スカイダイビングをする人とできない人がいる。
不安で夜に眠れない人がいれば、全く意に介さない人もいる。
いったい恐怖を感じるか、感じないかの境目は何なのだろう。
このたび脳の特定部の場所が恐怖を生み出すのに決定的な役割を果たすと分かった。
恐怖を感じるのは必要な能力
有力科学誌のネイチャー誌で2つの恐怖に関わる報告が2015年1月19日にあった。
一つの報告は、脳の中央部にある「視床下部室傍核(ししょうかぶしつぼうかく)」と呼ばれる場所が決定的に恐怖を左右しているというものだ。
米コールド・スプリング・ハーバー研究所のマリオ・ペンゾ氏らの研究グループが伝えている。
研究グループによれば、恐怖はそもそも生きていくためには必要な能力だ。
危険を回避するために必要だからだ。その恐怖を感じるために恐怖を感じ取るのが視床下部室傍核だという。
視床下部室傍核はストレスセンサーと知られていた。ストレスがあると活性化するからだ。
このたびここが恐怖と関係すると分かった。
恐怖が消える処理
研究グループは、ネズミを使って視床下部室傍核と恐怖との関係を調べた。
視床下部室傍核にある神経細胞を働かないようにするに処理。すると、恐怖を感じなくなると分かった。
ソマトスタチンと呼ばれるホルモンの一種の表れた神経細胞を邪魔したからだ。神経細胞は、脳の近くにあって、気持ちを左右する「扁桃体(へんとうたい」)と呼ばれる場所の中心核でソマトスタチンの表れた神経細胞に影響を及ぼしていた。
視床下部室傍核の中枢に向かう神経活動、扁桃体中心核の抑制も選択的に神経支配することが分かった。この二つは、恐怖の学習に必要なプロセスである。
ある分子を消すと恐怖消失
ある分子を消すと恐怖が消えた。
神経細胞でホルモンの一種「脳由来神経栄養因子(BDNF)」の受け渡しを担う「トロポミオシン関連キナーゼB」の関係がそうだ。
「脳由来神経栄養因子(BDNF)」または「トロポミオシン関連キナーゼB」のどちらかを削除すると恐怖が消えたのだ。
恐怖を記憶したり、反応したりするためにこの視床下部室傍核と扁桃体中心核の連携となる。
恐怖の記憶の仕組みも
もう一つは、恐怖を記憶するという面からの研究報告だ。
プエルトリコ大学医学部のファブリシオ・H・ドモンテ氏らの研究グループも視床下部室傍核に注目している。
恐怖を記憶するのは、動物が危険を避けるのを可能にし、生き延びるチャンスを増やす。やはり本来、恐怖を覚えておくのは重要だ。
徐々に強まる
恐怖は実際に恐怖を体験してから時間が経ってから記憶が回復するという事実だ。
研究グループは、マウスの「背側視床」が恐怖の記憶を回復する時間を検証している。
恐怖を経験してから短い時間(30分間、6時間)ではなく長い時間(24時間、7日間、28日間)であると示している。
視床下部室傍核では長い時間をかけて「c-Fos」と呼ばれる遺伝子が活性化するのも確認した。
時間が経つのに伴って、恐怖が徐々に復活してくるというわけだ。
恐怖の記憶を弱められる
脳の前方にあって感情を司る前頭前野のうち内部に該当する前辺縁という部分からは、視床下部室傍核と連絡して恐怖の記憶にかかわると見られた。
視床下部室傍核と関係し合う扁桃体中心核を働かなくすると恐怖の記憶が継続的に弱まった。
恐怖は脳の働き次第で大きく変わる。個性にもつながりそうだ。
文献情報
Penzo MA et al. The paraventricular thalamus controls a central amygdala fear circuit. Nature. 2015 Jan 19. [Epub ahead of print]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25600269
Do-Monte FH et al. A temporal shift in the circuits mediating retrieval of fear memory. Nature. 2015 Jan 19. [Epub ahead of print]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25600268
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