第54話 結婚
これはちょっと、俺が大人だというところを見せなければなるまい。
そう思って俺はアメリアの肩を抱き寄せた。
目を閉じたアメリアはいつものキスだと思ったに違いない。
俺は唇をつけてから、舌をアメリアの口の中に入れる。
そして身体をこわばらせたアメリアの胸に手を添えた。
アメリアの身体がびくんと震えるのが伝わってくる。
手には温かい柔らかな感触が伝わってきた。
しばらくして俺はアメリアから身体を離した。
「いやらしいわー。そういうのは結婚してからだと思うな」
そう言ってアメリアは笑った。
その笑顔が俺を受け入れてくれたようでとても嬉しい。
「結婚しよう」
「本当に?」
「うん」
「大事なことを忘れてないか」
「それじゃクロエも結婚しよう」
「今の言葉に深く傷ついたわ」
「なんでだよ。まだ人間だって証明できてないんだ。大サービスじゃないか」
「もう力は貸してやらん」
「でも結婚はしてくれよ」
「……」
クロエは黙り込んでしまった。
でも嫌とは言わないだろう。
「結婚って教会とかに行かないといけないのかな」
「ただ普通に結婚用の契約をすればいいだけよ。本当にいいの? 一度したら二度となかったことには出来ないのよ」
「結婚してください。お願いします」
俺は二人に向かって頭を下げた。
この世界に来てたら、俺を取り巻く状況は変わったが、この俺自身が一番変わったように思う。
「はい」
「よかろう」
こうして俺は二人と結婚することになった。
リリーの仕切りで誓いの言葉を交わして、正式に夫婦になった。
誓いの言葉には永遠に相手の幸福を求めることというくだりがある。
それ以外は曖昧な言葉でぼやかされていたが、それだけは損なうことが出来ないようだ。
ただ、相手の幸福を求めるなら相手に自由も認めなければならないのだから、それほどの縛りもない。
要するにこれは新婚夫婦に対するおどしのようなもので、なかなかに良くできていた。
俺としては、これを機に二人がもう少し仲良くなってくれればと思う。
これでアメリアもクロエも家族になったのだ。
「それじゃあ次は初夜だよね。これから高級な宿屋にでも行く?」
「現金なものだ」
「まさか、それが目的じゃないわよね」
と、二人が笑いながら言った。
俺はめっちゃ緊張しているのに、二人はよく和やかに笑っていられるものだ。
言い出した俺が言うのも何だが、本当に宿を取ることになった。
白いなめらかな石造りの高級そうな宿の一室をとった。
音が外に漏れるような安っぽい作りではない。
当然、一室だからリリーまで部屋に付いて来ている。
「私が第一夫人なんだからクロエはあとよ。明日でいいんじゃないの」
「明日も泊まるほどお金がないよ」
「カエデは慣れてないのだから、最初でも痛いだけだと思うがの」
今日はアメリアとということになった。
ベッドの脇ではリリーとクロエが興味深そうに眺めている。
俺は壁に掛けられたランタンのようなものから魔石を外して照明を消した。
カーテンを閉めるとシルエットくらいしか見えないほど暗くなった。
俺は暗闇の中でアメリアを抱きしめてキスをする。
そして服に手を掛けた。
「ね、ねえ、やっぱり服は脱がなきゃ駄目なのかしら」
「そりゃそうだよ。服を着たままじゃ出来ないじゃないか」
「そ、そうかしら」
息も出来ないほど緊張しながら、俺はアメリアの上着のボタンに手をのばす。
そして上から一つ一つ外していった。
だけどそれだけじゃ上手く脱がせられない。
「ボタンが一つ残ってるわよ」
こいつ……猫だから暗くても見えるのか。
俺はリリーのアドバイスで最後のボタンを外した。
「なあ、やっぱり二人きりにしてくれよ」
「どうしてそんなことを言うのだ。もう家族なのだぞ。何を恥ずかしがる必要がある」
「私だけ仲間はずれなんて嫌よ」
本気で追い出したいが、そうなると色々揉めそうで面倒だった。
なので仕方なく、いないものだと思うことにする。
俺はバンザイさせてアメリアの下着を取り払った。
これでもう上半身は何も着ていないことになる。
「ちょっとまって」
そう言ってアメリアはいつか見た魔法を使った。
そう言えば前々から気になっていたのだ。
「その魔法は何なの?」
「ん、これは避妊の魔法よ」
「そうなんだ」
いつかお金が欲しいとか言っていたときにでも覚えたのか。
なんだかそれが凄く生々しく感じられる。
あの頃からアメリアもこうなることを考えていたのだ
焦る気持ちを抑えて、革のショートパンツと下着も一気に脱がせた。
すぐに自分も着ている服を脱ぎ始める。
「靴下がまだ残ってるわ。そのくらいアメリアも自分で脱ぎなさいよ」
本当に勘弁してくれと思うが、リリーを黙らせることなんてできない。
というか何度も見られているとは言え、リリーの前で下着を脱ぐのが恥ずかしい。
えーいかまうもんかと、半ばやけになって俺は下着を脱ぎ捨てた。
「凄いわ。そんなものが入るのね」
「入るって何? 何をする気なの?」
「いいからいいから」
俺はアメリアの身体を抱きしめる。
なめらかな肌の柔らかさがたまらない。
色々と手探りで堪能する。
そして目的の場所を見つけた。
あふれ出した温かいものが手に触れる。
「ねえ、どうしてそんなところ触るのよ。それはおしっこをするところよ。汚いわ。もう、恥ずかしいんだから早く済ませて」
「いや、だって、ちゃんと濡らしておかないと痛いんじゃないかと思って」
「痛いって。いったい何をする気なのよ」
アメリアは一体何を言い出すのだろう。
もしかして、これからすることをわかっていないのだろうか。
まさかな。
「子供を作るための生殖行為をするだけじゃない。アメリアはどうしたら子供が出来るか知っているの?」
「そ、そんなの知ってるわ。お、男の人と女の人がベッドの上で裸になってキスをすれば子供ができるのよ」
「……」
俺がリリーとクロエの方を見ると、二つのシルエットが首を横に振っていた。
そうだよな。
アメリアがあんまり自信ありげに言うもんだから、一瞬、この世界ではそういうものなのかと思ってしまった。
いくらファンタジーでもそんなはずはない。
「全然違うのよ。いい、このカエデの棒をアメリアの穴の中に入れるの。そしたら子供が出来るわ」
「そんなはずないわ。私はお父さんからちゃんと教わったもの」
「そんなの誤魔化されただけじゃない。貴方のお父さんとお母さんだって、アメリアが寝てから、毎晩のようにやってたのを私は見てたんだから。そんなことで子供が出来るわけないわ」
「えっ? えっ? そうなの?」
「当然だの」
「本当に知らなかったの?」
俺たちが、さも当たり前という風に答える。
そしたらアメリアは大人しくなった。
そしてアメリアのシルエットが小刻みに震え始める。
「ううっ、もう! お父さんの馬鹿。絶対に許さない……!」
「死んた人のことをそんな風に言ったら駄目よ」
「それでどうするのだ。続けるのか?」
「入れるって、ど、どんなのを……?」
俺は仕方なくアメリアの手を取って自分のものを触らせた。
どうして性教育みたいなことになっているのだろう。
「ひいっ」
「どうする?」
「ご、ごめんなさい。絶対に無理」
「そ、そんなあ」
「だってぇ、心の準備が出来ないわ」
そう言って泣き出すアメリアを慰めながら、その日の夜は更けていった。
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