大学でフロントエンドエンジニアは評価されない


大学の課題で milkcocoa を使って、マウスカーソル共有協力プレイ Web サイトを制作しました。
Endless Doors

そして、そこで発表したプレゼン資料がこちらになります。


その授業でちょっと思うことがあったので、書いていこうと思います。

まず、その講義について。
基本的にその講義は HTML をほとんど書いたことがない人が半数以上受講します。
WWW とは何かの解説から始まり、Unix コマンドについて、HTML について、そして PHP, MySQL と続いていきます。CSS, JavaScript に軽く触れたりするものの、授業の大半が PHP, MySQL となっていて、Web がサーバーサイドとデータベースで成り立っているということを認識させる授業です。

ところで私は生粋のフロントエンドエンジニアです。デザイナーでもなければ、バックエンドもやっとここ最近少し触る程度の人間です。
主に HTML5 で標準化されている新しい API を使って如何にしてアプリやライブラリなどを実装するか考える日々です。Canvas や Web Audio API などの新しいものに触れつつ、何か Web で新しい表現が出来ないかを模索しています。

そんな自分が、講義の最終自由課題を創ろうと取りかかりはじめた時、「折角だから Web にはこんな世界があるということを、学生たちに知らしめるようなものを創りたい」と思い、PHP, MySQL を全く使わず、Node.js と milkcocoa を使うことにしました。本来ならデータを入力してもらい、それを格納し、活用するみたいな趣旨の講義ですが、周囲の学生たちも HTML で手一杯でサーバーサイドをあまり触れそうにないような状況だったので、自分もそれに乗っかって自分の創りたいものを創っちゃえと考えました。

「Canvas を使って、そしてサーバーサイドに比重をおいている講義なので Node.js を使っておけば大丈夫だろう。milkcocoa とか Web 初心者でも簡単に使えるサービスがあるから、これを学生のみんなに教えてあげよう。そしてあわよくばフロントエンド仲間を増やそう」と企んでいました。
フロントエンドエンジニアは少ないのです。有名企業の”フロントエンド”のインターンシップに行って、その全体の2/3が主にバックエンドを触る人たちだったということがあるくらい少ないです。フロントエンド専門の人はなかなかおらず、両方触っている人はやっぱりバックエンドの方に注力している。そんな感じです。

そして本日、その最終自由課題の発表会がありました。

撃沈しました。

「どう評価すればいいかわからないものを作りやがって」
まあこれは別にいいです。趣旨に沿わなかった自分が悪いです。

ただ、その後に先生から次のようなことを言われました。
「折角 Web についての技術があるんだから、ちゃんとしたサービスを作ればいいのに勿体無い」

衝撃でした。
私が今までやってきたことが否定されたような気がしました。

改めて言いますが、私はフロントエンドエンジニアです。デザイナーでもないです。
Web デザインももっと出来たほうがいいというのはわかっていますが、やっぱり興味が有るのは JavaScript を使って「あっ」と言わせるサイトを作ることです。たまに映画やアニメなどの広告サイトにあるちょっとしたお遊びが大好きです。Mac Pro のサイトなんてまさしくそれです。そこにサービス性なんてないでしょう。

芸術家の思考です。今までの Web の概念を覆すような表現を創りたいのです。
Web サイトを見た人の心を揺さぶるようなものが創りたいのです。そんなきっと世にも珍しい人間です。
近年、HTML5 化が進むにあたって、Web のネイティブアプリ化が進んでおり、それに意味はあるのかと言われているように思いますが、自分としては大賛成です。Web のように手軽に誰でも訪れる空間にネイティブアプリのような表現力を与えるというのは、自分にとっては最高の出来事です。

話を戻します。つまりはこういうことです。
「サービスがない Web サイトは、サービスのある Web サイトに劣る」ということを言われたように感じました。

それは……そうかもしれません。
自分の今やってることは高々広告ぐらいにしかならず、ちょっとした芸術作品止まりです(別に芸術作品自体を貶めているわけではありません)。
そこに金銭は発生しにくいですし、フロントエンドだけではあまり仕事になりません。
研究対象にもなり得ません。要するにフロントエンド専門の教授なんて存在するはずもなく、それを専攻に教える学校なんてありません。

大学から就活して企業に入って、やっと重宝される存在です。
フロントエンドエンジニアの仕事は結構大きいので、デザインもできつつフロントエンドも完璧に出来る人なんて稀でしょう。フロントエンドは、JavaScript の効果的な書き方の他にも色々なツールをつかって色々な方面から Web サイトをよくしていく仕事です。

あるときは画像を圧縮したり、結合して HTTP リクエストを減らしたりして、ロード時間を減らすよう努力するでしょう。
あるときは Emscripten を使って C/C++ のコードを JavaScript に変換する必要があるでしょう。
あるときは ArrayBuffer API を使って、バイナリの中身を調べる必要がでてくるでしょう。
極端な例ですが、そんな仕事です。

とある Web サービスを創りたいという案件があった場合、フロントエンドエンジニアがいなければきっと実現しません。そんな時代に来ていると思っています。
最近ではフルスタックエンジニアなんて言われていますが、そんなの全員が出来るわけがないですし、フロントエンドは技術の進歩が著しい分野です。如何に時流に取り残されずに、新しいものに食いつくかが大事な業界です。それにしがみつつ、他のこともやるのは難しいです。

長々と書きましたが、結論はタイトルと同じです。
“大学ではフロントエンドエンジニアは評価されない”

今の自分の立ち位置がわかったように感じました。

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