訃報:ワイツゼッカー統一ドイツ初代大統領=94歳
毎日新聞 2015年01月31日 20時54分(最終更新 02月01日 12時50分)
どの国も戦争や暴力に罪深い間違いを犯した歴史から自由になれない。罪は少数の者に主導されたが、ドイツ人一人一人はユダヤ人の苦難に共感できたはずだ。良心を曲げ、現実を見ず、沈黙していた。全国民が有罪か無罪かということではない。罪は集団的ではなく個人的なものだ。
ドイツ人だから罪を着せられるわけではないが、先人は重い遺産を残した。私たち全員が過去に対する責任を負わされている。それは過去を乗り越えることではないし、過去は変えられない。過去に目を閉ざす者は、現在も見えなくなる。非人間的な行いを記憶しない者は、また(非人間的な考えに)汚染される恐れがある。和解は記憶なしではあり得ないことを理解すべきだ。
若者は当時のことに責任はない。だが歴史から生み出されるものに責任はある。私たちは過去の人間よりましなのではなく、常に危険にさらされている。だが私たちはそれを乗り越える力がある。若者に呼びかける。憎しみや敵意に陥らず、共生することを学び、自由を尊び、平和のために努力しよう。