第57話 迷宮の終わり
朝目を覚ますと、桃色の景色が目の前に広がっていた。
アメリアが朝日を浴びながら着替えをしていた。
残念ながら下着は脱がないようだが、光に透けてその輪郭は見える。
クロエの方が少しだけ胸が大きいだろうか。
アメリアはまだ、ひもで縛る短パンのような下着を身につけていた。
クロエはひもで縛るビキニタイプの奴を使うようになっている。
そのすばらしい眺めに心を奪われていると、目の前で丸くなっていたリリーと目が合った。
生まれてこの方、俺はこれ以上の感情を顔に表したことがあっただろうか。
頼むから静かにしていてくださいと伝えた。
そしたらリリーはまた静かに目を閉じた。
アメリアは肌が薄いからか、肌の下の血管までよく見える。
着替えが終わりそうだったので、俺は目を閉じて寝たふりをした。
着替えの終わったアメリアに起こされた体で身体を起こした俺は、リリーをひと撫でしてから立ち上がった。
顔を洗ったり歯を磨いたり、適当に過ごしてから朝ご飯を食べる。
そして鎧を着込んで、迷宮へとゲートを開いた。
夕方には帰ってきて、夕食までは自由に過ごし、そのあとは部屋でだらだらしてから眠る。
そんな生活を3週間ほど送った。
そしてついに、地下25階へと挑戦することになる。
すでに敵は俺とクロエが二人で相手をしなければならないほど強くなっている。
25階についてすぐ、今までに見たことのない敵の反応があった。
21階からは珍しくない人型の魔物である。
俺がその特徴を伝えると、クロエがレッサーデーモンだと言った。
文字通り、悪魔が迷宮内の魔力で実体化したものだ。
悪魔の何分の一かくらいの力は持っているので侮れない相手だそうだ。
現れてすぐ、俺とクロエは土を巻き上げながら走り出した。
足を踏み込むたびに、足の下で岩が砕け散る。
クロエの方が先に、敵に向かって斬りかかった。
クロエが攻撃に出る前に、その剣をレッサーデモンの尻尾が弾いた。
それでクロエは斬りかかる力を反らされ、レッサーデーモンの後ろで砂煙を巻き起こす。
次に俺が全力のクラウソナスを乗せて、腰の刀を抜き放った。
近くに居るだけで耳鳴りがするほどの魔力を手に宿して、レッサーデーモンは俺の刀を受け止める。
しかし受け止めきれずに、その腕が肘まで蒸発した。
俺は後ろに飛んで距離をとった。
これは殴られでもしたら即死なんじゃないかと冷や汗が頬を伝う。
アメリアのキネスボールが襲いかかるが、それは尻尾によって受け止められる。
しかし、その隙を逃さずにクロエが後ろから斬りかかった。
アーリマンブレードが発動した剣を、敵は残った左腕で受け止めている。
そこにクラウソナスに乗せたレイスファングが。敵の胴体を3筋に斬り裂いた。
最近では距離が開いても、この攻撃方法がある。
灰になったレッサーデーモンが残したのは銀塊とクリスタルのようなものだった。
俺はそれを拾い上げると、二人に言った。
「もう気は済んだから、さっさと帰ろう。こんなところにいたら命がいくつあっても足りないよ」
「それがいい」
クロエまでが俺の意見に賛成する。
クラウソナスとアーリマンブレードを一回ずつ受け止めるほどの魔力を持った相手だ。
とてもじゃないが、何回も相手をしていれば命を落とす。
それに一度の戦いで三分の一くらいのマナを使ってしまった。
とてもではないが戦い続けることなど出来ない。
それに学習能力があるので、俺たちの戦い方を見せ続けるのは危険すぎる。
すでに地下22階からは階段もなくなって、ここまで来た人が居るのかもわからない。
俺はすぐに地下23階へとワープゲートを開いた。
狩りを継続的にするなら、ここらが限度だ。
どうしても一度戦ってみたいと、俺が無理を言って連れてきただけだった。
「おっかないな。悪魔ってのはあんなに強いのか」
「今地上にいる限りでは、あのくらいの強さが限度だろう。だから心配することはない」
「ドラゴンは?」
「ドラゴンなど20階にいた門番と同じくらいの強さよ」
「そんなもんなのか」
「そうは言っても、ドラゴンは攻撃と守備のバランスがいい。並の冒険者なら五十人は集めないと確実には倒せん。そんなものが地上にはわんさか居るのだぞ」
俺たちは地下23階で適当に敵を倒して、昼過ぎにはマナを使い尽くして家に帰った。
全力が出せる分だけ魔力の消費が大きく、そんなに長くは居られない。
だけど、その分だけ自由な時間も増えるので悪いことではない。
「そろそろ雪も溶けそうね」
夕食の準備をしながらアメリアがそんなことを言った。
クロエは洗濯に出ている。
俺は夕食の準備をしているアメリアに後ろから抱きついた。
一週間ほど前に、ようやっとアメリアも決心を固めてくれてことをすませたのだ。
だから最近ではこんなことも出来る。
「きゃあ。もう、そんなことしたら駄目じゃない。昼間からなんて見境がなさ過ぎるわ」
「えー、そうかなあ」
「そうよ。どうしてそんなことばかりするの」
「私、カエデになら何をされても平気なの。愛してる」
「……リィリィー?」
一週間くらい前の夜のことを真似した猫に、アメリアが本気で血相を変えた。
余裕ぶっこいて日向ぼっこをしていた猫は、それを見て飛び上がる。
掴みかかろうとするアメリアをかわして、リリーは家の外に逃げていった。
「そんなに怒らなくてもいいじゃない。それに何をされても平気だって言ってたのは本当だよ」
「限度があります」
昼間に抱きついたくらいで超えてしまうとは、ずいぶん低い限度だ。
「どうしてだめなのさ」
「だって、し、下着が汚れちゃうでしょ……」
その天使のような見た目からは想像も出来ないようなことをアメリアは言った。
その言葉に俺の方が照れてしまう。
俺は明るい所でまだ見たことのないアメリアの裸が見たくてしょうがなくなった。
ベッドの上まで連れて行って、その上着のボタンに手を掛ける。
アメリアは今、背中をボタンで止める簡単な上着しか着ていなかった。
「えっ、ちょっと、えっ? えっ?」
俺は簡単に背中のボタンを外し終えた。
そのまま、それを脱がせてしまう。
そして現れた下着に手を掛ける。
「ねえ、おねがい。ちょっとまって」
とてもじゃないけど我慢できる状態じゃなかった俺は、そのまま下着をずらしてしまった。
そしたら凄く綺麗な二つの膨らみが現れた。
やばい、これは本当に鼻血が出るかも知れない。
「何をしておる。今日は妾の番の日ではないか。そのようなものはさっさと仕舞うがよい」
「きゃあ!」
「それにしても貧相なものよ。妾の方が大きいではないか」
「そ、そんなことないわ。大した違いはないわよ」
二人をそのままにしておくとまたケンカを始めそうだったので、俺はアメリアに服を着せて台所に戻した。
そしてクロエが持ってきた洗濯物を一緒に畳み始める。
魔法で短時間のうちに乾かした服は痛みが激しい。
特にクロエはかなり高温で乾かしたらしく、まだ洗濯物が熱かった。
自分の服は、畳みながらボールを呼び出してしまった。
最近ではクロエも自分の異空間を持つようになっている。
それを覗き込んだら、いつの間にそんなに増えたんだというほど、クロエは大量に服を持っていた。
そう言えば、最近はワンピースの色が毎日変わっている。
「しばらく服は買う必要がなさそうだな」
「もうちょっと欲しいところだ」
とんでもないことを言う。
これでクロエに服を買ったら、アメリアも張り合って欲しいと言い出すのだ。
だから俺はそんな話に水を向けるようなことはしない。
「そろそろギルドにも金が戻るだろう。出たものを売ったならお金も出来るに違いない。楽しみだな」
「そのお金で家とか装備とか買う予定なんだ」
「そうか。それもいいだろう」
「クロエはどんな家に住みたいんだ」
俺は話が変な方に向かないように軌道修正する。
どう考えたって色違いのワンピースをそれほど買う必要はない。
「いつかの宿のように、白い石で作られたものがいいな。煉瓦は土臭いし、木は安普請で落ち着かん。その点、あの石造りの宿はとてもよかった」
「多分、この世界で家を作る材質としては最高級の部類だぜ。そんなもの買えるようになるのかな」
「冒険者というのは儲かる家業なのだろう? それで無理ならその腕を生かして、城で勤め口を探せばよかろう」
「そういや、お前は知らないんだな。ちょっと貴族と揉めててさ、城関係は都合が悪いんだよ」
「貴族の一人や二人に何を恐れておる。国の一つや二つを相手にするくらいの気概をもたんか。そのようなもの、物の数でもないだろうに」
まあ確かに最近では俺もそう思っている。
ここまで来れば兵士になるのもそれほど難しくないだろう。
武官にでもなれば稼ぎは桁違いに違いない。
しかし、今の廃退的な生活だけでも十分に満足してもいる。
今度は洗濯物を畳むクロエの太ももに欲情して、俺はその細い身体に手を回した。
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