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<「イスラム国」人質>ヨルダン政府 ISに対する態度硬化

毎日新聞 1月31日(土)22時3分配信

 【アンマン田中龍士、カイロ秋山信一】イスラム過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)にフリージャーナリストの後藤健二さん(47)が拘束されている事件に関連し、ヨルダン政府がISに対する態度を硬化させている。ISとみられるグループが後藤さんの解放条件としたイラク人女性死刑囚の釈放期限から1月31日で2日が経過。IS拘束下のヨルダン軍パイロット、モアズ・カサスベ中尉の早期救出を望む国民の怒りの矛先がヨルダン政府に向かいつつある中、政府にはIS側に断固たる姿勢を示すことで国民の批判をかわす狙いがあるとみられる。

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 犯行グループはイラク時間29日の日没(日本時間29日深夜〜30日未明)を期限に、後藤さんとヨルダンで収監されているサジダ・リシャウィ死刑囚の交換を要求、応じなければ中尉を殺害すると脅迫していた。

 ヨルダン政府寄りのニュースサイト「アンマンニュース」は30日、「治安当局高官が『リシャウィ死刑囚と(同じくヨルダンで収監中の)他のISメンバーの命は、カサスベ中尉の命にかかっている』と語った」と報じた。中尉が殺害された場合、死刑囚の刑を執行する可能性を示唆した発言だ。交渉の主導権を握ろうとするISに対し、ヨルダン政府が揺さぶりをかけたものとみられている。

 後藤さんとリシャウィ死刑囚の交換を求めるIS側に対し、ヨルダン政府はカサスベ中尉が解放されれば死刑囚の釈放に応じる構え。後藤さん解放の見通しはヨルダンとISの神経戦の中で宙に浮いた格好だ。

 ヨルダンでは30日、国内各地で中尉の解放を求める集会が開かれるなど、ISに対する国民の怒りが政府批判に転じる兆候をみせている。中尉は1988年、西部カラクの名家で誕生。父サフィさんは有力部族の実力者で、叔父も元軍幹部という家柄だ。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、ヨルダンでは死刑執行に国王の承認が必要。執行は一時中断されていたが、昨年12月に8年ぶりに再開し、11人が処刑された。事態膠着(こうちゃく)が長期化すれば、リシャウィ死刑囚の刑執行を求める国民の声が高まる可能性がある。

最終更新:1月31日(土)23時47分

毎日新聞

 

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