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後藤健二さん殺害か イスラム国が映像投稿

2015年2月1日10時49分 印刷
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1日早朝にイスラム国が投稿したとみられる映像。映像は、「日本政府へのメッセージ」という一文から始まり、後藤さんとみられる男性と、ナイフを持ったイスラム国の戦闘員とみられる黒づくめの男が映っている。

イスラム教過激派組織「イスラム国」が1日早朝、拘束中の後藤健二さんを殺害したとする映像をインターネット上に投稿した。

映像は、「日本政府へのメッセージ」という一文から始まり、後藤さんとみられる男性と、ナイフを持ったイスラム国の戦闘員とみられる黒づくめの男が映っている。男は英語で、日本政府はイスラム国の力を理解しなかったと話し、安倍晋三首相に対し「勝ち目のない戦争に参加するというお前の無謀な決断のために、このナイフが、ケンジ(後藤さん)を虐殺するだけでなく、お前の国民がどこにいても、虐殺を起こしていく。日本にとっての悪夢が始まる」などと述べた(関連記事:イスラム国のメッセージ全文)。

その後、男は後藤さんの首にナイフを突きつけ、映像は暗転、男性の遺体が映し出された。映像の左上にはイスラム国のロゴが付いているが、日本政府は映像の信ぴょう性を急いで確認していると伝えられている。

「許しがたい暴挙」 首相、官房長官が非難

菅義偉官房長官は同日朝、臨時会見を開き、「先ほど後藤健二氏が殺害されたとみられる動画がインターネット上で配信されました。このような非道かつ卑劣極まりないテロ行為が再び行われたことに、一層激しい憤りを禁じ得ません。あらためて断固として非難します」と述べ、関係閣僚に情報収集などの対応を指示したことを明らかにした。

安倍晋三首相も同日朝、声明を発表。「湯川遥菜(はるな)さんに続いて、後藤健二さんが殺害されたと見られる動画が公開されました。御親族の御心痛を思えば、言葉もありません。政府として、全力を挙げて対応してまいりました。誠に無念、痛恨の極みであります」と述べ、テロ行為を「許しがたい暴挙」と非難。今後もテロに屈せず、中東への人道支援は継続して行い、テロと闘う国際社会と協力していくと述べた。

後藤さん母「動転して言葉選べない」 兄「非常に残念」

後藤さんの母親である石堂順子さんは、「今は動転して言葉選べない。息子の優しさと勇気を分かってほしい」(共同通信)とコメント。

後藤さんの兄である後藤純一さんはNHKの取材に応じ、「兄としては、健二に無事に帰ってきて、皆さんに感謝を述べてもらいたいと思っていただけに非常に残念です。健二のこれまでの仕事については誇りに思いますが、兄としては今回のことは軽率な行動だったと思います」と話し、「イスラム国は弟の命やいろいろな人の命を奪いながら、自分たちの力を誇示し、勢力を拡大していて、反社会的で許されないと思います」と、イスラム国を非難した。

オバマ米大統領、緊急声明 支援FB「健二さんは生き続けます、みんなの心の中に」

米国のバラク・オバマ大統領は緊急の声明を発表。「米国は、テロ組織『イスラム国』による、日本の国民でありジャーナリストの後藤健二氏のこの非道な殺害を非難する。後藤氏は、その報道により、勇敢にシリア国民の苦境を世界に伝えようとしてきた。われわれの思いは、後藤氏の家族、また後藤氏の愛する人々とあり、われわれは、安倍首相と日本国民と共にきょう連帯して立ち、この野蛮な行為を非難する」などとコメントした。

一方、後藤さんの解放を求めてきたフェイスブックのコミュニティー「I AM KENJI」は、フェイスブック上で、「まだ信じられない思いです。今まで感じたことのない深い絶望とやり場のない憤りを感じています。このようなことは絶対に許されてはなりません」とコメントを発表。「何万もの方々から健二さんへの連帯の気持ちと祈りが寄せられ、我々も国境を超えたその広がりに、健二さんの大きさ、成し遂げてきたことの素晴らしさを日々感じています。彼は戦争の最中にも人の心に寄り添う優しさと、弱き者を助ける強さを持ち続けていました。憎しみを超えて人と人が分かり合えることを信じていました」と述べた。

また、「健二さんは生き続けます。みんなの心のなかに。日々営む仕事のなかに。人と微笑みあうたびに必ず健二さんのあの大きな Big Smile を思い出すでしょう」とつづった。

戦地の一般人、子どもたちの苦しみ伝え続けたジャーナリスト

後藤さんは、昨年10月末にシリアに入り、イスラム国の支配地域に入ったとみられるが、その後連絡が途絶えていた。昨年8月からイスラム国に拘束されていたとみられていた湯川さんとは、同4月にシリアで知り合い、その後イラクへも同行していた。周囲には、シリアに向かう前、湯川さんを助けに行くとする趣旨を話していたと伝えられている。

1997年に洗礼を受けた日本基督教団田園調布教会の会員で、昨年5月の本紙とのインタビューでは、「もし、取材先で命を落とすようなことがあったとき、誰にも看取られないで死ぬのは寂しいかなとも思いました。天国で父なる主イエス様が迎えてくださるのであれば、寂しくないかな・・・なんて、少々後ろ向きな考えで受洗を決意したのは事実です」などと話していた。

取材地域は、紛争地や戦闘が行われている危険地域が多かったが、紛争により悲惨な状況に追い込まれた一般人、特に子どもたちの姿を伝えてきた。後藤さんと親交のあった英エコノミスト誌元東京支局長のヘンリー・トリックス氏は、東洋経済に寄せた緊急寄稿の中で、「戦争の勝者や敗者を追いかけるのではなく、悲惨な状況に追い込まれた普通の人々、とりわけ子どもたちの姿を伝えること」に力を注いでいたと述べている。

先のインタビューの中でも、後藤さんは「困難の中にある人たちの暮らしと心に寄り添いたいと思うのです。彼らには伝えたいメッセージが必ずあります。それを世界に向けてその様子を発信することで、何か解決策が見つかるかもしれない。そうすれば、私の仕事は『成功』ということになるのでは」と話していた。

トリックス氏は寄稿の中で、後藤さんについて「日本の企業ジャーナリストたちから広く尊敬されている」と、ジャーナリストとしてのプロフェッショナルな面を語る一方、「温厚で穏やかな語り口の後藤氏と、筋金入りの戦争ジャーナリストのイメージを重ね合わせるのは難しい」と、その温和な人柄についても触れ、後藤さんが出演したNHKの『週刊こどもニュース』のキャスターであった池上彰氏が「やさしい男であり、伝えることに義務感を持っている人間だと感じた」と語っていたと伝えている。

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