「イスラム国」人質:中尉生存確認働きかけ…宗教指導者

毎日新聞 2015年01月30日 21時29分(最終更新 01月30日 22時11分)

 【カイロ秋山信一】イスラム過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)にフリージャーナリストの後藤健二さん(47)が拘束された事件に関連し、ヨルダンのイスラム厳格派(サラフィスト)グループがIS側に対して、ISが拘束するヨルダン軍パイロットのモアズ・カサスベ中尉が生存している証拠をヨルダン政府に提示するよう働きかけていることが30日、同グループ指導者への取材で分かった。ヨルダン政府は中尉の生存を確認できなければ、交渉が停滞すると警告しており、交渉は生存確認を巡って行き詰まっている模様だ。

 サラフィストはイスラム法の厳格な適用を追求するなど思想的にISに近く、一部の過激なサラフィストはISに加わっている。一方、暴力を否定する穏健なサラフィストは、ヨルダン政府とも一定の関係を保っている。

 ヨルダンのサラフィスト指導者アブ・サヤフ氏は30日、毎日新聞の電話取材に「ISにとって、カサスベ中尉は(ISが釈放を要求している)サジダ・リシャウィ死刑囚を取り戻すために必要な存在で、ヨルダン政府に生存している証拠を出すべきだ。(27日に)公開された画像では証拠にならない」と主張。旧知のIS戦闘員らにも伝えたことを明らかにした。ただ戦闘員らはIS幹部ではなく、「人質の扱いを決める指導部に伝わっているかは分からない」と述べた。

 また有志国連合の対IS空爆作戦に参加中、拘束された中尉の扱いを巡って、IS内部で意見が割れている可能性を指摘。ISは「後藤さんとリシャウィ死刑囚の交換」を要求しているが、中尉も交換条件に含めるべきだとの意見があるとの見方を示した。

 日本、ヨルダン両政府は、宗教者や有力部族長らにISとの交渉仲介を依頼している。アブ・サヤフ氏は仲介役を否定したが、ヨルダンの世界イスラム科学教育大学のマゼン・マルジ教授は「ヨルダン政府にとってサラフィストはISとの有力なパイプ役で、ISに影響を与えうる存在だ」と指摘。シリアの反体制派幹部によると、ヨルダン国内にいるサラフィストはISに大きな影響力を持っているという。

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