「ATR阻害薬」、がんの不死身の秘密に迫る新薬、がん治療の新しいターゲット
「テロメラーゼ非依存性テロメア維持(ALT)経路」を狙う

写真はイメージ。本文と直接の関係はありません。(写真:Mk2010/クリエイティブ・コモンズ表示-継承 3.0 非移植一部改変)

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 がん細胞は「不死身」になったかのようにいつまでも増え続けられるために問題になる。

 このたびこの不死身の状態を作り出す仕組みの一つをターゲットにがん細胞を選択的に殺せる方法が明らかになった。

 「ATR阻害薬」と呼ぶ新しい薬だ。

 米国ハーバード大学医学部を中心とする研究グループは、その結果をサイエンス誌オンライン版で、2015年1月16日に報告した。

「テロメア」を維持するがん

 テロメアとは、「染色体末端部」を指している。染色体とは、人間であれば30億の塩基がつながったDNAの鎖がまとまったもの。遺伝情報を持っている。染色体の末端のテロメアでは、DNAの塩基の並びが繰り返し配列になっており、さまざまなタンパク質と組み合わさっている。

 細胞が分裂を繰り返すたびにテロメアが短くなり、一定以下の長さになると細胞は分裂できなくなる。

 がん細胞ではこの制限を乗り越えて細胞が増殖してしまう。

 がん細胞でテロメアの長さを維持するこの機構を「テロメラーゼ非依存性テロメア維持(ALT)経路」と言っている。

がん細胞を選択的に殺す

 今回、ALT経路に不可欠な酵素である「タンパク質キナーゼATR」と呼ばれる分子を邪魔して、ALT経路のおかげで増え続けるがん細胞を、選択的に殺すことができると分かった。

 この薬は、ALT経路の恩恵を受けるがんの治療に有力な手段として期待される。

 

文献情報

Flynn RL et al.Alternative lengthening of telomeres renders cancer cells hypersensitive to ATR inhibitors.Science. 2015;347:273-7.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25593184

 

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