巴里の日本食 La Cuisine japonaise à Paris
【第1回】 2015年1月30日 加藤亨延 [ジャーナリスト]

日本料理の未来を示唆するパリの和食事情

日本料理は、もはや日本人のものではない。パリの街を歩いていると、至るところで日本料理屋(Restaurant japonais)に出くわす。パリから郊外に出ても、日本料理屋は当然のようにそこにある。ブームじゃない。すでに日本料理はパリっ子にとって定番の選択肢だ。

すでにフランス食化している日本料理

 欧州の中でも日本への関心が高いフランス。首都パリでの日本料理の様子を見ていると、世界での日本料理の今後が見えてくる。この国で日本食は、どこへ向かおうとしているのか。

 海外で日本料理屋の暖簾をくぐった際に、そのメニュー内容に違和感を覚えた人は多いはずだ。すしの隣に焼鳥があり、隣にはうどんが並ぶ……海外の多くの日本料理屋では、一つの店にすべての和食のジャンルが混在することが多い。フランスも同様で、「Sushi」と書かれた看板を出している店が焼鳥を扱うし、うどん屋がすしを握る。典型的な和食メニューを、一通り扱っているのだ。 

 フランスでの人気メニューは、すしを筆頭に、焼鳥、てんぷら、うどん、ラーメン、ギョーザ、どんぶり、枝豆……。にぎりは、主にサーモンかマグロと相場が決まり、そこに巻きずしが加わる。ちなみに巻きずしはフランス語で「Maki」と呼ばれる。ギョーザ(Gyoza)、どんぶり(Donburi)なども、すでにフランス語だ。

 その中で、とりわけフランス人の味覚を虜にするのが、砂糖としょうゆが組み合わさった、甘辛い味である。特に鰻の蒲焼にかけるタレは、とても評判がいい。ごはんにしょうゆという組み合わせが好きな人も多く、以前フランス人のお宅へお邪魔したら、日本人が来るということで、ご飯にしょうゆをかけただけ、というご馳走を出されたこともあった。こういう状況から、ご飯にかける専用の、甘辛いしょうゆまで売り出されている。 

ご飯にかける専用しょうゆ(写真中央)は、どこのスーパーマーケットでも手に入る

 

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加藤亨延 Kato Yukinobu

[ジャーナリスト]

1980年、愛知県生まれ。ロンドンの大学院にて公共政策学修士を修めた後、東京で雑誌、ガイドブック制作に携わる。世界各地で取材を重ねていくうちに、より現地の視点で発信したいと感じ、ロンドン時代から興味があったフランスへ。2009年からパリを拠点に、フランスを中心とした欧州事情を日本の雑誌などへ寄稿する。主なフィールドは日本・フランス・英国の比較文化・社会問題。


巴里の日本食 La Cuisine japonaise à Paris

 日本料理は、もはや日本人のものではない。パリの街を歩いていると、至るところで日本料理屋(Restaurant japonais)に出くわす。パリから郊外に出ても、日本料理屋は当然のようにそこにある。ブームじゃない。すでに日本料理はパリっ子にとって定番の選択肢だ。 

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