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金も払わずに良質な小説を読もうなどという不埒ものどもに与ふる、クソのごときもの……食いさらせ 作者:渡辺 厚

もう戦争しかない

 どうすれば、日本が元気になるかというと、戦争を始めるのが最も手っ取り早いのではないかと思います。
 相手はもう、どこでもいいです。やりたくてしょうがないんです。
 領土問題など戦争の口実はいくらでもあります。
 今なんで領土問題をいじるの、そもそも領土問題って何のことかわかんねーし、という御仁も多いかとお見受けいたします。
 であるなら、初手として陰謀を企てましょう。

 政府の要人、あるいは皇族のだれかを暗殺し、その罪を無実の在日朝鮮人に擦り付けます。JFK方式です。日本の公安とか防衛のどこかの部署ならお手ものモノでしょう。嫌韓感情が一気に燃え上がること請け合いです。

 しかるにまず韓国、そして中国、振り向けばロシアとか適当な相手にどんどん宣戦布告をしていきましょう。3正面作戦どんと来い、であります。

 学徒動員ではなくて、ニート動員制度をいち早く導入したらいかがでしょうか。 無為徒食のバカモノどもを最前線に放り込みます。

 ニートなどという輩は生への執着だけは一丁前なので、いざ戦闘となると、ゲームでやってきたこととリアルの落差に怖気図いて敵前逃亡を企てる者が続出すると考えられます。
 そんな場合に備えて、本物の自衛隊の皆さんには後方に陣取っていただいて、敵前逃亡のやからを待ち構えて機関銃一斉射撃でハチの巣にする役割を担っていただきます。脱走兵は絶対に許さん。見つけ次第、バラします。軍法会議は受け付けておりません。

 イクも逃げるも地獄とあらば、さのニート連中も火事場の馬鹿力で、敵陣めがけて突撃貫徹となりましょう。

 戦場はどこになるべしや。どこでもいいな、シベリアのツンドラでも、秋葉原の電気屋街でも。

 ニート兵士には戦闘ちゅう、コスプレの自由を認めることとします。
 シャアになるもよし、沖田艦長になるもよし、アカレンジャーになるもよし。

 斉藤アツシは、第二旅団に入隊させられた。ニート歴25年、ことし40になる。ドラフト姓では40歳以下のニート男女は徴兵させられる。あと1年歳をとっていたらセーフだったが、運がなかった。

 旅団長は元お笑い芸人の有吉ヒロイキだった。今年50だそうだ。すっかりテレビで見なくなったと思ったら、軍隊にスカウトされて4500人を束ねる役割を務めている。

 入隊式にあたって有吉が、壇上に立ち訓示を行った。

「諸君、いま日本は天下分け目の関ヶ原以来の歴史の癲癇店に差し掛かっておる。諸君らニートはこれまで亡国の元凶として蔑まれてきた。だが、いま…

 有吉は50になったとは思えない童顔で、しかもテレビ全盛時代のにやけ面が全く当時の面影のままだ。兵士に檄を飛ばすような面構えではない。ほとんどのニート兵士はスマホをいじったり、連れとだべったりして、訓示が終わるのを待っている。

 斉藤は、だまって立って、感覚を遮断して、有吉の向こうに広がる青空を眺めるともなく、見ていた。

 そのとき銃声が会場をつんざいた。

 
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