への感想と同じだ。内田樹によれば、日本の統治システムは滅びるだろうが、日本人の中に内面化された「文化資源」は滅びることなく、それを土台として再生を果たすことができると言っている。

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# by yoniumuhibi | 2015-01-05 23:30 | Trackback | Comments(3)

大晦日に - 最悪の年だった2014年

今年は最悪の1年だった。ブログ開設10周年の年を静かに送りたかったが、社会の動きは悪い方向に進み、抗おうとする中でその流れに巻き込まれ、苦痛を強いられただけの1年で終わった。最初に起きた忌まわしい事件は、1月31日の岩上安身による突然の誹謗と暴言だ。これには呆気にとられたが、この事件は、今から振り返って考えると、どうやら、後に続く小保方晴子問題の際の誹謗中傷事件とも繋がっている。ブログ活動を10年やってきた成果がこれだ。まったく何をやっていたのかという気分にもなるし、これが今の日本の現実だという諦観にも至る。ファシズムの時代の、卑しく萎びて歪んだ人間心理の表出のようにも見える。それはひたすら醜く吐き気がするものだ。宇都宮健児を担いだ左翼と、その尻馬に乗って宣伝扇動に狂奔した面々は、未だにその過誤を反省する様子がない。この政治行動は決定的な錯誤だった。そのことは、今年後半に実現した沖縄の保革共闘とその勝利が証明している。今、日本の左派にとって唯一の希望が沖縄であり、そのことがネットでも喋々されているけれど、喋々している本人たちが、東京での、中央での保革共闘と STOP THE ABE の政治を潰した元凶であることを彼らは全く自覚していない。菅原文太は死の1か月前に沖縄に立ち、翁長雄志勝利のために檄を飛ばしたのだが、そこから9か月前、雪の降る銀座に立って細川護煕への支持を渾身で訴えていた。 

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# by yoniumuhibi | 2014-12-31 23:30 | Trackback(3) | Comments(6)

小保方晴子事件は来年も続く - 責任を取らされる擁護派の狂人たち

桂勲の調査委は、小保方晴子の「STAP細胞」の捏造について、本来やらなくてはいけない調査をせず、不正の事実解明と責任追及を行わず、逆に小保方晴子を免責する報告でお茶を濁した。実に後味の悪いものだった。「STAP細胞」がES細胞であることをを証明した科学的意義は大きく、誰も反論できない秀逸な結論だったが、肝心の不正疑惑の調査としては失敗で、全く無意味なものだったと言っていい。最初から「免責ありき」が決め打ちされた作業であり、小保方晴子の捏造については調査対象から恣意的に除外され、責任が不問にされ、恰も東電の福島原発事故における「無主物」的な詭弁論法によって、容疑への関心が門前払いされていた。報告を聞いた多くの者は、「STAP」をESと特定した検証内容に満足しながらも、捏造の主犯である小保方晴子を無理やり擁護して隔離する桂勲の態度に憤りを感じたはずで、このようにして「STAP細胞」の疑惑を幕引きしようとする理研に、さらに不信感を強めたに違いない。理研は卑怯だが、そのバックには下村博文と安倍晋三がいる。9月からの「STAP細胞」の再現実験へと流れを敷き、小保方晴子を参加させるよう圧力をかけた張本人は、下村博文とその後ろにいる安倍晋三である。下村博文と安倍晋三がここまで小保方晴子の擁護にムキになるのは、二人が「幸福の科学」の一心同体の同志であることに加えて、もう一つ大きな理由がある。

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# by yoniumuhibi | 2014-12-29 23:30 | Trackback(1) | Comments(15)

桂勲のヘラヘラした詭弁会見 - 小保方晴子への免責と若山照彦への批判

昨日(12/26)、外部の有識者で構成する理研の調査委が「STAP細胞」について報告する会見があり、ネット動画での生中継をずっと見守った。その中味は、NHK毎日日経の記事に出ているとおりで、「STAP細胞」の正体がES細胞であった事実が突き止められ、そのことが科学的に詳しく証明されたものである。「STAP細胞」がES細胞である疑惑は、事件が発覚した2月当初から指摘されていた。6月には遠藤高帆によるゲノム解析の結果が提示され、6/16には小保方ラボの冷凍庫から「ES」とラベルが貼られた容器が箱ごと大量に発見された件がNHKの報道で暴露され、ほぼ間違いない事実となっていたが、今回の調査報告で確定的なものになった。「STAP細胞」なるものは存在せず、「STAP細胞」と呼んでいたものはES細胞だった。遅きに失した調査と結論だが、報告の検証内容は秀逸で、「STAP細胞」とその「実験」がどのようなものであったか、謎だった事象の科学的内実を白日の下に曝している。理研のサイトに報告資料があり、そこにPPTのスライドが載っているが、そのP.7の「理研によるゲノム解析結果」がキーポイントであり、問題の全貌が構造的に解明されて一表の下に総括されている。実に科学的で論理的な分析と証明であり、簡潔で明瞭な表現に唸らされる。科学のレポートはこうでなくてはいけない。これこそが、まさにわれわれが知りたかった終着点であり、「STAP細胞」の科学的真実に他ならない。

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# by yoniumuhibi | 2014-12-27 23:30 | Trackback | Comments(20)

天皇誕生日の会見 - 豪雪地帯の高齢者の雪下ろしへの陛下の言及

新聞に大きく取り上げられるような災害ではありませんが、常々心に掛かっていることとして多雪地帯での雪害による事故死があります。日本全体で昨冬の間に雪で亡くなった人の数が95人に達しています。この数値は広島市の大雨による災害や御嶽山の噴火による災害の死者数を上回っています。私自身高齢になって転びやすくなっていることを感じているものですから、高齢者の屋根の雪下ろしはいつも心配しています。高齢者の屋根の上での作業などに配慮が行き届き、高齢者が雪の多い地域でも安全に住めるような道が開けることを願ってやみません」。天皇誕生日の会見の中にこの一節があり、各局の夜のニュース番組で取り上げられた。報ステの古館伊知郎は、天皇陛下の慈悲深さに感激したコメントを発していたが、NHKは何もコメントを加えなかった。この問題は、テレビを見ながら気になっていた問題だったので、よくぞ一石を投じてくれたと天皇陛下に感謝を言いたい。この発言は、単に天皇個人の心のやさしさとか慈悲深さを表しているという問題ではなく、行政の怠慢や社会の無神経が指摘されている問題なのだ。天皇陛下は、リーダーとして社会と行政に問題提起をしているのである。これでいいのかと。つまり、豪雪地帯に住む高齢者に対する社会の酷薄と行政の無責任を批判しているのだ。このまま放置してはいけないと言い、対策を講じよと言っているのだ。

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# by yoniumuhibi | 2014-12-24 23:30 | Trackback | Comments(2)

竹信三恵子の『ピケティ入門』と若干の問題点 - 不正確なマルクス認識

先々週の週末、選挙の前日(12/13)だが、オフ会の前に時間潰しのため神保町の東京堂本店で本を見ていた。立花隆が新刊本をチェックするとき、必ずこの店の1階フロアを利用することは、以前、Blogで紹介したことがある。私も立花隆と同じ習慣の持ち主で、新刊本は常にこの店で探して買い込んでいた。カバーも気に入っていた。もう遠い昔のことだ。あれから店は2回改装した。小ぎれいな雰囲気に変わったが、私には昔の東京堂本店が懐かしい。特に2階と3階がよかった。知識人(のみ)がアクセスして時間を過ごせる特別な場所。2階と3階に来ると、学生時代の続きの勉強を自然に始めていて、私にとっては図書館そのものだった感がある。東京堂の方が、三省堂よりも古い時代の本を置いてくれていて、すなわち脱構築化=商業化されておらず、その点が私のお気に入りだった。神保町に中華料理屋が多いのは、この辺り一帯が嘗て東京の中華街だった名残りだと言う。内山書店とか東方書店があるのも、その歴史のせいだろうか。留学生だった周恩来も、この近くに住んでいた。新刊コーナーで目に止まったのは、ピケティの「21世紀の資本」とその関連本数冊で、何人かが熱心に立ち読みしていた。日本語版が出たのか、じゃあ買わないとと思って実物を見た瞬間、訳者の名前が目に入ってギョッとした。まさかと思いつつ、みすず書房の真意が分からず、本の購入は中止した。

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# by yoniumuhibi | 2014-12-22 23:30 | Trackback(1) | Comments(7)

若年層の投票行動 - 若者をこのような人間に教育したのは誰なのか

前回、若年層の投票棄権について、それは消極的に安倍晋三を支持した行動なのだと論じた。選挙後、左翼や反安倍の論者の中で、あまりに「勝った勝った」と喚き散らす声が多く、敗北を正直に認めず、低投票率を自民党への不信任票のように曲解する者が多いので、その認識は間違っているということを得票のデータ分析で説明した。この国では若者ほど甚だしく右傾化している。そして、若者ほど体制に順応的な生き方を身につけている。彼らは、安倍晋三や右翼の方向性を支持しているというよりも、多数の意見や全体の意向に逆らわないのだ。異議を唱えないのである。今の政治における多数が何かはマスコミが教えている。異端が何かもテレビとネットを見れば一目瞭然だ。彼らは、生き抜くために、自身が異端の位置に属することを極端に恐れるのであり、自己防衛に過敏になるのであって、場の空気に合わせて、全体が自分に要請する配役や立場を素早く感知して、それを積極的に引き受けるのだ。その習性と態度をしっかり体得していないと、例えば、就職時の会社面接で脱落してしまう。そこで人生が決まる。われわれの頃と違って、面接は個人ではなくグループでやる。チェックされるのは、どれだけ集団での即興の振る舞いで、面接側の期待に応える役割演技ができるかだ。今はその能力を「コミュ力」と呼ぶらしい。若いときに身につける習性と態度とは、その人間の終生の生き方を意味する。

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# by yoniumuhibi | 2014-12-18 23:30 | Trackback | Comments(3)

戦後最低の投票率の真相 - 共産党の躍進の内実と若年層の投票行動

まず、次の二つの数字を見ていただきたい。非常に分かりやすいデータを示すことができる。2年前の衆院選での比例得票数に着目しよう。共産党は369万票、未来の党は342万票である。合計で711万票。今回の衆院選での比例得票数は、共産党が606万票、生活の党が103万票。合計で709万票だ。これほど一目瞭然で、今回の選挙の左側の真実を端的に表す証拠資料はあるまい。一言で結論すれば、今回の共産党の躍進は、小沢一郎の生活の党から離れた票が流れ込んだ結果である。私が繰り返し提起しているところの、ファシズムの政治過程に特徴的な、「異端の集中」の現象に他ならない。この2党に社民党を加えた3党の比例得票数の集計を比較してみよう。2年前は853万票、今回は840万票。全く増えていない。投票率が下がったことを加味すれば、横這いと言えるだろうが、安倍晋三の暴走を止める選挙で、この票の横這いは甚だ悲しい現実であり、無残で冷酷な限界と言っていいのではないか。基本的に、この国で左派リベラルと言えば、共産・社民・生活の政党がそれを代表し、民主の一部を含むという構図で理解される。ネットの中で左派の政治主張を唱えている者は、共産か生活か社民の支持者として分布している。今、反原連系など共産傘下左翼は、さかんにこの選挙の「勝利」を吹聴し、山口二郎なども「自民党は勝利していない」などと虚勢を張っているのだが、あまりに空しい独善の説法であり、客観認識と反省意識を著しく欠いた態度と批判せざるを得ない。

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# by yoniumuhibi | 2014-12-16 23:30 | Trackback(1) | Comments(8)

改憲の政局が始まる - 野党再編、憲法改正、安倍談話の三位一体で

マスコミが予測報道したとおり、自公圧勝の選挙結果となった。そして、52%という異常な低投票率となった。すべてマスコミの事前の予告どおりで、寸分の違いもないと言っていい。マスコミ各社が、自民が300議席に迫る勢いだと報じたのは、公示翌々日の12/4だった。そして、その情勢を知っていたNHKは、公示の夜の7時のニュースで、今回の選挙の争点は「憲法改正」だと急に言い、各党党首にそれについての姿勢を表明させていた。繰り返し書くが、この選挙が始まったとき、改憲が争点だなどと、そんな説明をしていたマスコミは1社もなかったし、有権者も、野党も、そんな意識は微塵もなかった。解散決定(11/18)から公示(12/2)までの2週間、テレビ論戦で「憲法改正」が話題になったことは一度もない。前半戦であるこの2週間、議論はアベノミクスに集中し、集団的自衛権の信任の問題が2番目に添えられる進行だった。振り返って、前半戦では、争点として論じられる内容が公平なものであったことが分かる。つまり、選挙戦の序盤では、自民党が多少とも議席を減らす予想がされていて、その空気が支配的だったため、マスコミの対応も、民意は、アベノミクス批判と集団的自衛権への不信任として出るという想定だったのである。が、公示後の後半はガラリと変わり、NHKを皮切りにして「改憲の是非」を言うようになった。自民党が300議席の勢いだという調査が出て、争点の中味を安倍晋三側に寄せたのだ。

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# by yoniumuhibi | 2014-12-15 23:30 | Trackback(1) | Comments(1)

不破哲三の演説 - 2014年衆院選のハイライト、三つの構成部分

不破哲三の12/10の京都での演説が、朝日の紙面記事に出ていて、マスコミやネットでも話題になっていた。20分ほどの動画が上がっているのを見たら、あまりに素晴らしい演説なので驚いてしまった。いつもの、共産党特有の紋切り型の党略全開ではなく、往年の不破哲三を思い起こさせる、知性の光る説得的な言葉が並べられている。引き込まれて最後まで聴き入った。この衆院選のハイライトだと言える。主役を張った。84歳の高齢者が、まさかこれほど完成度の高い演説ができるとは、私だけでなく多くの者が感銘を覚えたことだろう。志位和夫の演説は年々劣化している。演説だけでなく、テレビ討論に冴えがなく、機知が枯れ、場の議論を主導したり、安倍晋三を論破したりする場面がない。報ステの生討論では、政党助成金の論点の場面で、逆に橋下徹に論破される醜態を演じていた。今回の衆院選のテレビ討論が面白くないのは、もっぱら野党に責任があるのだけれど、その責任の一端は共産党にある。共産党の議論内容は、身内だけへのメッセージと効果に徹していて、広く一般の共鳴を誘う政策トークに設計されていない。志位和夫と山下芳生のテレビ出演での態度は、従来に増してクローズドな主張と口調が際立っていて、見ながら失望と不満を深めさせられた。志位和夫が論戦で得点を稼ぐときというのは、市民の常識が代弁されるときで、マスコミが言わない庶民の正論が周囲を制するときだ。

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# by yoniumuhibi | 2014-12-12 23:30 | Trackback | Comments(5)

民主党と共産党について - 「憲法改正」の政治戦に勝利するために

今、この追い詰められた最終盤の状況を考えれば、共産の票と議席をマキシマムに伸ばそうとする営為は意味がないわけではない。次善の策として合理的な判断と選択だろう。だが、時間を巻き戻して、解散直後の時点に立ち戻って確認すれば、この選挙の意味と目的は、何が何でも自民の議席を大きく減らし、安倍晋三を敗北させるところにあった。安倍晋三の2年間の政治を否定する民意を示し、マスコミの中に反安倍の空気を蘇生させ、来年の政局で安倍晋三を暴走させないよう抑え込むことだった。1年前の秘密保護法、半年前の集団的自衛権、その強行突破に対してNoの審判を突きつけ、これ以上、立憲主義を破壊する独裁と戦争政策を進めさせないよう歯止めをかけることだった。それが市民にとっての今回の選挙の意義であったこと、誰も疑う者はいないだろう。その位置から客観的に考えたとき、われわれは選挙をその方向に持って行くことに失敗したのであり、逆に安倍晋三の思惑どおりに選挙を操縦され、全く逆の民意を突きつけられる始末になってしまった。そのことを、不本意ながら噛みしめなくてはいけない。そして、どうしてこうなったのか、何が原因だったのか、どの時点でどういう手を打つべきだったのか、正しく総括しないといけない。誤った総括を与えるべきではなく、負けたのに勝ったなどと解釈するべきではないのだ。 

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# by yoniumuhibi | 2014-12-10 23:30 | Trackback | Comments(5)

静かな選挙 - 正統の集中と異端の集中、非対称な「自共対決」

投票まで残り5日となった。先週から、マスコミではずっと自民が300議席以上を獲得するという予想報道が続いている。昨日(12/8)の毎日とTBSは、単独で衆院3分の2の317議席までが視野に入ったと報じていた。マスコミ各社が自民圧勝の世論調査を発表したのは、公示翌々日の先週の12/4で、投票の10日前である。前から何度も言っているように、最近の選挙は、解散から公示までの10日間が真剣勝負の期間で、公示前日に行われる記者クラブ主催の党首討論会のときは、すでに勝敗の行方が決まってしまっている。そして、マスコミによる世論調査の精度は年々向上していて、その予測が外れることはなく、マスコミの世論調査どおりの結果となる。今週に入って、ネットの中では選挙の議論が少し活発になってきた。自民300議席超という情勢にショックを受け、反自民の左派系が顔面蒼白となり、投票に行こうとTwで呼びかけている。その動きに水を差すつもりはないが、声を上げて選挙を動かそうとするなら、安倍晋三が解散に出た11/18から1週間に、議論を全力で集中させるべきだった。同じ比喩を繰り返すけれど、衆院選は解散から1週間が柔道の組み手争いのときであり、争点の奪い合いで勝負が決まる。前哨戦で素早く主導権を握った方が勝つ。11/18から12/14まで約1ヶ月の選挙戦、その大事な前半の11月、議論は異常に低調で、関心が低く、不活発な2週間が流れた。

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# by yoniumuhibi | 2014-12-09 23:30 | Trackback | Comments(3)

「山田洋次監督と平和を考える」会の報告 - 三つの映画のエピソード

12/4、大宮のソニックシティで「山田洋次監督と平和を考える」会があった。主催したのは埼玉弁護士会で、入場無料。貧乏人にはありがたい機会なので、電車を乗り継いで聴きに行くことにした。山田洋次の話を聴くのは初めてのこと。テレビで見るのと全く変わらない風貌と語り口だった。山田洋次は83歳。先週、81歳の菅原文太の訃報があり、そのことも講演会に出かける一つの動機となった。これが最後になるかもしれない。菅原文太の話は一度も聞いたことがなかった。こうなってみると、2月の都知事選での、大雪が降る中の銀座の演説などは、路上の聴衆の一人として立ち合っておけばよかったと、そういう残念な気分にかられる。誰もがいつまでも元気で生きているわけではない。あとで後悔しないように、尊敬する知識人の声に直に接した体験を残しておこうと、その気持ちが先に立ったことは間違いない。けれども、そういう動機とは全く釣り合わないほど、山田洋次は元気で、淡々としていて、大ホールの演壇に座って話す姿が、実物というよりスクリーンの絵のようであり、動画というより静止画のようで、ハプニング的要素のない静かな講演だった。思えば、山田洋次も全く年をとらない人で、イメージに時間に伴う異同のない人だ。思想にも揺るぎがない。まさにインテリの理念型の姿を示している。だが、当日は、講演でしか聞けない特別なメッセージを準備していた。

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# by yoniumuhibi | 2014-12-08 23:30 | Trackback(1) | Comments(2)

菅原文太を悼む - ダンディな知識人、確かな知性と重い言葉の英雄

菅原文太が映画やドラマで活躍していた当時は、特に目立って注目する俳優ではなかった。死後、マスコミの報道では、「仁義なき戦い」と「トラック野郎」が主に紹介されるが、それらの作品を映画館で見たことは一度もないし、テレビで見た記憶もない。菅原文太が私の前に颯爽と現れたのは、2012年1月のETV特集『自由民権 東北で始まる』での出演だった。それまで、菅原文太が政治について発言しているという情報には接していたし、亀井静香と昵懇の仲だとか、震災以降は政府への批判を活発にしていたとか聞き及んでいたが、知識人としての菅原文太の中味が、これほどぶ厚いものだとは想像していなかった。NHKの番組を見ながら、その説得力にすっかり圧倒された。NHKのこの企画のシリーズは全12回が放送されたが、前半の明治編が秀逸で、第1回の「福澤諭吉と中江兆民」、第2回の「自由民権 東北で始まる」、第4回の「幸徳秋水と堺利彦」が内容が濃い。その中でも菅原文太が主役を務める第2回は出色の出来で、菅原文太が全国を旅する映像に引き込まれ、座談での言葉の一つ一つに膝を打ち、ずっと感動しながら見入った。菅原文太は文化人ではなく知識人だった。堂々たる知識人であり、何かあれば菅原文太の言葉を聞きたいと思う、そういう貴重な存在だった。その意味で、菅原文太が活躍した時間は短い。わずか3年である。だが、それは尊敬する英雄の3年間だった。

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# by yoniumuhibi | 2014-12-05 23:30 | Trackback(1) | Comments(6)

「憲法改正」を争点にする公示日のNHK報道 - 選挙後への布石か

公示日(12/2)の夜、NHKの7時のニュースを見ていて、番組中に行われた党首討論で何とも不気味に感じさせられた場面があった。司会のNHK政治部の曽我英弘が、ぞろぞろと登場する野党の党首に向かって、「憲法改正にどう対応するか」と念入りに質問をしていたことだ。選挙後に「憲法改正」が必ず問題になるが、それにはどう取り組むのかと、そう執拗に尋ね、各党の党首に返答をさせていた。NHKの報道では、今度の選挙の最大の争点は「アベノミクス」で、「他にも重要な争点がある」という説明を与えていたのだが、注目した実際の党首との議論では、アベノミクスの次に重要視していたのは、何と「憲法改正」の問題だった。「憲法改正」が今度の選挙の争点だなどと、今回、これまで報道したマスコミは1社もない。それを争点として持ち込もうとしているのは、平沼赳夫の次世代だけだ。多くの有権者も、第一の争点がアベノミクスで、第二が集団的自衛権を始めとする安保政策であり、安倍晋三の2年間の政治が審判される選挙だという認識でいる。立候補者や政党関係者たちも同じだろう。ところが、NHKの曽我英弘は、「憲法改正」をアベノミクスに次ぐ二番目の重要問題に設定し、その質疑応答で番組を埋めているのである。これは、NHKが勝手に「憲法改正」を争点にしようと仕掛けた図だ。NHK政治部はそれを作為的にやっているのが察知できたので、これは要警戒だなと思っていたら、深夜のTBSのNEWS23でも同じような場面があった。

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# by yoniumuhibi | 2014-12-03 23:30 | Trackback | Comments(2)

追悼 菅原文太 - 再掲 2012年1月のETV『自由民権 東北で始まる』

NHK-ETVが放送しているシリーズ『日本人は何を考えてきたのか』、偶然に見た1/8の第1回が出色の出来で、中江兆民の思想的意義を浮上させた説得に大いに啓発された。その昂奮のまま、先週はルソーの「人民集会」(peuple assemblé)からOWS(general assembly)を考察する記事を書いた。NHKにもまだ人がいる。第2回の予告では、案内役で菅原文太が登場、東北の自由民権の歴史を旅して歩くという触れ込みだったので、さらに期待していたが、実に期待に違わぬ見事な作品に仕上がっていて満足させられた。菅原文太が素晴らしかった。本格的な知識人の姿だ。仙台一高出身。今の日本に最も必要な言葉を菅原文太が発していて、われわれの心情を率直に代弁している。番組の解説には、色川大吉と樋口陽一という碩学の大物二人が出演、色川大吉の監修の下で取材と編集が行われていることを窺わせ、二人の説明も当を得た過不足ないものだったが、番組に命を吹き込み、感動を与えた主役は菅原文太であり、最初から最後まで菅原文太が視聴者を魅了していた。冒頭、「自由民権のどんなところに惹かれたのでしょうか」と問う三宅民夫に対して、菅原文太がこう答える。「さあーって...」。「何度も何度も、人間は平等だ公平だと言われ続けながら、そうなってないじゃないですか、未だに」。

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# by yoniumuhibi | 2014-12-02 23:30 | Trackback | Comments(4)

民主党と共産党の党利党略と馬耳東風 - 選挙から疎外される有権者

北太平洋を回遊して大きくなったサケが、生まれ故郷の川に戻ってきて産卵のため遡上するとき、河口付近に暫く留まって、海水から淡水への環境変化に体を慣らす期間がある。汽水域と呼ばれるその場所で、体液の塩分濃度を調節するべく、1週間ほど静かに滞在するのだと言う。眼前の選挙の風景を見ていると、平和の時代からファシズムと戦争の時代に適応するべく、この国の人々が自らを順応させているように見える。この異様な静けさは、サケの大群の汽水域での自己改造を意味しているのではないか。厳しい時代を生き抜くべく、静かに覚悟を整えているような、そんな大衆の呼吸を感じる。本当に、この時期の衆院選がこれほど静寂であっていいのかと思うほど、選挙が盛り上がらず、人々の関心が低い。経済の問題にせよ、安保の問題にせよ、安倍晋三の選挙干渉にせよ、何も刺激として反応することがなく、そこに積極的な関心が向かない。心が政治に対して閉ざされている。議論が起きず、論争が起きず、ハプニングが起きない。おそらく、このままだと、投票率は戦後最低を更新するだろう。そのことは、安倍晋三の目論見どおりに選挙が進行することを意味する。抜き打ち解散で野党に準備の猶予を与えず、テレビに圧力をかけて無風を演出し、論戦も何もないまま時間を埋め、低投票率に持ち込んで自公安泰の結果を確定する。大衆の方は、そうした独裁者の思惑を察知しつつ、静かに息を潜めている。

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# by yoniumuhibi | 2014-12-01 23:30 | Trackback(1) | Comments(4)

関心の低い選挙 - 投票率を高め安倍晋三に勝つにはどうすべきか

投票まで2週間を切ったが、選挙戦が全く盛り上がっていない。無理もないというか、党首討論を含めた各党の論戦がさっぱり面白くないのだ。無味乾燥でしらけさせられる。討論会を見ることは、視聴者にとってまさに強制と忍耐の時間そのもので、退屈で苦痛であり、徒労感と脱力感だけを覚えさせられる。耐えられない。こういう討論会を提供して、選挙に興味を持てという方が無理であって、効果としては逆であり、見れば見るほど興醒めして関心を失う。どうでもいいやという気分になる。どの党首も、自党の選挙公約をただ読み上げている。ディベートの工夫がない。昨夜(11/29)、ネットの党首討論があり、ネットの方は新しい趣向で面白い演出をして視聴者の関心を高め、テレビとの差別化を試みるかと期待して見たが、NHKの日曜討論の進行と全く同じであり、バカらしくて途中でサイトを閉じた。野党の党首や幹部たちにまるで緊張感がない。反安倍で共闘する態勢になっておらず、各党がバラバラの主張を言っている。次世代は安倍晋三との近さをアピールし、アベノミクスにも賛成で、他野党との間に一線を引く立場を強調している。維新は、自民とも民主とも違うと言い、新自由主義の構造改革の本気度をセールスポイントにして独自色を訴えている。野党の数が無闇に多すぎる。維新も、次世代も、基本的に安倍晋三と同じ路線であるため、討論会が安倍批判のモメンタムが上がる機会にならない。

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# by yoniumuhibi | 2014-11-30 23:30 | Trackback | Comments(6)

安倍晋三による露骨な選挙干渉 - それを不当な圧力と抗議しないマスコミ

解散決定から10日が過ぎ、投票まで残り2週間、選挙戦は後半戦に入った。議席の減少を最小限に食い止めようと、安倍晋三がなりふり構わぬ選挙干渉を行っている。最初に小言めいた提案で恐縮だが、Twで安倍晋三を叩いている者たちは、できれば選挙干渉という言葉を140字の中に使って欲しい。これは単なるマスコミへの圧力ではなく、政権による反対党への明確な選挙妨害の行為だ。選挙干渉という語は、主に歴史に登場する言葉で、現代の日常社会では接する機会のない政治用語である。明治期、民党(野党)に負けそうになった吏党(与党)が大がかりな選挙干渉をやった。第2回の帝国議会選挙では死者25人を出し、この語を日本史の教科書に残している。品川弥二郎という安倍晋三と同郷の人物の名前は、この不名誉な事件と共に一般に記憶されることとなった。選挙干渉という語に接したのは、私の場合は高校の日本史の授業が初めてだったが、歴史ではもう一つ、ドイツのナチスの例が有名である。ナチスが選挙で勝った要因を調べると、選挙干渉の暴力と弾圧が大きく奏効している真相に行き当たる。決して平和的な選挙での結果ではなかった。われわれが考えなくてはいけないのは、今回の安倍晋三の事件が、選挙干渉として歴史に記される第三の事例になるかもしれないということではないか。ナチスの方法に倣うというのは、安倍晋三たちの神聖なモットーであり、改憲の手口のみならず、在日への迫害扇動をはじめ、何から何まで類似している事実がある。

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# by yoniumuhibi | 2014-11-28 23:30 | Trackback | Comments(6)

文化人が主導する反安倍統一戦線を - 民主と共産は"割り切り"の関係で

1年前、銀杏並木がきれいに色づいた国会の外の路上で、毎日毎夜、大勢の人々が集まって秘密保護法反対の声を上げた。可決された12/6の夜まで、日を追ってデモの参加者数は膨らみ、寒空の下、国会の正面と裏の歩道で抗議運動が盛り上がっていた。「秘密保護法絶対反対、廃案、廃案、廃案、廃案」と、熱のこもったリズミカルなシュプレヒコールが波打ち、国会の中まで響かせようと懸命に声を上げていた。「廃案、廃案、廃案、廃案」。声は内側までよく轟いたようで、右翼の高市早苗をして邪魔だから規制すべきと言わしめ、また、石破茂をして取締対象のテロ行為だと失言させるほど、彼ら推進派議員を煩わせたが、採決は強行され法案は可決してしまった。国会を取り巻いたわれわれは、目の前の建物の中での出来事を想像し、明かりの漏れる暗い大きな巨艦のような建築物を睨みながら、ただ歯噛みして立ち尽くすしかなかった。廃案にできなかった。なぜ廃案にすることができなかったかというと、銀杏並木の向こうの敷地に送りこんだ議員の数が足りなかったからである。世論は反対が2倍の差で多数だったが、反対議員の数が少数だったため、この悪法の成立を許してしまった。11/21に衆院が解散されると、衆院議員はゼロになる。12/14の投票で新しい475人が決まる。もし、475人の過半数を特定秘密保護法に反対の議員へと選び直すことができれば、1年前に叫んだ「廃案」の要求を実現することができるのだ。

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# by yoniumuhibi | 2014-11-20 23:30 | Trackback(1) | Comments(12)
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