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【政治】

自衛隊の活用 首相が意欲 現実味薄く、自民も慎重

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 過激派組織「イスラム国」とみられるグループによる日本人人質事件を受け、安倍晋三首相が、今後海外で邦人が事件などに巻き込まれた場合に備え、自衛隊に救出の任務を与えるべきだと主張している。従来は憲法上の制約から禁じられていた任務だが、安倍政権が昨年、解釈改憲をした閣議決定で可能にした。安全保障法制整備をめぐる与党協議や国会審議の論点に浮上する可能性もあるが、現実味が乏しいとの指摘もある。 (生島章弘)

 首相は一月二十九日の衆院予算委員会で「自衛隊の持てる能力を生かし、対応できるようにすることは国の責任だ」と強調。邦人救出を可能にする法整備に意欲を示した。

 火災現場に取り残された人を助け出す消防士を引き合いに「自衛官も危険を顧みず、任務を全うするために全力を尽くす。リスクを恐れて何もしないのは決して良いとは考えない」とも述べた。

 海外で邦人が事件や災害に遭った場合、自衛隊ができる活動は輸送に限られてきた。救出は憲法が禁じる他国での武力行使に当たる恐れがあるとして認められなかった。

 しかし、安倍政権は昨年七月の閣議決定で「相手国の同意」などがあれば、救出活動も可能だと示した。五月の大型連休明けに提出される安保法制の関連法案にも盛り込む方針で、近く始まる与党協議で議論される。

 ただ、「イスラム国」のような勢力が「国に準じる組織」とみなされれば、人質救出のための武器使用は違憲となる恐れが強い。憲法九条が禁じる「国際紛争を解決する手段」としての武力の行使になりかねないためだ。

 自衛隊の能力にも限界があり、防衛省幹部は「米国ですら人質奪還作戦に失敗しており、日本にできるはずがない」と否定的だ。

 自民党にも慎重論が強い。谷垣禎一幹事長は三十日の記者会見で、首相の主張について「日本ではあまり議論されていない領域だ。議論が十分に熟している状況ではない」と指摘。「日本は(邦人救出の)独自の手だてを持っていないのも事実だ」と述べるにとどめた。

 民主党の岡田克也代表は記者会見で「この機に乗じて『必要だ』と訴えている感じを受ける。もう少し冷静に議論したらどうか」と首相を批判した。

 

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