「イスラム国」拘束:シリア=ISじゃない…友好支援団体
毎日新聞 2015年01月31日 15時00分(最終更新 01月31日 15時48分)
◇誤解を危惧 寄付金減少で活動に支障も
イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)による日本人拘束事件は、日本とシリアの友好を支える団体にも影響を及ぼしている。関係者が懸念するのは、シリアとISが同一視されることだ。国連によると、紛争が続くシリアの難民や国内避難民は約645万人に上る。日本国内では複数の団体が支援をしているが、活動に支障が出ているケースもある。
日本シリア友好協会(千葉県浦安市)は、日本で寄付を集め、シリアの難民キャンプに毛布や薬などを援助している。ISによる後藤健二さん(47)らの殺害予告がインターネットで明らかになった今月20日以降、協会への寄付は2割減った。今月下旬に開催を予定していたシリア難民に関する報告会も中止になった。
同協会のシハブ・モハメッド会長(45)は「日本ではISとシリアを同じだと思っている人が多い。寄付集めの最大の機会である報告会が中止になったことも痛い」と残念がる。
支援物資を現地に運ぶことも難しい状態だ。シハブ会長は今月末にも、フリージャーナリストの西谷文和さん(54)と一緒にトルコ国境に向かい、シリアの難民キャンプに食料などを援助する予定だった。しかし情勢が緊迫化しているとして外務省から渡航を止められている。
同協会は殺害予告後の24日、「日本の家族にとってかけがえのない人質を解放するようイスラム国に懇願する」との声明を発表。シハブ会長は「後藤さんが無事に解放されることはシリア人の思いだ。同時に難民への支援が滞ることも避けなければいけない」と強調する。
青年海外協力隊として活動した人たちで組織し、シリア難民を支援する市民団体「サダーカ」(横浜市)。年に数回開く勉強会には多い時で100人ほどが参加する。後藤さんの解放が見通せない中、桑田和幸事務局長(67)はシリアへの誤解が広がることを危惧する。「私たちはシリアでの活動を通じて、この国のよさを感じている。誤解が広がらないよう、今後も地道に活動していきたい」
1979年からパレスチナやアフガニスタンなどの難民支援をしている京都市の公益社団法人「日本国際民間協力会」の大豊盛重広報部長(36)は「これから私たちの活動にどう響くのか見えない。日本と中東の関係に亀裂が生じないよう、事件が平和的に解決してほしい」と話す。