アフリカのマラリアを媒介する蚊の中で、異種と子を作って殺虫剤への抵抗性を生み出すという新しい進化の形が見つかった。
マラリアを半減させた「ネット」
米カリフォルニア大学デービス校のローラ・ノリス氏らの研究グループが、有力科学誌である米国科学アカデミー紀要で2015年1月5日に報告したものだ。
動物は環境の変化に適応していくが、遺伝子の突然変異を伴うもので時間を要する。殺虫剤など人間が作った環境変化に対しても適応できると考えられている。
マラリアは世界でも有数の感染症として知られている(グーグルマップで「エボラ危険度」も?マラリアからまず実現目指すhttp://www.mededge.jp/a/cold/2474)。世界保健機関(WHO)の統計によると、2013年でも、世界で約60万人がマラリア感染によって亡くなっている。
ただし、最近、この感染症予防に就寝中の蚊帳が大きな効果を上げている。殺虫剤が塗りつけてあるもので、世界保健機関の統計では2000年から2013年までの間にほぼ半減していると判明している。
今回の報告は、アフリカのマリの調査の結果、この殺虫剤ネットへの抵抗性のある蚊が出ているというものだ。
雑種が強くなる?
研究グループは、マラリアの感染で最も一般的な蚊の一つで、ハマダラカの仲間である「アノフェレス・ガンビエ」について、殺虫剤への抵抗性を持つ現象を検証した。
アノフェレス・ガンビエが、「アノフェレス・コルッツィ」と異種ながら交雑して子どもを生み出していると分かった。結果として、殺虫剤への抵抗性を新たに見つけていた。
この2種類は元々同種と考えられていたが、実際は異種と見られた。
この交配は殺虫剤抵抗性遺伝子に直接の関係はないと見られており、交配によって「進化」したと考えられた。
研究グループは「殺虫剤への抵抗性を付けるために急速に進化する従来ない仕組み」と説明をしている。
動物では「雑種強勢」と異種間が子どもを作ると子どもが強くなる現象が知られる。同様な生存戦略なのかもしれあい。
蚊は日本でも大きな問題となっている。他人事ではない。
文献情報
Norris LC et al. Adaptive introgression in an African malaria mosquito coincident with the increased usage of insecticide-treated bed nets. Proc Natl Acad Sci U S A. 2015 Jan 5.[Epub ahead of print]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25561525
Hybrid ‘super mosquito’ resistant to insecticide-treated bed nets.
http://blogs.ucdavis.edu/egghead/2015/01/09/
Scale-up in effective malaria control dramatically reduces deaths.
http://www.who.int/mediacentre/news/releases/2014/malaria-control/en/
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