ワイツゼッカーさん:元独大統領 日中関係説くその先に…
毎日新聞 2015年01月31日 21時51分(最終更新 02月01日 00時54分)
元大統領の執務室には、哲学者カントのミニチュア像が置いてあった。「記者は何でも聞いて、何でも読みなさい」。孫ほどの年齢の私にそう諭し、カント像を指さして「特にカントは読んでほしい。私はこれをナカソネ(中曽根康弘元首相)にも贈ったことがある。最近は政治家も記者もカントを読まないのが気になる」と寂しげにつぶやいた。
「過去」を説いた元大統領がインタビュー中、頻繁に言及したのは「未来」だった。「日本が米国と中国の橋渡し役をし、米中が環境対策に取り組むことで地球を守るんだ」。何度も水を飲み、91歳の老政治家は鬼気迫る雰囲気でそう語り続けた。
最初は大げさに思えた「地球の未来」との表現が、取材終盤に現実感を伴ってきた。それこそが、世界に感銘を与えた政治家の確固とした言葉の力だった。