欧州中銀:初の量的緩和 3月から国債など月8兆円購入

毎日新聞 2015年01月22日 23時09分(最終更新 01月23日 06時03分)

日米ユーロ圏の消費者物価上昇率の推移(前年同月比)
日米ユーロ圏の消費者物価上昇率の推移(前年同月比)

 ◇デフレ懸念払拭狙う 定例理事会「2016年9月末まで」

 【フランクフルト坂井隆之】欧州単一通貨ユーロを使う19カ国の金融政策を決める欧州中央銀行(ECB)は22日、定例理事会を開き、ユーロ加盟国の国債などを購入し、お金を大量に金融市場に供給する「量的緩和政策」の導入を決めた。ユーロ圏は物価が下落し続けるデフレの懸念が強まっており、量的緩和はこれを払拭(ふっしょく)する狙い。量的緩和の導入は1998年の欧州中銀創設以来初めて。日銀や米連邦準備制度理事会(FRB)に続いて異例の金融政策に踏み込む(FRBは昨年10月に終了)ことになる。

 ユーロ加盟国が発行し、域内の銀行が保有している国債など月600億ユーロ(約8兆円)の金融資産を今年3月から来年9月末まで買い取る。財政危機に陥り、ユーロ圏などの金融支援を受けているギリシャとキプロスも含む全加盟国の国債を購入対象とする。欧州中銀への各国の出資比率に応じて、国債を購入する。

 国債購入は賛成多数で決まった。「財政赤字の拡大を助長する」などと批判してきたドイツ出身のメンバーらが反対したとみられる。政策金利は過去最低の年0.05%で据え置いた。

 ユーロ圏の昨年12月の消費者物価は前年同月比0.2%下落し、リーマン・ショック後の2009年10月以来のマイナスだった。欧州中銀は2%弱の上昇を目標としているが、原油安で下落が続く可能性が高い。

 10〜12年ごろに深刻化した欧州債務危機の後遺症が重く、ギリシャやイタリアなど南欧諸国を中心に景気が低迷し、物価が上がりにくい状況に陥っている。14年の域内総生産(GDP)成長率は0.8%にとどまったとみられている。

 欧州中銀は、お金の大量供給で、銀行が企業や個人に融資するお金の金利が低下し、投資や消費を後押しして、景気が上向き、物価も上昇すると期待している。

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