会社でセロハンテープをテープ台からビーッと引っ張ったら芯の厚紙まで引っ付いてきた。これは終わりのお知らせだ、新しい物に取り替えようと席を立った時、先日試供品でもらったセロハンテープがあることを思い出した。
特にテープにこだわりはないので、試供品のセロハンテープを台にセットしてみた。そしてピーッと引っ張ってみるとピロロロローといつもの倍くらいの長さがあるテープが出てきた。そんなに欲しくなかったのにピロロロローと出てきてしまったのだ。どうやらこの試供品のテープは以前に使っていた物よりテープが薄いため同じ力で引っ張ると勢い余ってピロロロローになってしまうようだ。
うわぁ、力加減がわからない。優しく引っ張ったつもりでもピロロロぐらい出てきてしまう。これはもっと優しく優しく扱わなければ。そろりそろりとゆっくり引いてみたらちょうど良い長さのテープが出てきた。腫れ物を触るようで非常に面倒くさい。けれどそうは言っても試供品だしすぐなくなるだろうからこの1本だけは使い切ろうと思った。
何回か使っているうちに力加減もわかり、仲良く付き合えるようになってきた。最初は加減がわからなくてピロロロローと私が引っ張り過ぎてしまったけれど、もうそんなことはない。私とあなたは探り探りしながら良い関係が保てるようになった。煩わしくなんてないのだ。
だが、そんなあなたにも終わりが近づいて来ていることに私は薄々気がついていた。ゆっくり引っ張った時にあなたはクルッと回転するのだけれど、日に日に少しずつ痩せていくのだ。
そしてその時がやってきた。ピーッとあなたを引っ張ったら最後なんです、私、を知らせる厚紙がそろそろと引っ付いて出てきたのだ。
私とあなたの関係はもう終わりです。私はまた違うパートナーを見つけます。
用の無くなったあなたをゴミ箱へぽいっと捨て、私は違うセロテープを台にセットした。そしてあなたに接していた時と同じようにゆっくりと引いてみると硬くて重くてピロぐらいしか出てきてくれなかった。きっとこの子はあなたと出会う前に仲良くしていた子と同じタイプなのだろうと思った。
私はあなたに慣れすぎた。
私はあなたに優しくし過ぎた。
加減がわからない。どれぐらいの力で引っ張れば良いのかわからない。また一から関係を築いていかねばならない。面倒だ。この感情はあなたに出会った時と同じだ。
でもきっとまたすぐに慣れるのだ。私とあなたが少しずつ仲良くなったように。
きっとまたすぐに慣れてしまうのだ。
慣れることは悪いことではないけれど、後先を考えなければまた同じコトの繰り返しだ。
色んなタイプがあることも忘れてはいけない。
それを頭の片隅にちょこんと置いてからまたゆっくり慣れていこう。
私とあなたが良い関係になれることを願いながら。