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迷宮と精霊の王国 作者:塔ノ沢 渓一

第32話 新しい仲間

 家が完成した俺たちは、次に家具を揃えることになる。
 朝から材木屋に行ってベッドを作るための材料を買った。
 材木屋に作ってもらうことも出来るが、家の中で組み立てると言いだしたのでやめた。

 組み立てる前の所まで加工してもらって、それを家に運び込んだ。
 玄関前で夕涼みをしながら将棋を指している年寄りが座ってるようなものが出来上がる。
 椅子よりは横幅はあるが、ただの堅い板なのでそれなりのものを下に敷かないと背中が痛くて眠れないだろう。

 俺たちは2人で街に行って布団一式を揃えた。
 藁を編んだようなものを敷き布団のかわりにするのだが、なるべく厚めのものを二枚ずつ買った。
 それにシーツを一枚ずつと、何が入っているかもわからないような枕だ。

「これで今日からここで暮らせるわね。あとはストーブと窯が欲しいわ」

 アメリアがやたらと竈にこだわっているから、石窯のようなものを作ろうと思う。
 ストーブは鉄製のものを買って共有スペースにおいた。
 そして窓が欲しいなと思ったので、市場を見て回ったらガラスのようなものがはめ込まれた木の枠が売っていたので、それを三つ買った。

 リリーの魔法で壁をくりぬいて、買ってきた窓をはめ込むという方法だ。
 はめ込んだあとは釘で打ち付けるのだが、こちらの釘はただの鉄片なので小さい釘を斜めに打とうとするとポキポキ折れる。
 なんとか苦労して窓をはめ込んだ。

 そして窓の上に薄い布をカーテン代わりに釘で打ち付ける。
 そもそも窓ガラス部分の透明度が低いのでカーテンなど必要かどうかもわからない。
 それが済んだら俺はリリーに言われて薪拾いと、薪にするための木の伐採に行くことになった。

 木を伐り倒して乾燥させてから、それを細かく切って運ぶらしい。
 アメリアは家の周りに生えている雑草をなにやら摘んでいるので俺はリリーだけを連れて近くの林に向かった。

 林の中で太さが適当なものを選んで、リリーの水魔法を使い木を伐り倒す。
 さすがに厚さのある生木は簡単に切断することが出来ない。
 何時間も掛けてやっと一冬越せるくらいの木が切れた。

 そしてしばらく使う分くらいの薪を集め始めた。
 他の人が薪を作るために枝打ちしたものがそこかしこにあるので、それは簡単に集まる。
 それを大きめの異空間を作って納めた。

 家に帰り、拾ってきた薪を外に積み上げていると、アメリアが切り株の上に座ってなにやら作っているので興味をひかれた。
 集めたススキのようなものを、穂の所で揃えたり、縛ったりしている。
 かなり器用な手つきでそれは形になっていった。

「なにか面白いことでもあるの?」

「それホウキでしょ。器用だね」

「このくらい作れて普通よ。薪の中から良さそうな棒を見つけてくれない」

 俺は拾ってきた枝切れの中から真っ直ぐなものを選んで、剣で適当な長さに切った。
 それをアメリアが作っていたものに挿して紐で縛るとちゃんとしたホウキになった。
 俺はその生活力のようなものに尊敬のまなざしを向ける。

 このくらいで大げさね、と言ってアメリアは出来たばかりのホウキを持って家に入っていった。
 俺は適当な薪を選んで家に入り、ストーブに火を付けた。
 その上にアメリアからポットを借りて水を入れてからのせる。

 最初は煙が出たが、安普請の家なので風の通りがよく、すぐに煙は抜けていった。
 俺は外に積み上げてあった切り株を剣で切って椅子を作り、家の中に並べた。
 アメリアの掃除が終わったところで俺たちは昼食にする。

 午後は街に出て材木屋の親父にトイレ用の木材を注文して、それが出来上がるまで必要なものを買うことにした。
 鍋やタライなどをアメリアに選んでもらって買った。
 そして石窯用の煉瓦と粘土も買い込んだ。

 そろそろ蓄えが底をつきそうだ。
 今日の夜には酒場でも回って新しい仲間を探さないと食べ物を買うことすら出来なくなる。
 買いそろえたものを家に持ち帰ってから、俺は材木屋に行ってトイレ用の木材を運ぶ。

 トイレは安くて薄い木を頼んでおいたので作業は簡単に済んだ。
 雨漏りすら気にしてない、これぞバラックというようなものが出来る。
 これで今日の作業は終わりだ。

「それじゃ俺はちょっと早いけど汗を流しに行ってくるよ。アメリアはどうする?」

「私もお湯を沸かして体を流すわ。帰ってきた時はちゃんとドアをノックして、外から入ってよね」

 俺はわかってるよと言って、昨日の浴場にゲートを開いた。
 そしてお金を払って中に入る。
 昨日とは違って女の人がわんさと居て俺は度肝を抜かれた。

 俺はめっちゃ動揺しながらも、それを隠して何気ない風を装い一番端っこのスペースに入る。
 緊張のあまり周りを確認する余裕すらなく、俺はもの凄いスピードで服を脱いで腰にタオルを巻いた。
 なるべく周りを見ないようにしようと思いながらお湯をかぶって体を洗い始めると、隣に若い女の人が入ってくる。

 丸見えである。
 俺はタオルで腰にテントを張りながら、何でもないですよという風を装うのに必死だった。
 それなのに隣のお姉さんは俺に話しかけてくるではないか。

 しかも身を乗り出して、視線は俺の股間に向けられている。

「お兄さん、遊ぶなら私なんてどう。安くしてあげてもいいわよ」

 俺は手を振って必死に断りを入れる。
 そしたらあらそうとだけ言って、その人は行ってしまった。
 そして入れ替わりに次のお姉さんが入ってくる。

 断るたびに、その入れ替わりが何度も続いた。
 俺の体や股間に手を這わせながら、自分はサービスがいいとアピールしてくる。
 そうかここは娼婦の人が客を取る場所なのかと合点した。

「どうして、もうそんなになってるくせににつれないのよ。今日は買いに来たんじゃないの?」

「ち、違います……」

 なんの心の準備もなかった俺は、やっとの事でそれだけ言った。
 そしたらそのお姉さんはなにやら周りに合図をして、それで隣の入れ替わりは収まった。
 俺はホッと息をついて、もうこんな早い時間に来るのはやめようと心に誓った。

 これではアメリアたちも嫌な顔をするわけだ。
 それにしても綺麗で若い娼婦が多い。
 エルフっぽいアメリアに似た顔立ちの人も居て、一晩頼んでみたい欲求が起こる。

 しかし俺には金がない。
 あったとしても俺が自由にしていい金ではない。
 それにアメリアたちにああ言った手前、そんなことをするなんて駄目だと思う。

 そこでやっと余裕を取り戻した俺の目に、体を隠すようにしてお湯を浴びている女の人も居るのが映った。
 たぶん一般の女の人なのだろうと想像する。
 こんな時間に来るのはマナー違反だったかと焦りが生まれた俺は、さっさと体を洗って浴場屋から飛び出した。

 それで振り返って、今出た建物を眺めながら一息ついた。
 さっさと帰ろうと思って、家に帰りドアをノックするとまだ作業を終えた格好のままのアメリアが出てきた。

「あら、早かったじゃない。私はまだこれからだから、ちょっと外にいて欲しいんだけど」

「それなら新しい仲間のスカウトに行ってくるよ。ちょっと遅くなるけどご飯は食べてくるかもしれないから先に済ませておいて。あとお酒を飲むことになるかも」

「わかったわ」

 俺は適当に街に向かってワープゲートを開いて大通りに出た。
 そしていくらでもある酒場に端から適当に入った。
 人と一緒に居るようなのは既に組んでる人がいるだろうから避ける。

 一件目、二件目の酒場は良さそうなのが居なかった。
 三件目の居酒屋に入ると、カウンターでなにやらもめている竜人が居た。

「金が足りねえんだからしょうがねえだろ。もう食っちまったもんは戻せねえよ。ごちゃごちゃ言いやがってケツから出てくるまでここで待ってやろうか。今日は沢山稼いだから足りると思ったんだよ。明日持ってきてやる。宿の部屋なんか解約されたら泊まるところがねえじゃねえか。俺はもう野宿は嫌なんだよ」

「ふざけんなよ。お前これで何回目だと思ってんだ。金くらい数えてから注文しやがれ。どうして金もないのに女なんかに奢ってやるんだよ。しかももう逃げてて影も形もねえじゃねえか。毎回騙されて、どうして学習しないんだ」

「うるせえな。金なんか数えてたって、二つ目を注文したらどうすんだよ。そっから先は運任せになるだろうが。そんなこともわからないで、よく酒場の店主が務まるな」

「驚いた。足し算もわからねえ奴がどうやって冒険者なんてやってやがる。よっぽど親が頑丈に産んでくれたんだな。感謝しろよ。普通の奴ならとっくにくたばってるぜ」

「そんなこと言われなくてもわかってらあ。金なら明日持ってくるからそれまで待ってろ。今まで何度も泊まってやってるのに感謝もねえな」

「馬鹿野郎が。毎日毎日、問題ばかり起こしやがって、相手する俺の気持ちになってみろ。精霊にするとかいって馬の死骸拾ってきてベッドの下で腐らせたり、扉と窓を間違えて身投げして下にあった台車潰しちまったり、こっちはお前に関わって大損だよ」

「精霊になるって話を聞いたから拾ってきたんだ。責めるなら俺に与太話を吹き込んだ馬鹿野郎を責めるんだな。だいたいこの宿は窓板がデカすぎるんだよ。あれなら誰だって間違えるぜ」

 運命の出会いである。
 彼こそがまさに俺の求めていた人材だ。
 俺はすぐさま駆け寄って2人を取りなしにかかった。

「まあまあ、落ち着いてください。足りない分はいくらですか。払えるなら俺が払いますよ」

「おう、奇特な奴が現れたな。足りないのは8シールだ」

 そんなものかと俺はすぐに払って、酒を二杯注文した。
 口直しに飲もうと、その竜人の男を席に座らせる。

「おう、ここの店主が馬鹿で手こずってたんだ。ありがとうよ」

 馬鹿はおめえだよと言いながら店主がビールのような飲み物を二杯持ってくる。
 たぶんガルブか何かで作られた炭酸の飲み物だ。
 飲んでみると苦みのないビールのような味がする。

「今俺は二人で組んで迷宮に入ってるんですけどね、明日から一緒にどうです」

「ほう、メンツはどんなのがいるんだ」

「人間族の二人ですよ。両方とも魔法が使えます」

 どうせわからないだろうから、アメリアも人間族ということにしておこう。

「そりゃいいな。ところで何階でやってるんだ」

「今は地下5階ですが。明日からは地下6階にでも行こうと思ってますよ」

「ほう、入ったことないな。いいだろう、明日から一緒に潜ろうや」

 簡単に話が決まった。
 それで俺は待ち合わせの約束だけしてその竜人族と別れた。
 そして家に帰ると、アメリアが粘土と煉瓦で石窯を作り始めていた。

 俺が思っていたのよりもかなり小さめのものだ。
 まだ土台も出来てないが、このくらいの大きさなら簡単にできるだろう。

「見つかったの?」

 俺は見つかったと答えて、ブランドンから身を隠すための方策を話した。
 たぶんこれで向こうは俺たちを探せないだろう。
 それだけ話して、俺は新しいベッドの上で横になった。

 新しいベッドの寝心地は悪くない。
 そういえば名前も聞かなかったなと、そんなことを考えながら眠りについた。
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