社会実装型ハッカソン「まちつむぎ」

10月21日（火）に、金沢で現地の社会課題を発見するディスカッションを開催しました！！（その４）

グラフィックレコーディングを用いたまとめへ

ワールドカフェ全体で約３時間半という限られた時間の中、他の人たちの意見も参考にしながら課題を絞り込むために、今回はグラフィックレコーディングという手法が取り入れられました。参加者同士の対話や模造紙に書き出された内容を見ながらヒントとなる言葉やキーワードを拾い上げ、イラストやビジュアルでまとめるというもので、過去に多くの会議に参加してき た経験を持つグラフィックファシリテーターのやまざきゆにこさんがテーブルの間を回りながら的確に意見を拾い上げていきます。

 [写真]やまざきゆにこさんによるグラフィックレコーディングの様子

各グループの意見が出揃いグラフィックレコーディングも終わったところで、やまざきゆにこさんからそのグラフィックにまとめた内容を改めてみなさんに説明します。

[写真] 最終的にグラフィックとしてまとめられた内容１

[写真] 最終的にグラフィックとしてまとめられた内容２

参加者全員で内容を一通り確認した上で、そのグラフィック上にひとり２票ずつ、最も重要だと思う課題を選んで付箋を貼っていきます。

[写真] グラフィックレコーディングの上に付箋で投票する参加者

投票の後、ワールドカフェにも参加した３名の委員より「公共交通機関の課題を取り上げる人が多いことに驚いた」「実際に歩かないと見えてこない課題や逆にこ ういう外部の人と一緒でないと気づかない課題が見えてきたのではないか」「金沢の街を愛している様子が窺えた」「資源も文化もコミュニティも残っている が、いずれも活かしきれていないのでは。今後が楽しみ」といった講評がありました。

そして参加者による投票を参考にしながらも、最終的に課題提起者の長谷川さんと宮谷さんがいちばん解決策を考えて欲しい課題をそれぞれ選んで頂きました。これを元に、12月に東京でハッカソンが開催されます。どのような課題が選ばれたかはハッカソン当日をお楽しみに！

[写真] 長谷川さんと宮谷さんに応援メッセージを寄せる参加者

最後に次回ハッカソンへのはなむけとして、参加者から今回の開催内容についての意見や課題提起者に向けた応援メッセージが送られました。

10月21日（火）に、金沢で現地の社会課題を発見するディスカッションを開催しました！！（その３）

ワールドカフェで意見交換

午後からは前半のメンバーに地元で働く方々や学生らが新たに加わり、ハッカソンの課題となる困りごとを選ぶための議論が行われました。

[写真] 参加者の様子

後半からの参加者は地元をよく知る人たちばかりですが、そうした人たちほど地域に潜在する課題には気が付きにくい場合があります。そこで今回は、本当の意味での解決すべき課題が見つかるよう、できるだけ多くの意見を引き出すためにワールドカフェ形式というスタイルが取り入れられました。まず最初に課題提起者から現状分析や仮説を聞いたあと、地元の人たちと外からのアドバイザーが必ず入るようにして数人のグループを作り、各テーブル毎にテーマについて語り合い、模造紙へ自由に意見を書き込んでいきます。2，30分議論をした後にメンバーの組合せを変えて再びテーマについて意見を出し合いますが、その際に最初のグループの意見を元にして話し合いを拡げていきます。

［写真］ ワールドカフェ形式で４～５名に分かれて7つのテーブルで計４回のラウンドを実施

そうして出された多くの意見の中から気になる課題を参加者全員が投票で選び、その上で最終的に、後日東京で開催されるハッカソンに持ち込む課題を課題提起者がそれぞれ1つずつ選ぶという流れになっています。

ワールドカフェでは「商店街の活性化」と「子育て」という２つの課題をあえて区別せず、参加者が実際の生活の中で感じている課題を改めて出し合いました。地元に住む方々はさすがに当事者だけあって次々と課題が出てきます。

[写真] 意見交換の様子１

たとえば子育て世代が食事に出かける場合、子連れで気兼ねなく入れるお店についての情報が少なく、同じところを繰り返し利用することが多いそうです。とはいえ、必ずしも立派な保育設備などを求めている訳ではなく、たとえば座敷があるということだけでも良く、子連れで入れる条件とは何か、といったところから考えてみる必要がありそうだという意見がありました。

[写真] 模造紙に書き出された意見

また、金沢の歴史遺産は誇るべきものですが、一方で昔の道がそのまま残っているエリアでは自動車でスムーズに通れないことがある、といったトレードオフの話も聞かれました。

[写真] 意見交換の様子２

街を通り過ぎるだけでは見えない具体的な問題が生活者からの視点でたくさん出され、様々な参加者による多面的な意見交換が行われました。

10月21日（火）に、金沢で現地の社会課題を発見する課題発掘ディスカッションを開催しました！！（その２）

フィールドワークの様子２

２つ目のフィールドワークのテーマは「子育て」。課題提起者である長谷川由香さんの案内で金沢21世紀美術館に向かいました。

[写真１] 美術館の様子

金沢21世紀美術館は国内はもとより海外からの観光客も多い、金沢の代表的な観光スポットのひとつ。「子どもと共に成長する美術館」を開館のコンセプトと し、キッズスタジオに併設する形で託児ルームが設けられています。子育て中の市民や観光客が美術鑑賞その他の目的で子どもを預けることができます。

[写真２]託児ルームの様子

その運営を委託されているNPO法人「子育て支援　さくらっこ」理事長の布施安子さんにお話を伺いました。

[写真３] 布施さんから説明を聞く参加者

昨 年度の託児ルーム利用者総数は年間約１２００人。観光客が半分、地元の方が半分といったところ。金沢市が親子でのお出かけをサポートするために発行する 「かなざわ子育て虹色クーポン」での利用者が増えており、利用者層の掘り起こしにつながっている反面、安全面への配慮がこれまで以上に必要になってきてい る面もあるそうです。
例えば、ある観光客が預けたお子さんが熱を出し、薬局を探したが街中から薬局が減っているため、探すのに苦労したといったことがあるそうです。近くの病院についてはホームページを検索して診療時間などが書かれた紙が壁に張り出されていました。

[写真４] 託児の様子

[写真５] 壁に貼られたかかりつけ医の連絡先

また、NPO法人「子育て支援　さくらっこ」が受託しているもうひとつの事業「とむろキッズの森リユース市」の状況についても伺いました。

戸室リサイクルプラザで行われているこのリユース市は、まだ十分に利用できる育児用品などを再利用し、子育て家庭の育児負担軽減や環境への配慮等を目的としておおよそ月１回開かれています。
市民の人気は高く、毎回開場前に入場を待つ人々の列ができるそうです。一方でリピータが多く、公平性という意味で情報発信のあり方などに課題を感じておられるそうです。

10月21日（火）に、金沢で現地の社会課題を発見する課題発掘ディスカッションを開催しました！！（その１）

地域の社会課題を解決するための実証事業「まちつむぎ」。その初めてとなる取り組みを行う地域に石川県金沢市が選ばれました。

日本海側に位置し、加賀百万石と呼ばれる城下町として栄えてきた金沢市は、空襲の被害がなかったことから歴史的な文化財が今なお街中に数多く残る、古き良き地方都市という印象が強くある地域でもあります。これまでは、移動距離が近い関西方面との結びつきが強くありましたが、来年の2015年3月14日には北陸新幹線が開通し、東京から約２時間半でつながることから、街の経済や人の流れも大きく変わると予想されています。

「まちつむぎ」では、その街の困りごとを地域の人たちと一緒に見つけ出し、解決に向けた継続可能な取り組みを行うことを目的としています。今現在抱えている課題を解決することもさることながら、金沢市ではこれからの大きな変化に向けた取り組みも合わせて考える、そうした機会にもつなげられることを期待しての活動となりました。

活動は一日かけて、午前中は関係者を中心とした開催の準備とフィールドワークを行い、午後からは地域の有志参加によるワールドカフェ形式での議論を経て、ハッカソンで取り組むテーマを決定するという流れで行なわれました。

通常、ハッカソンでは具体的な作業に取り組む前に、アイデアソンというアイデア出しを行いますが、「まちつむぎ」ではそれよりもさらに、課題の抽出に時間をかけている点が大きな特徴となっています。具体的には、誰の困りごとかをできるだけ明確にし、顔が見えるようにするため、地元に住む２人の課題提起者に参加してもらい、解決するべき課題を選び出します。その際には、また、金沢でICTを活用した地域支援活動を行うCode for Kanazawaの福島健一郎代表理事をはじめとしたエンジニアらや、「まちつむぎ」事業の外部評価委員会の三友委員（早稲田大学大学院教授）、谷川委員（（株）野村総合研究所理事長）、野村委員（（株）日本総合研究所主任研究員）らも議論に参加し、それぞれの課題について様々な角度から話し合い、潜在的な課題の掘り起こしに取り組みます。

まず最初に、２人の課題提起者からそれぞれの背景や仮説となる課題が紹介されました。

地元で育児や母親らのコミュニケーション支援をしている長谷川由香さんは、金沢の子育てをテーマに、情報のあり方、情報の格差、街全体で育児を支える風土という、3つの課題を提議。その背景として、家の中に閉じこもりがちな子育てママに対する情報発信や、母親が気軽に交流できる場が少ないことをあげています。長谷川さん自身はそうした問題に対して子育て向上委員会を立ち上げ、”のびのびビ～ノ”という情報誌を作成したり、ウェブサイトでの情報発信や母親向けのイベントなどを企画運営も実施していますが、現実的には告知が行き届かず、タイムリーさに欠ける点を課題と感じています。また、金沢は女性就業率が全国で２番目であるにも関わらず、責任ある役職に就く女性率は下から２番目であることについても、情報共有が不十分であることが影響しているのではないかとも考え、問題解決の糸口として情報をもっとうまく活用できる方法を見つけるため「まちつむぎ」に参加したとのことでした。

全国で最も古い片町商店街で振興組合副理事長を務める宮谷隆之さんからは、商店街を含む金沢での人の流れについての課題が提議されました。金沢は駅前から街の中心街が離れているため、普段は車で移動がしやすい郊外へ人が流れるようになり、日中人通りの少ない商店街の一割はシャッターが閉じられた状態です。地元ではイベントや新規の商業施設も開発にも力を入れており、新幹線開通による経済効果も期待されていますが、一方で東京や隣の富山への流出が増えるのではないかとの懸念も広がっています。宮谷さんは課題解決にはITの活用が有用であり、その仮説として、普段から訪れたい場所や会いたい人を情報発信していくこと、もう一つは金沢への移動中や着いてからの情報検索を効率良くすることをあげています。

また、午後からの議論を前に行われたフィールドワークでは、長谷川さんと宮谷さんの案内で、それぞれどのような場所でどのような情報が発信され、活動が行なわれているのかを実際に見学しました。普段、母親たちが集まる場所へ行ったり、駅から商店街へ移動して歩いてみたり、主に金沢以外の人たちに実際の場を体感してもらうことで、客観的な意見を取り入れる機会にするためです。

［写真１］
２人の課題提起者や地元の有志らと共に、当事業の評価委員会の委員、主催者のNRI、総務省、運営事務局関係者が一緒になって、地域に潜在する課題を抽出するという作業に取り組んだ。

［写真２］
課題提起者の長谷川由香さんは地元で子育て支援活動や女性ビジネスを行う起業家として活躍。金沢は結婚を機会に移り住み、その経験を元に内外の両方の視点から金沢の子育てについて考えていきたいとしている。

［写真３］
課題提起者の宮谷隆之さんは片町商店街で事業を行いながら、振興組合副理事長としてイベント実施やインターネット番組の配信などにも積極的に取り組んでいる。ITを中心としたアプローチを街の課題解決のきっかけにしたいと語る。


フィールドワークの様子１

［写真４～９］
片町商店街のフィールドワークの様子。駅からの距離感を体感し、日中の人の流れや商店の雰囲気を感じとった。商店街の周辺へも足を伸ばし、振興組合の事務所では日頃の活動や関連する地域イベントについて話を聞いた。