当主ご挨拶
二週間にわたり、多くのメールをお送りいただき、ほんとうにありがとうございました。1月31日で受付を終わらせていただきましたが、結局全部で三万通以上ものメールが寄せられました。予想を遥かに超えた数字で、村上も、スタッフも、近所の猫たちも、みんな驚いております。わお!
今せつせつと読んでいるところですが、鉄人村上の処理能力にもやはり限界があり(あるのです)、読み切るのにあとしばらく時間はかかりそうです。なにせ今となっては「ギネスブック」クラスの試みとなっておりますので、お手元に返事のメールが届くまで、今しばらくお待ちいただくことになります。たとえていえば、神宮球場が満員になって(あまりないことですが)、その観客の一人一人と握手してまわっているみたいなものなのです。かなりの大事業です。時間が少しかかることに関してはなにとぞご理解ください。返事を差し上げられなかったみなさん、ほんとに申し訳ありません。でもすべてのメールにちゃんと目を通しています。どうかご安心ください。
正直に言いまして、どうしてまたこんなとんでもないことを始めてしまったんだろうと、ときとして自問したくなることもありますが、でも結局のところ、好奇心なんですね。いったいどんなことになるのだろう? そういう単純な好奇心が、あるところでは猫を困らせ、あるところでは村上を前向きな明るい狂気へと駆り立てます。百キロ・マラソンを走ってみようと思ったときと、だいたい同じような動機です。それで好奇心は満たされたか? どうでしょうね。まだ途中なので僕にもよくわかりません。終わってからゆっくり考えます。でもみなさんには楽しんでいただけましたでしょうか? もし楽しんでいただけたとしたら、なによりです。苦労の甲斐もあるというものです。
みなさんの寄せてくださったヴォイスが、僕のこれからの仕事にとって、何より大きな助けとなるはずです。ありがとうございました。
村上春樹