日本人人質:首相「支援重要だった」「演説」危険性問われ

毎日新聞 2015年02月03日 21時22分(最終更新 02月04日 00時38分)

参院予算委で小池晃・共産党副委員長の質問に答える安倍晋三首相=国会内で2015年2月3日午前11時32分、藤井太郎撮影
参院予算委で小池晃・共産党副委員長の質問に答える安倍晋三首相=国会内で2015年2月3日午前11時32分、藤井太郎撮影

 イスラム過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)による日本人人質事件について、安倍晋三首相は3日、先の中東歴訪中に表明した2億ドル(約234億円)の支援がIS側を刺激したとの指摘に対し「テロリストに過度な気配りをする必要は全くない」と述べた。同日の参院予算委員会で人質への危険性の認識をただされ、「支援表明は極めて重要だ」と反論した。

 ◇9条改正に含みも

 安倍首相は中東歴訪中の1月17日、エジプトで「ISと戦う周辺各国に2億ドル程度の支援を約束する」と演説した。この時点で日本政府は湯川遥菜さん(42)、後藤健二さん(47)の拘束を把握していた。共産党の小池晃氏は「演説には『非軍事の人道支援』との表現がない。2人に身の危険が及ぶとの認識がなかったのか」と質問した。

 これに対し安倍首相は「(テロリストを)いたずらに刺激すべきではない」と述べた上で「テロリストの意図に反しないように、と世界が思ってしまうと、テロが横行する。過激主義の動きを止めなければならない」と強調。「ヨルダンをはじめとして多くの避難民を受け入れている国々を決して孤立させてはならない」と述べ、人道支援を続ける考えを強調した。

 さらに次世代の党の和田政宗氏が人質事件に絡み、武力を行使して日本人を救出するための憲法9条改正を求めた。安倍首相は「(武力行使ではなく)警察権の行使として、受け入れ国の了承があり『国に準ずる組織』がいない中で可能にするための法改正を準備している」と述べ、救出のための武器使用基準を緩和する考えを示した。その上で、2012年の自民党の憲法改正草案の9条改正案に触れ「国民の生命と財産を守る任務を全うするためだ」と述べ、将来的な9条改正の必要性に含みを持たせた。

 また安倍首相は人質事件を受け、防衛省から海外の大使館などに派遣する防衛駐在官について「各国の軍、防衛当局から軍同士の関係でしか得られない情報を入手することができる。邦人保護に必要な情報収集態勢を強化する上でも有効だ」と述べ、増員に意欲を示した。政府は10人が死亡した13年のアルジェリア人質事件を受け、アフリカへの防衛駐在官を増やしており、今後、中東地域へも増員を検討する。公明党の横山信一氏への答弁。【福岡静哉、水脇友輔】

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