映画の中の世界

世界に衝撃を与えた南極トッテン氷河の溶解縮小する氷河が語る地球の現在・過去・未来

2015.02.03(火)  竹野 敏貴

世界最大規模の南極トッテン氷河が、海水温の上昇で、溶解が進んでいるとするオーストラリア研究チームの調査結果が、1月末、発表となった。

驚くほどのスピードで縮小している氷河

氷河の青は魅力的だ

 こうした報道は、いまや目新しくもないかもしれない。科学者は絶え間なく研究を続けているし、誰しも少なからず環境問題を話題にしていることだろう。しかし、あまりにも社会は危機感に乏しく思える。

 そんな人々の関心を引くため、写真の力で訴えかけようとしたのが、写真家ジェームズ・バローグ。

 自身、もとは懐疑論者だったということが、より説得力を高めるその行動の記録『Chasing Ice』(2012)(ナショナルジオグラフィックチャンネル放映時題名「氷河消失の記録」)には、驚くほどのスピードで縮小していく氷河の姿が映し出される。

 訪れるだけでも大変なアラスカ、カナダ、グリーンランド、アイスランドなどの氷河近くに、低速度撮影カメラを設置した熱意には頭が下がる。そして、その努力の結晶たる、数十分おきに3年間ほど撮影した写真は、氷河消失の現実を我々にたたきつけるのである。

 雪が降り、積もり、おし固められ、年月を経て、氷河は形成される。一見、不動にも思えるが、溶けた水が表面に湖や川を作り出し、穴深く流れ込み、氷の下を流れ、氷河は動く。運ばれてきた岩の破片を「やすり」にし、大地を削りながら、なかには数千年もの年月を経て、最後、崩落(カービング(Calving))する。

 アラスカ、ブリティッシュコロンビア、パタゴニアなどには、カービングの様子が見られる観光名所もあるから、その迫力あるシーンを実際目にしたことがある方も少なくないだろう。

 温室効果ガスの大気への影響は、いまや誰もが知るとこ…
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