ネコの世界移動の歴史解明へ 京大グループが手法
約1万年前に中東で家畜化されたイエネコの移動の歴史がウイルス感染の痕跡から推測できることを、京都大ウイルス研究所の宮沢孝幸准教授や医学研究科大学院生の下出紗弓さんらのグループが突き止めた。英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」で2日発表した。
■ウィルス感染痕跡、品種の分岐を裏付け
イエネコは穀物を食い荒らすネズミを捕獲するために家畜化された。船や馬車などに乗せられ、欧州やアジアの各地に広がり、品種が枝分かれしたと考えられるが、詳細な移動の歴史は不明だった。
グループは、感染する際に宿主のゲノム(全遺伝情報)に自らの遺伝子を組み込むレトロウイルスに着目した。レトロウイルスの遺伝子は、まれに生殖細胞に残ることで子孫に伝わるため、世界中のイエネコ約150匹でゲノムを調べた。
その結果、約30%にレトロウイルスの遺伝子の痕跡があった。欧州系のヨーロピアンショートヘアや北米系のアメリカンカール、アジア系のシンガプーラなど品種ごとに保有率やゲノムにある痕跡の位置が異なり、移動の歴史や各品種への枝分かれの裏付けに使えることが分かった。
例えば、1620年に英国から米国に渡ったメイフラワー号に同乗したヨーロピアンショートヘアとそのネコから作られたとの説があるアメリカンショートヘア。どちらにもゲノムの同じ位置に痕跡が見つかり、説の正しさが証明された。
宮沢准教授は「今回の手法でイエネコの品種の関係性が分かれば、病気のかかりやすさや性格など品種の特性の解明も期待できる」と話している。
【 2015年02月02日 22時55分 】