中日新聞と東京新聞は1月29日付朝刊に、預言者ムハンマドの風刺画が描かれた仏紙シャルリ・エブドの表紙の画像を掲載したことについて、「イスラム教徒におわび」と見出しをつけ、「本紙が預言者の風刺画を転載したことで、イスラム教徒の方々を傷つけました。率直におわびいたします」と記した記事を掲載した。国内の全国紙・主要ブロック紙では、産経新聞、日本経済新聞、北海道新聞、西日本新聞も仏紙の風刺画を掲載したが、読売、朝日、毎日の3大紙は見送り、対応が分かれていた。
東京新聞2015年1月29日付朝刊5面
中日・東京新聞は、おわびとともに「風刺画転載について」と題する説明文を掲載した。「本紙は『表現の自由か、宗教の冒とくか』という問題を提起するうえで読者に判断材料を提供するため、風刺画を転載。転載理由は紙面で紹介しました。イスラム教を侮辱、挑発する意図は全くありません」と説明。一方で、読者から「掲載で傷つく人がいるとしたら、それが少数の人であっても、その気持ちを尊重したい」との声があったことも紹介し、「読者のみなさんの声を共有しながら、伝える役割と責任をより深く考えていきます」と記されている。だが、風刺画を転載した意義を認めながら、おわびに踏み切った具体的な理由は記されていない。そもそも風刺画を掲載したこと自体が初めから間違いだったと判断したのかどうかも、定かでない。
中日・東京新聞は1月14日付朝刊特報面に「表現の自由か 宗教の冒とくか 議論呼ぶ仏紙風刺画」と見出しをつけた上で、預言者ムハンマドの風刺画が描かれた仏紙シャルリ・エブドの表紙の画像を掲載した。毎日新聞によると、中日新聞社は21日と23日、在日パキスタン人の団体から抗議を受けていた。
中日・東京新聞が紙面で謝罪したことについて、読売、朝日、毎日の各紙は報じたが、風刺画を転載した産経、日経の両紙は報じていなかった。
風刺画の転載問題をめぐっては、毎日新聞が、1月18日に行われた社内の紙面審査委員会で、転載を見送った経緯についてニュースサイトで紹介している。それによると、外信部長は「シャルリー紙のムハンマドの風刺画を掲載するか否かについては結構早い段階から外信部内で話し合いをして、その結果、慎重な姿勢をとった」と説明。2006年に欧州でムハンマドの風刺画が問題になった際に、同紙が風刺画を掲載しない方針を説明した「おことわり」を参考にしたことを明らかにした。今回問題となった風刺画について、外信部長は「一見、可愛らしいムハンマドにも見えるが、イスラム教徒にとっては侮辱であることに変わりはないと思う」との見解を示し、外信部内では風刺画を載せるべきとの意見は特にはなかったとしている(参照=【紙面審ダイジェスト】ムハンマドの風刺画 不掲載の理由は)。
産経新聞は、1月25日付朝刊のオピニオン面で、佐藤卓己・京都大学大学院准教授を紙面批評記事を掲載。佐藤准教授は、「掲載した産経などの判断は正しかったのか。もし読者が自ら事件を判断する材料として必要だという「知る権利」の信念なら、テロ直後に問題の風刺画を掲載すべきだったのではないか。それを見送っておいて、『シャルリー・エブド』大増刷を伝える記事に風刺画を使うのでは筋が通らない」と疑問を呈していた(参照=産経ニュース|【新聞に喝!】仏週刊紙の風刺画掲載は必要だったか?)。
- (初稿:2015年1月31日 12:05)