(2015年2月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
欧州連合(EU)が大きな試練を迎えている〔AFPBB News〕
欧州を苦しめている危機は3つある。そのうちの2つは欧州連合(EU)の境界の近く、すなわち好戦的なロシアと、内側から崩れつつある中東で生じている。残りの1つは政治、経済、外交の緊張が高まっているEU内部で生じている。
この1カ月、3つの危機はいずれも激しさを増している。パリで起こったテロリストによる襲撃事件は、中東での暴力や宗教的緊張の影響が欧州にも及ぶかもしれないとの不安を高めた。
ロシアの支援を受けている分離主義者は、ウクライナで攻撃を再開している。そして、ギリシャの総選挙での急進左派連合(SYRIZA)の勝利は、ユーロ危機勃発後では初めて、EU域内で急進的な左派政党が国政選挙に勝利したことを意味する。
互いに増幅し合う3つの危機
ロシアの問題と中東の問題、そしてユーロ圏の問題は、それぞれ大きく異なる要因から発生しているものの、悪化するにつれてお互いを助長し始めている。
EU加盟国の大半は景気が悪く、左派と右派の両方でポピュリスト政党が台頭しやすくなっている。そして、ポピュリストがエネルギー源とする人々の不安感は、中東の紛争の影響――テロの発生や不法移民の大量流入など――によってさらに強められている。
ギリシャやイタリアといった国々では、中東からの(あるいは中東経由の)移民の流入によって社会の危機だという雰囲気が強まっており、移民問題が緊縮財政に負けないほどの論争を引き起こすようになっている。
一方、ロシアによるウクライナへの軍事介入は、EUの外交政策にとって冷戦以来最大の試練となっている。対応を誤れば、この一件は軍事紛争に発展しかねない。EUはドイツの主導によってなんとか団結し、まずまず厳しい内容のロシア制裁パッケージを打ち出した。
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