がん細胞は「不死身」になったかのようにいつまでも増え続けられるために問題になる。
このたびこの不死身の状態を作り出す仕組みの一つをターゲットにがん細胞を選択的に殺せる方法が明らかになった。
「ATR阻害薬」と呼ぶ新しい薬だ。
米国ハーバード大学医学部を中心とする研究グループは、その結果をサイエンス誌オンライン版で、2015年1月16日に報告した。
「テロメア」を維持するがん
テロメアとは、「染色体末端部」を指している。染色体とは、人間であれば30億の塩基がつながったDNAの鎖がまとまったもの。遺伝情報を持っている。染色体の末端のテロメアでは、DNAの塩基の並びが繰り返し配列になっており、さまざまなタンパク質と組み合わさっている。
細胞が分裂を繰り返すたびにテロメアが短くなり、一定以下の長さになると細胞は分裂できなくなる。
がん細胞ではこの制限を乗り越えて細胞が増殖してしまう。
がん細胞でテロメアの長さを維持するこの機構を「テロメラーゼ非依存性テロメア維持(ALT)経路」と言っている。
がん細胞を選択的に殺す
今回、ALT経路に不可欠な酵素である「タンパク質キナーゼATR」と呼ばれる分子を邪魔して、ALT経路のおかげで増え続けるがん細胞を、選択的に殺すことができると分かった。
この薬は、ALT経路の恩恵を受けるがんの治療に有力な手段として期待される。
文献情報
Flynn RL et al.Alternative lengthening of telomeres renders cancer cells hypersensitive to ATR inhibitors.Science. 2015;347:273-7.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25593184
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